原油価格高騰とその背景（計量計測データバンク）
写真はインドの海洋油田
（タイトル）
原油価格高騰とその背景
（本文）
石油価格の高騰が続いている
石油価格の高騰が続いている。日本の人々にとって石油価格はガソリン価格、灯油価格として実感される。モノの価格の変動は需給によって決まる。石油価格は供給量と需要量の均衡として実現される。ガソリンと灯油価格は原油価格と連動する。原油価格は天然ガス価格に影響し電力料金にも反映する。すべては需給バランスで成り立つが少しは思惑が入り込む。
原油は樹脂製品の元をなす
原油は樹脂製品の元をなす。プラスチックのことであり、人々の生活に用いられる商品のほとんどがこれでできている。木や鉄を使わずに樹脂を用いる。加工の手間、その結果としての製品価格の低廉化をもたらすからだ。自動車は鉄とアルミニュームと樹脂でできている。自動車が衝突するとプラスチックが舞い上がる。石油の使用によって炭酸ガスが排出されて地球気候の高温化に結びつくと大きな声が聞こえるが、生活分野への樹脂の使用の実態をつぶさに見ると人々は炭酸ガス排出を意に介していない。2021年夏、米国はコロナ災害の規制がほとんど外れたためにドライブによるレジヤーが戻った。アフターコロナの解放感がもたらすものでもある。日本でも9月ある週末には郊外に遊びにでる車で道は込み合った。オートバイの運転が解禁されたのかの如くの車両の急増であった。自家用車も同じである。
経済の急速な回復によって原油市場が値上がりに転じた
人が動かず消費のためのレストランが休業していては経済が滞る。米国のバイデン大統領はワクチン接種の進展に即応して人の動きを活発化させようとしている。夏のレジャーのための自動車旅行で経済の回復に役立つ。経済の急速な回復によって原油市場が値上がりに転じた。原油価格の代表指標とされるニューヨークのWTI原油先物価格は、6月半ばに1バレル・70ドルを突破、その後も値上りた続いている。経済の急速な回復に伴い、原油への需要が増加するとの思惑によって相場が形成されている。
原油需要が生産量に優るったために石油価格が高騰した
コロナ災害下の原油需要の低減に対応して減産を続けていたOPECプラスは夏場の需要に対応して5月から7月までの3カ月間で日量210万バレル生産を増やしたが、原油需要が生産量に優る状況が出現してガソリンをはじめ石油価格が高騰した。
原油価格の高騰が日本経済に影響する
2021年10月21日、原油価格が７年ぶりの高値を付けるなど、原油価格の高騰が日本経済に影響しそうだ。原油価格の上昇が急速に進むなか20日のニューヨーク市場で米ＷＴＩ原油先物は一時、７年ぶりの高値となる84ドル台に上昇した。21日も83ドル台で推移し、ガソリン価格は１リットル164.6円（18日時点、石油情報センター調べ）と７年ぶりの高値を記録している。１年前の原油価格は38ドル近辺で推移していた。２倍の値上がりをみせた。日本で使用される原油は全て輸入であるために、２倍にも及ぶ値上がり分は日本の富を海外に流出させることになる。原油や天然ガスの値上り状況が１年間続くと鉱物性燃料の輸入額は2020年と比べると2021年は２倍程度に膨らむ。日本全体がまかなわなければならないコスト増は10兆円超となる。
原油と液化天然ガスの価格急騰は日本企業のコスト増に
日本の2020年の鉱物性燃料の輸入額は11兆2,549億円である。原油が4兆6,564億円、液化天然ガス（LNG）が3兆2,089億円である。LNGはスポット価格が前年同月比で10倍に高騰した。原油と液化天然ガス（LNG）の価格急騰は日本企業にとってもコスト急増をもたらす。日本企業の多くはこれら資源価格確保について長期契約がを結ぶのが通例である。
暖冬予測で米の原油価格は下落
原油価格は需要と供給の均衡によって成立する。2021年には米海洋大気局（NOAA）が米国の暖冬予報を発表すると北海ブレント先物が１バレル・86ドル台に上昇していた高値が下落に転じた。暖冬になるかどうかは季節が到来しなければわからないことだが、思惑などによって原油価格が変動することを示す事例となった。
中国とインドと途上国の需要増大が原油価格を押し上げる
原油価格を押し上げている大きくは中国とインドそして途上国による需要の増大である。原油価格の世界的な需要の増大の背景はこのことによる。中国は急速な経済拡大やモータリゼーションの進展が石油への需要量を年々増加させている。日本は世界第３位の石油消費国である。日本の場合にはエネルギー効率化などによって世界的な石油需要を圧迫する要因はない。石油需要の大国はアメリカと中国である。世界の石油需要は増加トレンドにあり、中国以外のアジア諸国も含め石油の消費量は拡大している。
産油国は生産能力をとめたままだ 価格急落に懲りたからだ
石油需要が長期的に増加しているにもかかわらず原油の生産能力は増加していない。国際エネルギー機関（ＩＥＡ）はOPEC 11カ国の生産能力は1970年代からほとんど変化していない。3,000万バレル／日のまななのだ。背景には1980年代半ばの原油価格急落・安定の時期に、多くの余剰生産能力を抱えたことにより、産油国に積極的な生産能力の開発投資のインセンティブがなかったためである。国際石油資本（メジャー）も同じようにリスクの高い鉱物探査投資や設備投資に積極的ではない。
原油の供給能力は一定の水準で推移している
原油の供給能力は、OPECの開発投資の停滞により、中国をはじめ需要が急速に高まっているにもかかわらず一定の水準で推移している。OPECにおける生産能力から生産量を差し引いた余剰生産能力は100万バレル／日を切るまでに急減している。余剰生産能力は、原油の供給に何らかの障害が起こった場合に対応するためのバッファーとして機能するものである。
必要に迫られれば原油は湧き出す
原油は無くならない。必要に迫られれば原油は湧き出す、という奇妙な論理がある。これは奇妙なのではなく、リスクに見合う需要増があれば石油資本は発掘に乗り出すということを述べているのだ。石油は無くなるといわれながらも価格高騰を伴いながらも供給され続けているのはこのような事情による。
（計量計測データバンク 編集部）
2021-10-25-soaring-crude-oil-prices-and-their-background-
地球温暖化への対応は「一汁一菜」で幸せを感じる生き方
2021年ノーベル物理学賞は物理法則により地球の気候を再現した真鍋淑郎氏ら三人
ロンドンを流れるテムズ川が1677年氷結したのを描いた絵画 犬と子供がはしゃいでいる
地球温暖化論争 部分を測ったことで全体を推し量る手法に誤りはないか
東京大学の考古学教室では現在を温暖化の最終期であり気候サイクルによってこれから寒冷化に向かうとあっけらかんに語る
計量計測のエッセー （ 2018年1月22日から日本計量新報の社説と同じ内容の論説です）
カーボンニュートラルという虚構政策
弁護士郷原信郎の池袋暴走事故「実刑判決に控訴せず」の見方 ユーチューブ動画を含む
交通事故報道の背後にある警察庁の意思と国家権力のジャーナリズム支配
東池袋プリウス暴走事故で運転者に禁錮5年判決 2021年9月2日東京地裁
東池袋暴走事故 判決文全文 禁固5年 東京地裁判決 令和3年9月2日
交通事故などの裁判とその在り方
阿部恭子 犯罪加害者家族を支援するNPO法人理事長
走り、曲がり、止まるという車の機能にはさまざまな技術要素と交通事故（特捜検事部長のハイブリットレクサス「レクサスLS500h」の暴走事故）（計量計測データバンク 編集部）
ｗｅｂ情報総合サイト（計量計測データバンク）
├原子力を知る
├原子力発電と福島第一原発事故がもたらしている被害の現実－その２－
├原子力発電と福島第一原発事故がもたらしている被害の現実－その１－
├放射線と健康被害 原発被害が及ぼす社会影響とどのように向き合うか（計測はモノをみる目である 計測からみた原子力事故と地球環境）
├東京電力が福島第二原子力発電所の廃炉を決定
├日本の原子力発電所の現状－その１－
├放射線の単位であるシーベルトとベクレルとグレイの関係
├福島原子力発電所事故と放射性物質そして放射線測定
├地震と津波と活断層などを知る-その1-地球物理学者島村英紀氏（元北大教授）の知見
写真はインドの海洋油田
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（本文）
石油価格の高騰が続いている
石油価格の高騰が続いている。日本の人々にとって石油価格はガソリン価格、灯油価格として実感される。モノの価格の変動は需給によって決まる。石油価格は供給量と需要量の均衡として実現される。ガソリンと灯油価格は原油価格と連動する。原油価格は天然ガス価格に影響し電力料金にも反映する。すべては需給バランスで成り立つが少しは思惑が入り込む。
原油は樹脂製品の元をなす
原油は樹脂製品の元をなす。プラスチックのことであり、人々の生活に用いられる商品のほとんどがこれでできている。木や鉄を使わずに樹脂を用いる。加工の手間、その結果としての製品価格の低廉化をもたらすからだ。自動車は鉄とアルミニュームと樹脂でできている。自動車が衝突するとプラスチックが舞い上がる。石油の使用によって炭酸ガスが排出されて地球気候の高温化に結びつくと大きな声が聞こえるが、生活分野への樹脂の使用の実態をつぶさに見ると人々は炭酸ガス排出を意に介していない。2021年夏、米国はコロナ災害の規制がほとんど外れたためにドライブによるレジヤーが戻った。アフターコロナの解放感がもたらすものでもある。日本でも9月ある週末には郊外に遊びにでる車で道は込み合った。オートバイの運転が解禁されたのかの如くの車両の急増であった。自家用車も同じである。
経済の急速な回復によって原油市場が値上がりに転じた
人が動かず消費のためのレストランが休業していては経済が滞る。米国のバイデン大統領はワクチン接種の進展に即応して人の動きを活発化させようとしている。夏のレジャーのための自動車旅行で経済の回復に役立つ。経済の急速な回復によって原油市場が値上がりに転じた。原油価格の代表指標とされるニューヨークのWTI原油先物価格は、6月半ばに1バレル・70ドルを突破、その後も値上りた続いている。経済の急速な回復に伴い、原油への需要が増加するとの思惑によって相場が形成されている。
原油需要が生産量に優るったために石油価格が高騰した
コロナ災害下の原油需要の低減に対応して減産を続けていたOPECプラスは夏場の需要に対応して5月から7月までの3カ月間で日量210万バレル生産を増やしたが、原油需要が生産量に優る状況が出現してガソリンをはじめ石油価格が高騰した。
原油価格の高騰が日本経済に影響する
2021年10月21日、原油価格が７年ぶりの高値を付けるなど、原油価格の高騰が日本経済に影響しそうだ。原油価格の上昇が急速に進むなか20日のニューヨーク市場で米ＷＴＩ原油先物は一時、７年ぶりの高値となる84ドル台に上昇した。21日も83ドル台で推移し、ガソリン価格は１リットル164.6円（18日時点、石油情報センター調べ）と７年ぶりの高値を記録している。１年前の原油価格は38ドル近辺で推移していた。２倍の値上がりをみせた。日本で使用される原油は全て輸入であるために、２倍にも及ぶ値上がり分は日本の富を海外に流出させることになる。原油や天然ガスの値上り状況が１年間続くと鉱物性燃料の輸入額は2020年と比べると2021年は２倍程度に膨らむ。日本全体がまかなわなければならないコスト増は10兆円超となる。
原油と液化天然ガスの価格急騰は日本企業のコスト増に
日本の2020年の鉱物性燃料の輸入額は11兆2,549億円である。原油が4兆6,564億円、液化天然ガス（LNG）が3兆2,089億円である。LNGはスポット価格が前年同月比で10倍に高騰した。原油と液化天然ガス（LNG）の価格急騰は日本企業にとってもコスト急増をもたらす。日本企業の多くはこれら資源価格確保について長期契約がを結ぶのが通例である。
暖冬予測で米の原油価格は下落
原油価格は需要と供給の均衡によって成立する。2021年には米海洋大気局（NOAA）が米国の暖冬予報を発表すると北海ブレント先物が１バレル・86ドル台に上昇していた高値が下落に転じた。暖冬になるかどうかは季節が到来しなければわからないことだが、思惑などによって原油価格が変動することを示す事例となった。
中国とインドと途上国の需要増大が原油価格を押し上げる
原油価格を押し上げている大きくは中国とインドそして途上国による需要の増大である。原油価格の世界的な需要の増大の背景はこのことによる。中国は急速な経済拡大やモータリゼーションの進展が石油への需要量を年々増加させている。日本は世界第３位の石油消費国である。日本の場合にはエネルギー効率化などによって世界的な石油需要を圧迫する要因はない。石油需要の大国はアメリカと中国である。世界の石油需要は増加トレンドにあり、中国以外のアジア諸国も含め石油の消費量は拡大している。
産油国は生産能力をとめたままだ 価格急落に懲りたからだ
石油需要が長期的に増加しているにもかかわらず原油の生産能力は増加していない。国際エネルギー機関（ＩＥＡ）はOPEC 11カ国の生産能力は1970年代からほとんど変化していない。3,000万バレル／日のまななのだ。背景には1980年代半ばの原油価格急落・安定の時期に、多くの余剰生産能力を抱えたことにより、産油国に積極的な生産能力の開発投資のインセンティブがなかったためである。国際石油資本（メジャー）も同じようにリスクの高い鉱物探査投資や設備投資に積極的ではない。
原油の供給能力は一定の水準で推移している
原油の供給能力は、OPECの開発投資の停滞により、中国をはじめ需要が急速に高まっているにもかかわらず一定の水準で推移している。OPECにおける生産能力から生産量を差し引いた余剰生産能力は100万バレル／日を切るまでに急減している。余剰生産能力は、原油の供給に何らかの障害が起こった場合に対応するためのバッファーとして機能するものである。
必要に迫られれば原油は湧き出す
原油は無くならない。必要に迫られれば原油は湧き出す、という奇妙な論理がある。これは奇妙なのではなく、リスクに見合う需要増があれば石油資本は発掘に乗り出すということを述べているのだ。石油は無くなるといわれながらも価格高騰を伴いながらも供給され続けているのはこのような事情による。
（計量計測データバンク 編集部）
2021-10-25-soaring-crude-oil-prices-and-their-background-
地球温暖化への対応は「一汁一菜」で幸せを感じる生き方
2021年ノーベル物理学賞は物理法則により地球の気候を再現した真鍋淑郎氏ら三人
ロンドンを流れるテムズ川が1677年氷結したのを描いた絵画 犬と子供がはしゃいでいる
地球温暖化論争 部分を測ったことで全体を推し量る手法に誤りはないか
東京大学の考古学教室では現在を温暖化の最終期であり気候サイクルによってこれから寒冷化に向かうとあっけらかんに語る
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