紀州犬物語(124) 犬の歯のこと、そして完全歯のこと。(横田俊英)
(タイトル)
犬の歯のこと、そして完全歯のこと。
(サブタイトル)
永久歯が上22本、下20本、あわせて42本揃い、噛み合わせがせいじょうであることを願う。
切端咬合、オーバーショット、アンダーショットへの不安に襲われて神経衰弱になる。
第124章 犬の歯のこと、そして完全歯のこと。 執筆 横田俊英
(本文)
犬の歯は上が22本、下が20本で、合計42本あるのが普通です。
乳歯はこれより少ないのですが、永久歯が上下あわせて42本生えそろわない犬がおります。
ここで語っているのは紀州犬など日本犬のことであり、永久歯が42本揃い、それが噛み合わせを含めて正常であって完全歯であるかどうかということで、ちょっとしたドラマというか出来事が発生します。
その出来事のことは別の機会に語ることにして、紀州犬を飼うことで私が経験した幾つかのことを書き記します。
犬の歯のことは生える永久歯の本数と生え方のことがたとえばAKC(アメリカン ケンネル クラブ)では、犬種ごとに規定しております。
紀州犬や柴犬そして四国犬の場合には日本犬保存会が日本犬標準によって、永久歯は上の歯が22本、下の歯が20本、合計42本と規定しております。そしてその歯の噛み合わせは門歯は上の歯が前に出て、下の歯が内側に入るという鋏状の噛み合わせをもって正常としております。歯が42本揃い、噛み合わせが正常であることをもって完全歯といいます。
子犬は生後4カ月過ぎから永久歯が生え始め、生後5カ月を過ぎるころになりますと門歯が上下とも揃うようになります。
ここでややこしいことが発生します。
上の歯と下の歯が鋏(はさみ)状にならないで上下がカスタネットのようにカチカチと打ち合う状態になることがあります。この状態を切端咬合(せったんこうごう)といいます。
そのような様子を一時的に見せていて、やがて下の歯が内側に入って鋏状になり正常な噛み合わせになることもあります。
成長してもそのままでいることもあります。
成長すると何本かの下の歯が上の歯の前に出たりすることもあります。
そのようにならないように願うのですが、願いが叶わずに不正常な噛み合わせで大人になってしまう犬もおります。
私の場合には下の歯が前に出そうな場合、切端咬合(せったんこうごう)の兆候がみえたら、下の歯を朝に晩に内側に押し込むことを繰り返します。わずかな噛み合わせの狂いの場合にはこれで上手くいくことがあります。
また人によっては門歯の乳歯が永久歯に変わるときに、乳歯が少し浮いてきたところで10円硬貨などを使ってこの乳歯を弾いてはずしてしまうことをします。下のあごの歯が前に出る気配がしたた下の乳歯を外してしまいます。
これが絶対的に有効な対策であるかというと、おまじないの域を出ないと考えるべきでしょう。
永久歯が生えてから念を入れることになるとパンツのゴムひもの細いのを用意して、下の犬歯に引っかけて内側に少しの力が加わるようにしておいて経過をみます。
パンツのゴムひもの端は犬歯にはめ込むように端を糸で縫いつけて輪をつくります。そうしてつくったゴムひもの端を下の犬歯の二つに掛けて下顎から生えた門歯をほんの少しの力で内側に引張っておくのです。
細いゴムひもが下顎の肉に食い込んで出血することがありますが、できるだけそのようにならないように、注意深くゴムひもを当ててやります。
このゴムひもによる手当と下顎から生えている門歯を少しの力で内側に押してやることの組み合わせによって、門歯の噛み合わせを鋏状にするのです。この方法は案外有効であります。
とくに門歯を内側に押すことを繰り返すという方法は簡便ですから、噛み合わせに怪しさがある場合には速やかにこれをやります。
手慣れた人になると下顎をグイッと押すこともします。こうすると下顎の間接が内側に少し動きますから、前に出がちの下側の門歯が上顎から生えた門歯の内側に入り込みます。
そのようにして内側に入った門歯がその状態で安定すると、その後は正常な噛み合わせを維持することができます。
人の歯の矯正は現代では普通に行われております。
その昔の女優のポスターを見ましたら、ひどい八重歯でありました。
ある女性歌手がデビュー前に出ていた歌番組の映像にはひどい歯の乱れが映っておりました。その後、その歯は矯正されて綺麗になっておりました。こうした歌手たちは多くおります。
犬の世界でも歯の矯正に関して同じようなことができるようですが、その事情を詳しくはしりません。
永久歯が1本でも不足すると展覧会の規定を満足しませんから、ほかのことが良くても展覧会ではよい成績をあげることができません。切端咬合(せったんこうごう)もこれと同じです。
犬の歯の噛み合わせは紀州犬など日本犬の場合には鋏状の咬合が正常なこととされます。
上顎(うわあご)が極度に前に出た状態と下顎が極度に引っ込んだ状態はそれぞれ不正常な噛み合わせです。オーバーショット、アンダーショットとも呼ばれる状態です。
これらのことを気を掛けて子犬を育てていると心配の種が尽きなくて神経衰弱になってしまいます。
(誤字、脱字、変換ミスなどを含めて表現に不十分なことがある場合はご判読ください。)
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