自動ハカリの検定実施は日本の計量制度に大きな転換をもたらす
対象はホッパースケール、充塡用自動はかり、コンベヤスケール、自動捕捉式はかり、その他の自動はかり
自動ハカリは検定制度がなくても非自動ハカリと変わらない安定した精密さと動作の確かさが日本では実現されていた
自動ハカリの検定実施は日本の計量制度に大きな転換をもたらす
計量計測のエッセー 
自動ハカリの検定実施は日本の計量制度に大きな転換をもたらす
写真は本文とは連動しない挿絵です。

秋の気配を漂わせる信州峠の樹木のようす。10月13日撮影。

(タイトル)
自動ハカリの検定実施は日本の計量制度に大きな転換をもたらす

(本文)

 2018年計量記念日の11月1日を迎えようとしているこの年に進行している計量法と計量行政の大きな出来事は何か。質量計が形式にかかわらず検定が実施されることになったことだ。これまでは静止した状態で計量する非自動ハカリだけが検定の対象であった。この年からは計る対象物が動いている状態で計量する自動ハカリも検定を実施するための体制が具体的に整備され4種類に分類された自動ハカリの検定が段階的に実施される。

欧州などの経済先進国では国際法定計量機関(OIML)の自動ハカリの規定に準拠してすでに自動ハカリの検定を実施している。日本でも国際化対応のためにも自動ハカリの検定の実施が求められていた。日本の安定した経済社会と生産者とハカリ使用者との関係のもとでは自動ハカリは検定制度がなくても非自動ハカリと変わらない安定した精密さと動作の確かさが実現されていた。お国柄の違いを超えての自動ハカリの検定実施のための計量法と諸規定の改定である。

 以下、自動ハカリの検定に関連する諸事項を列記する。

1、指定検定機関の指定の区分の追加 【施行令第26条関係】
 指定検定機関の区分は ・ホッパースケール ・充塡用自動はかり ・コンベヤスケール ・自動捕捉式はかりの4器種それぞれの項目を設ける。
2、検定証印等の有効期間の設定【施行令別表第3関係】
 自動はかりの検定の有効期間を2年と設定。 ただし、適正計量管理事業所が使用する自動はかりの有効期間は6年とする。(修理後等は有効期間に よらず従来通り検定が必要)
 一般的な事業所は2年ごとの検定が求められる。
 適正計量管理事業所(特定計量器を使用する事業所であって、 適正な計量管理を行うものとして指定された事業所)は6年ごとに検定を実施する。6年の間には法第127条に基づく計量管理等を適切に行うことが求められる。2年周期の一般的な事業所の検定に相当する管理を要すると理解するのが至当である。検定機関は引き続き6年周期。有効期間の起算日は、検定を行った日の翌年度の4月1日。

3、検定の申請書の提出先に関する措置【施行令別表第4関係】
 検定実施主体は産業技術総合研究所、指定検定機関を規定。(型式承認を行う産総研、器差検定を中心に行う指定検定機関)

4、経過措置:製造・修理事業者、使用者への影響を考慮し、段階的な猶予期間を措置
 既製造・修理 事業者届出完了
 すでに自動はかりの製造(修理)を行っている事業者は、平成30年(2018年)9月30日までに届出書を都道府県に提出。

 検定制度 導入期間および検定制度 通常運用の開始
 検定開始(第1弾:平成31年(2019年)4月1日、第2弾:平成32年(2020年)4月1日)後、 各自動はかりごとに定められた検定制度導入期間内に検定の合格が必要 (再掲)検定有効期間:2年(適正計量管理事業所で使用のものは6年) 新たに使用する自動はかり: 平成34年(2022年)4月1日まで(第1弾)、平成35年(2023年)4月1日まで(第2弾) すでに使用されている自動はかり: 平成37年(2025年)4月1日まで(第1弾)、平成38年(2026年)4月1日まで(第2弾) (上記期間を経過後は、通常の特定計量器の扱い。(第1弾自動はかり…自動捕捉式はかり 第2弾自動はかり…ホッパースケール、充塡用自動はかり、コンベヤスケール)

5、施行日:平成29年10月1日
 対象は、ホッパースケール、充塡用自動はかり、コンベヤスケール、自動捕捉式はかり、その他の自動はかり。

 製造及び修理事業の届出区分に追加
 原則として、取引又は証明に使用しているかどうかに関わらず、製造・修理の届出を行う。その他の自動はかりについては、平成31年(2019年)4月1日から。

 検定実施(政令規定)および経過措置

 すでに使用されている自動ハカリについて、以下の期日までに検定を実施し、確認済証を付す。
ホッパースケール、充塡用自動はかり、コンベヤスケールの4器種については、平成38年(2026年) 3月31日まで。自動捕捉式はかりについては、平成37年(2025年) 3月31日まで。

 適正計量管理事業 所(適管)での届出および経過措置
 既に使用されている自動はかりについて、以下の期日までに検定を施し、確認済証を付す。既に適管の指定を受けている事業所で自動はかりを使用している場合、検定開始日(※)から下に示す期日までに、特定計量器の追加にともなう変更届を提出。(※その他の自動はかりについては、平成31年(2019年)4月1日から)

 ホッパースケール、充塡用自動はかり、コンベヤスケールの4器種については、平成38年(2026年) 3月31日まで。自動捕捉式はかりについては、平成37年(2025年) 3月31日まで。その他の自動はかりについては平成38年 (2026年) 3月31日まで。

6、器差検定の方法
 荷重搬送システムを最大速度に設定し、ひょう量・最小測定量・検定公差の変わる点を含む4点に相当する質量 の実材料等を計量。その計量値を真実の値(基準分銅で校正された管理はかりの計量値等)と比較し、器差が検定公差以内であることを確認。

 例:自動重量選別機にて、約300gの実材料を用いて器差検定を行う場合。
約300gの 実材料を60個(管理はかりで全て計量)
①計量値 301g
②真実の量 301.3g
③器差 -0.3g

①計量値-②真実の量=器差-0.3g

【検定公差の例(※)】
0g~500g
自動重量選別機(新規はかり)±0.5g
自動重量選別機 (既使用はかり)±1g
質量ラベル貼付機 計量値付け機 (新規はかり)±1g
質量ラベル貼付機 計量値付け機 (既使用はかり)±1.5g

500g~2000g
自動重量選別機(新規はかり)±1g
自動重量選別機 (既使用はかり)±2g
質量ラベル貼付機 計量値付け機 (新規はかり)±1.5g
質量ラベル貼付機 計量値付け機 (既使用はかり)±2.5g

2000g~10000g
自動重量選別機(新規はかり)±1.5g
自動重量選別機 (既使用はかり)±3g
質量ラベル貼付機 計量値付け機 (新規はかり)±2g
質量ラベル貼付機 計量値付け機 (既使用はかり)±3.5g

※検定公差は、精度等級やはかりの目量によって異なる。

 計測回数(10~60回)は、はかりの種類(カテゴリ)、検査質量により異なる。
 実材料(製品など)を用いた連続計量で検定を行うのが基本であるが、実施困難な場合は疑似材料(テストピースなど)を 使用してもよい。
 日常的に使用する計量範囲・動作速度が限られている場合、又は、周辺装置等の能力制限により最大能力が出ない場合は、使用上想定される範囲内での検定を行うことで、ユーザーの負担軽減及び検定の効率化を図る。

 計量制度の大きな変化にはほかに二つある。その一つは特定計量器のうち質量計と燃料油メーターの二分野で民間事業者が検定を実施できることになったことだ。民間事業者とは一般の株式会社などのほか地方の計量協会などのことである。質量計の検定は地方公共団体の計量行政組織が検定主体として実施してきている。要件を満たせば計量器事業者や計量協会が指定検定機関の指定を受けて検定を実施できる。同じようにガソリンスタンドに設置されているガソリン計量器や灯油などの燃料油メーターの検定を指定検定機関が実施できる。

 上の質量計と燃料油メーターの検定は一部の地方公共団体では計量法理解の誤認によって計量協会がこれを実施しているという事実があり、これが拡大していた。このことの結果、計量検定所には質量計と燃料油(移動式のものを除く)の検定を実施できる能力を備えた人材が払底するという事態が発生していた。また検定所の職員が半専任であったり職員が実質ゼロとかせいぜい一名という状態が広まっている。

 質量計の定期検査を役所に変って実施する形態には計量士による代検査と計量協会などが指定定期検査機関として指定を受けて実施する二つの形態がある。質量計の定期検査の主体は地方公共団体にあり、地方公共団体が自らこれを実施する事例は現在でも広く存在する。その一方で指定定期検査機関を指定している地方公共団体にはハカリ(質量計)の定期検査実施の能力を喪失しているようすがみられる。担当者が一人もいない。兼任だから半人はいる。計量行政にかかる知識も技術も失っている状態が出現している。

 その反面で指定を受けてハカリの定期検査を実施している計量協会などの従業員は年を追うごとに低減する運営費の削減のために正規の地方公共団体職員の処遇の半分ほどの状態を強いられる状態になっている。経験を積んで知識と技術と能力が高まってもそれにこたえる処遇はない。何年勤めても同じ状態では生計が成り立たないから張り合いを失う。

 権限は役所にあるが役所には能力ある人がほとんどいなくなった。指定定期検査機関には検査能力はあっても権限がない。権限がなければ踏み込んだことで計量行政にふれるとしっぺ返しを怖がるようになる。役所の下請け組織は事業の目的に対応しない腑抜けな状態を生む。このために計量協会からは国民の計量意識を高めるための普及啓発活動をまともな形で実施できなくなった。会員への連絡もおろそかになっている。計量協会の職員がみているのは能力を失っている役所である。このような不幸の循環、拡大再生産の軌道に組織がのってしまっている。

 ほかの二つのうちの一つは質量計にかかわる質量の単位キログラムの定義変更である。質量の定義の変更ではなく、質量の単位キログラム(kg)の定義の変更である。金属の塊の質量を一キログラム(1kg)と定義していたものを物理定数を元にしてその倍数をもって一キログラム(1kg)とする定義変更である。長さの単位メートル(1m)は地球の子午線を細分して金属に刻まれていた。これを光の速さを元にしてそれを細分して1mを定義して久しい。質量の単位が長さの単にの後をおってやっと物理定数を元にして定義されることになった。質量の単位キログラム(kg)の定義の変更に誘導されるように電流の単位アンペア(A)、熱力学温度の単位ケルビン(K)、物質量の単位モル(mol)の3つ基本単位の定義が変更される。これら計量単位の定義改定は11月16日(金)午後に開かれる国際度量衡総会(CGPM)の決議をへてなされる。

2018-10-16-automatic-hakari-test-run-brings-big-change-to-japan's-weighing-system-

参考資料
2018年11月16日開催の国際度量衡総会で質量の単位キログラム(kg)を定義変更

自動ハカリの検定に関連する諸事項(計量行政室による図表入りの解説)
file:///C:/Users/syokota/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/52DD31NZ/自動はかりの検定_180220_02_setsumeikai.pdf

(誤字、不適切な表現などについてはご容赦ください)
 
計量計測のエッセー


計量計測のエッセー ( 2018年1月22日から日本計量新報の社説と同じ内容の論説です)

バベルの塔とノアの箱舟の伝説と旧カヤバ工業の免震性能偽装
計量と計測は人の間にどのようにかかわるか
自動ハカリの検定実施は日本の計量制度に大きな転換をもたらす
2018年11月16日開催の国際度量衡総会で質量の単位キログラム(kg)を定義変更
日本人の頭骨の変化を計測値が示す副題(鎌倉時代の日本人の頭は前後に長い形をしていた)
優良事業所が適正計量管理事業所の指定を受ける社会的責任
計測の目的と求められる確かを考える
地方計量行政の模範県を躊躇なく真似たい
自動ハカリの指定検定機関制度と行政組織の関わり方
1%の検定で計量の安全を実現している日本の計量制度
自動ハカリの指定定期検査機関の動向を観察する
計測の在り方と計測値の表示をめぐる諸事情
計量協会webサイトから日本の計量行政の未来が見える
光波干渉測定システムはアインシュタインの理論を事実として確認した
収賄で終身刑になる中国要人と首相をかばい罪に問われる日本の官僚

ウィキペディアによる計量の世界の説明は1割ほど
時代の波と計量器産業の浮き沈み
世界でも範たる状態を築いている日本の計量行政
中国では日本以上の人口減少状態が出現している
ハカリの定期検査実施漏れは計量憲法である計量法違反だ
城下町の鍛冶屋が日本の産業の元になった
山口高志投手の球がベース通過時点で一番速かった
福島産の農産物と海産物と放射線測定器
通信と自己診断機能は計量器の法制度を変える
計れと人を管理したQC運動に対比される品質工学
モノの数量表現と性質表現の仕組みである国際単位系(SI)
計量法の実質の内容を変える政省令の理解と解釈
ハンドルで曲がらずブレーキで車は止まらない
計量計測のエッセー

学校は記憶容量とアプリケーションを確認するところ
計量検定所長の仕事は検査機関運営費をたっぷりと確保すること
社会の計量の安全の確保は住民サービスの基礎
神鋼素材は計測器性能に影響がない
田中舘愛橘の志賀潔と中村清二への教え方





自動ハカリの検定実施は日本の計量制度に大きな転換をもたらす
2018年11月16日開催の国際度量衡総会で質量の単位キログラム(kg)を定義変更
事実は小説よりも奇なり 二つの事件
計測システムがわかることが計測における教養だ
世の中は計測でできている
計測の目的と精密さの実現の整合
日本人の頭骨の変化を計測値が示す副題(鎌倉時代の日本人の頭は前後に長い形をしていた)
優良事業所が適正計量管理事業所の指定を受ける社会的責任
計測の目的と求められる確かを考える
地方計量行政の模範県を躊躇なく真似たい
自動ハカリの指定検定機関制度と行政組織の関わり方
1%の検定で計量の安全を実現している日本の計量制度

学校は記憶容量とアプリケーションを確認するところ
計量検定所長の仕事は検査機関運営費をたっぷりと確保すること
社会の計量の安全の確保は住民サービスの基礎
神鋼素材は計測器性能に影響がない
田中舘愛橘の志賀潔と中村清二への教え方

 
旅のエッセー集 essay and journey(essay of journey) 

滋賀県・草津市の宿で王将の餃子をたべた

京都三条の街は気詰まりで滅入る

神戸は港町だが山の街でもあり大都市だ


神戸は港町だが山の街でもあり大都市だ

霧ヶ峰 雪景色

秩父札所二十四番 光智山法泉寺

6月24日の霧ヶ峰高原道路だ。強清水から車山・肩駐車場に向かって走る

正月の下呂温泉は一夜にして白銀の世界になった

上高地 晩夏

風の子の子供たちですが人は風邪を引いてはなりません

川崎大師平間寺で願い事をする

霧ヶ峰高原の八島湿原の周りに出現する景色(2)
薄く積もった雪道を踏みしめる。クロカン四駆の世界だ。

霧ヶ峰高原の八島湿原の周りに出現する景色

霧ヶ峰高原 晩秋の八島湿原

霧ヶ峰高原 晩秋

和歌山市加太港の浜に立つ

山梨県牧丘村で秋の風景に出会った。今は新しい市になっているがその名は知らない。

ダイヤモンド富士

酉の市(おとりさま)

浅草の浅草寺界隈に足を向けた 外人がいて蜘蛛の巣の鉄塔が見えた

旧塩山の恵林寺界隈を見物した

仙台藩と青葉城

カラスウリが赤くなって秋です

スズランが赤い実を付ける秋の始まりです
 
 
 
旅のエッセー集 essay and journey(essay of journey) 

「計量計測データバンク」日替わり情報と週報デジタル版(過去のデータ)履歴