私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く 執筆 甲斐鐵太郎
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私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く 執筆 甲斐鐵太郎
バスは釜トンネルを通って上高地に向かう。
私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く
大正池がみえる。枯木立は消えているが池の水は十分だ。
私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く
晴れた日の大正池と穂高連峰の景色。枯木立がなくなっている。
私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く
上高地帝国ホテルの表玄関。昔ほどには混まない。
私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く
梓川に向いた客室。重厚な雰囲気は上高地で一番だ。
私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く
大正池から上高地に向かう散策路は木道になっている。
私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く
梓川は浅い流れ、深い流れ、支流に巻き込んでの淀みなど。
私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く
カラマツ林がときどき現れては抜けてまたカラマツ林になる。
私と上高地-その3-上高地帝国ホテルと大正池界隈を歩く 執筆 甲斐鐵太郎
(本文)
バスは釜トンネルを通過する。上高地はここから始まる。
左右から張り出す木立が窓に触れる細い緩やかな勾配の道をすすむ。自然そのものの世界だ。さまざまな樹木が日を浴びて精一杯に背伸びし他に負けじと励む。バスの窓越の景色は日常のものとは違う。上高地バスターミナルへの道が梓川沿いにたゆたっている。木々のそれは標高1,500mに生える種類である。
大正池は昔の絵はがきにある景色ではない。焼岳の噴火で堰き止められた梓川によってできたために川沿いの落葉松などの木が枯れて湖面に樹立するその姿ではなくなった。洪水防止のためだろうが大正池の浚渫(しゅんせつ)を始めている。大正池の規模は変わらないから景観は申し分ない。
大正池でバスは停車する。ここで降りて上流に向かって歩く。上高地帝国ホテルで降りてそこから橋を渡って向こう岸を散策して河童橋にでる。反対岸を下って上高地帝国ホテルまで戻るのもよい。上高地バスターミナルからそのまま進んで小梨平、明神、徳沢、横尾と散策するのもよい。
どの散策路を選んでも梓川はつねに道に沿って流れていている。見上げれば穂高連峰がある。振り返れば焼岳の赤い山肌。右手には標高2,646mの霞沢岳、その先に2,450mの標高六百山がある。ともに上高地バスターミナルから見上げる位置にある緑まぶしい山だ。
上高地の樹木は標高1,500mの寒冷地に適合し多様性に富むも。信濃の国の語源となったといわれるシナノキ、奇妙な枝振りと幹の色をしたイチイほか枚挙にいとまがない。平地は落葉松が多く落葉松とさまざまな樹木が混成して明るい。「からまつの林を出でて、からまつの林に入りぬ。からまつの林に入りて、また細く道はつづけり」という北原白秋の水墨集「落葉松」の世界だ。
上高地に人が多く入るようになったのは釜トンネルが掘られてバスが通るようになってからだ。1933年(昭和8年)に乗合バスを大正池まで延長し上高地帝国ホテルが開業した。1935年(昭和10年)には乗合バスを河童橋まで延長する。旧釜トンネル開通は発電所建設を目的にしていた、便乗して大正池に帝国ホテルが建てられた。一つのことが作用してさまざまなことがおこる。発電所建設と運営に重要な役割をはたした人の子孫が沢渡で酒屋と宿を経営していた。宿泊して一緒に食事をした人である。来歴を聞いて興味深かった。その主人は急な病で人生を閉じた。
明神池には嘉門次小屋が営業していてイワナの串焼き肴にビールを飲む。冷たい水の流れに縁台がつくられている。和室4室があって宿泊できる。
イワナと嘉門次小屋であるが、先祖の上条嘉門次は『日本アルプスの登山と探検』を著したウォルター・ウェストンの北アルプス登山の案内をした。嘉門次はウェストンを案内しいるときに夕食のイワナをひょいと1ダースほど釣り上げて焼いて供した。ウエストンの記録にある。30㎝を超えるイワナが並んだ写真も掲載されている。北アルプスの谷のイワナは釣り鈎を落とすと食いつく。沢山イワナが生息していた。
禁漁区になっている大正池より上流の梓川の支流の小さな沢や池ではイワナの姿がみえる。人影を恐れずに泳いでいる。明神池には大きなイワナがいて人がまく餌に飛びつく。釣らなければイワナは減らない。上条嘉門次が簡単に釣り上げたころのように上高地にはイワナ(岩魚)はいない。
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(写真と文は甲斐鐵太郎)
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