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「黙っていてはならない」 黒須茂(国立工業高等専門学校元教授)
倫理道徳は習った覚えはないが最近の政治家に必要であるようだ


「黙っていてはならない」 理不尽を訴える民主主義を守りたい 黒須茂(国立工業高等専門学校元教授)


「黙っていてはならない」 理不尽を訴える民主主義を守りたい 黒須茂(国立工業高等専門学校元教授)

写真は夏雲が涌く7月の霧ヶ峰高原。
(写真と本文は関係しません)


 筆者は埼京線の十条という貧乏人の多い北区という所に生まれ育った。

 物心がついてから東京の周りをウロウロ転々として、栃木県は小山市にある専門学校に職を求め、30年間にわたる教員生活を終えた。

 筆者と縁のあった不運な学生に対して、期待をこめて「別に偉くならなくてもよいから、世の中の理不尽なこと、不条理なことには敢然と意見のいえる大人になってほしい」といってきました。

 毎年、秋に筆者の担任していたクラスの旅行が定例となり、今では20名近い卒業生が参加している。宴会が始まると、卒業生による自分の現状の近況報告が行われる。その近況報告の中から2つの話題を紹介しよう。

 ある卒業生が数年間勤めた会社を退職して、千葉に住んでいる彼女に惹かれて、千葉にあるガスの供給会社に新聞広告を見て応募し、勤めることになりました。そのガス会社の叩き上げの社長、従業員の前で訓辞するのが人一倍好きで、毎日朝礼の後10~20分の訓辞をするそうであった。

 あるとき、社長が仕事で茨城方面にドライブにでかけたとき、ある集落の家屋が3階建てのお城のような建物の群れをなしているのに遭遇して、その集落の裕福さにびっくり、他人が羨むほどの家を建てることが「男の甲斐性」といった偏った哲学を胸に秘めて戻ってきたそうだ。

 早速、朝礼において、従業員の前でその感激を伝えました。それでやめておけば、何も問題はなかったのですが、よせばよいのに従業員に感想を求めました。事務所の女の子たちは

 「どんな収入の人が、そういう家を建てられのかを知りたい」
 「どんな社会的地位の人がそういう御殿のような家に住めるのか」
 「私も一日も早くそのような御殿に住んでみたい」

といった内容で、社長をよいしょしたからたまらない。

 すっかり有頂天になった社長が、よせばよいのに筆者の教え子に白羽の矢を当ててしまった。

 「おっそうだ!この間、工業高等専門学校を出た者が入社してきたな。そうだ。お前だ。お前はどう思う?」

 そこで、教え子はしどろもどろやっていれば、嵐も通り過ぎてしまったのであるが、あまりに周りの者がバカバカしいことを言うので、ついに本音を喋ってしまった。

 「家というのは、夫婦と子供たちが楽しく暮らせるだけのスペースがあればよい。御殿のような家を建てて、やがて子供たちも出て、夫婦だけが残されれば、掃除だけでも大変なことになる。私は御殿のような家を間違っても建てようとは思わない」と言い放ってしまった。

 さあー、怒り出したのはガス会社の社長である。面目を丸つぶれにされたその社長は「お前のような人間をサラリーマンの負け犬というのだ。一生、マッチ箱のような家を建ててローンで追われた生活をおくればよい。人間はもっと素直になって、お城を見たら、俺もあんなお城を持ちたいなと思うのが人情というものだ。てめえのような貧乏神が、この会社にいると、どうしても士気に影響する。さっさと辞めてくれ」といってのけた。

 その話を聴いた筆者は、次の会社を紹介したが、心の中でこういう卒業生が一人でも出てきたことにうれしくなった。まさに教師冥利に尽きる。
 
 さらに、ある卒業生が自分の息子の父兄授業参観に参加したときのことだ。

 その授業は倫理道徳だった。ある事例を与えて、それに対する生徒の対応をみんなで討議するという全員参加の授業内容のようである。

 その事例というのが「放課後、グランドで子供たちがサッカーの練習をしていた。生徒の一人がゴールに向かってキックしたところ、的を外して教室のガラスを割ってしまった。さあ、生徒たちはこの問題をどう処置すればよいのか」への対応を生徒たちに聞くというのが主旨である。

 どうせ教育委員会の馬鹿な親父らが考えた未熟な問題であるが、その正しい対応というのが、教え子によると、「教員室の担任にその事実を報告し、その指示に従う」ということであったようです。

 しかし、私の教え子は父兄懇談の際に、ほかの父兄の前で「グランドで生徒たちがサッカーの練習をしていたら、教室のガラスを割ってしまった。生徒たちは日常当たり前のことをやっていただけで、何も問題になるようなことをしていたわけではない。教室にガラスの破片が散らばっているのは、翌日の授業に支障をきたすので、掃除は生徒たちが行うのは当然として、後はそのままでよいのではないか。見回りに来た警備員のおじさんもガラスの破損に気がつくし、後は学校側がその報告をもとに修繕すれば何も問題はないはずである」

 生徒たちの担任を通しての学校側の主張は「自分の不始末は教員に報告して、その指示に従う。たとえ教員に黙っていても、教員はすべて(密告者の協力で、)お見通しなのである」という上からの目線による解決案を提示した。これでは子供たちの自主的な行動が育つわけがない。

 確かに意見の選択肢の中に「その事実を黙っていて教員には一切報告しない」という意見もあって、それに賛成した女子学生が三人もいたそうです。

 その担任の先生もさる者、授業中にその奇特な生徒たち三人を当てて意見を求めるというようなことはしなかったそうだ。

 倫理道徳なんていう学問は習ったことはないが、最近の政治家、学校の教師の不始末を見るにつけ、大人に必要な学問のように思える。

 権力者に向って理不尽を訴える民主主義をいつまでも守りたいものだ。皆さんもお孫さんとお話しすることもあるであろう。あまりよい教育環境で勉強している訳ではないことを知っていただきたいだけです。

(執筆 黒須茂 元国立高等専門学校教授 日本計量史学会会員 2017年7月)

「黙っていてはならない」-理不尽を訴える民主主義を守りたい- 黒須茂(国立工業高等専門学校元教授)


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