写真はアルベルト・アインシュタイン。アルベルト・アインシュタイン（1879年から1955年）は、現代物理学の父とされる理論物理学者。主な業績と特徴は以下のとおり。相対性理論＝時間と空間の概念を覆した「特殊相対性理論」と、重力を時空の歪みとして説明した「一般相対性理論」を提唱。光電効果の解明＝光が粒子（光量子）としての性質を持つことを証明し、これにより1921年にノーベル物理学賞を受賞。世界一有名な式＝質量とエネルギーの等価性を示すE = mc2を導き出した。平和活動＝晩年は核兵器廃絶を訴える「ラッセル＝アインシュタイン宣言」に署名するなど平和運動をした。
（タイトル）
科学の言葉としての国際単位系 (SI)
（本文）
キログラム単位の「k」は小文字で書く。大文字で「Kg」と表記してはならない。キログラム（英語: kilogram, 記号: kg）は、国際単位系 (SI) における質量の基本単位である。国際キログラムともいう。グラム (gram) はキログラムの1000分の1と定義される。またメートル系トン(tonne) はキログラムの1000倍（1メガグラム）に等しいと定義される。
ブログに書いた上の文章がよく読まれている。世の中の人はキログラムの正式の文字表記のことを知らないからハァと気付き驚くことの反証である。世界の主要各国がこの計量単位を用いるように努めている。国際単位系（ＳＩ）は科学技術の基礎である計量のその単位の国際的な取り決めであり、メートル法の精神を体現してより良い単位に発展させるべく地道な努力がつづけれている。科学の基礎の計量のその単位は、科学の共通語である。単位をあらわす名称とその記号には規定があり、どの国でもそれに従うと科学の世界はもとより生活の分野でも計量の単位や記号の表記によって意味を理解することができる。国際単位系（ＳＩ）は世界の計量の単位の共通語である。そのようななかアメリカ合衆国では長さの単位にヤードを用い、質量の単位にポンドを用いる習慣が残っているので、速さがマイルで表示されるという状態にある。
言葉が数式と同じ働きをすることが理想だ。「はじめにことばがあった。ことばは神と共にあり、ことばは神であった」とヨハネは福音書で述べる。人の言葉は時代と環境に影響されこれから抜け出しがたい。現代の人々の言葉は自分の言葉ではなく社会から押し付けられている要素がとくに強い。「私は覚えています」「私は記憶しております」は英語表現の日本語への影響の代表例。簡素過ぎる日本語は難しい言い回しはしない。「認識します」「感無量」という言葉の洪水に辟易する。
漢語は使うな、難しい言葉は使うな、そして互いに意味を違って取るカタカナ語は使うな、と言いたい。うんと平易な言葉、できるなら和語(わご)（大和言葉）を使えば会話は通じる。言葉に乗り移った概念を連ねて話していると、ともするとその人は自分を見失ってしまう。大学生の多くがこのような会話をし、結果として類似の思考方式に固まる。教育の不始末といえる。言葉が真理に迫るよい道具になるように現代の日本人は言葉を選んで使うように心がけたらよい。論理学は数式と似たような働きをする。言葉が数式と同じ働きをすることが理想だ。
国会議員が「収斂(しゅうれん)する」いう言葉を使い格好をつけるが、数学者の藤原正彦は数学の世界における収斂とは似ても似つかないと語気を強める。言葉が真理に迫る道具になるように言葉を選んで使いたい。
数学の世界における収斂は収束（en:convergence）に同じ。数列や関数などの数学的対象がある決まった値や対象に限りなく近づいていく性質を指す基本的な概念。確率論・統計学では観測数が増えるにつれて、ランダム変数が特定の値に近づく（収束する）という概念であり統計的推論の基礎。応用数学・数値計算では微分方程式の解析やコンピューターを用いた数値シミュレーションにおいて計算結果が安定した解に収束しているかを判定するために用いられる。
真理を深く追求するための言葉を現代の日本人は持たない。既存の概念でとらえきれないのが新しい真理であり、そこには新事実の発見がある。
ニュートリノに質量があることを数式で表現し、その数式にある事実をスーパーカミオカンデはニュートリノの質量現象がとらえた。これによって宇宙の質量の不調和の謎がある程度解けたが、まだ不明なところがある。というよりも新しい科学的発見は新しい謎を登場させる。宇宙の統一理論の構築はまだ先のこと。
言葉が真理に迫る道具になるように言葉を選んで使いたい。
2025年は三島由紀夫が生きていれば100歳になることからNHKは特集番組をつくった。三島は兵役に服することを極度に恐れ、偶然にも検査のときに体調が悪かったので逃れることができた。日本人初のノーベル文学賞に選ばれると伝えられていたことから受賞談話をある出版社に委託していた。自衛隊市谷駐屯地への乱入に際しても同じであった。兵役逃れが自衛隊への体験入隊とその後の武装蜂起の訴えへの形を変えた。川端康成のノーベル文学賞受賞に際しては「日本文学が認められたのだ」と鎌倉の川端邸に足を運んで談話を発表した。
『どくとるマンボウ青春記』の北杜夫は油断ならない。湯川秀樹と一緒の講演旅行ではちょっとした冗談に湯川が「何を言うのだ」と血相を変えたことを文章にしている。小説『白きたおやかな峰』は、カラコルム・ディラン峰（カラコルム山系、パキスタン、7,266ｍ、世界93位）京大遠征隊（京都府山岳連盟、京大OBが中心となった組織）に医者として同行した体験をもとに書かれている。旧制松本高校の卒業生がこの隊の隊長であったことに機縁する。
三島由紀夫は『白きたおやかな峰』の表題に対して「たおやかな」は表現としてはおかしい。「白き」とするなら「たおやかなる」でなければならないと論じてきた。北杜夫の反撃は筋違いである。三島由紀夫も母親のことを自分と同じように「お母さま」と呼んでいたことを文章にしてばらす。北杜夫は斎藤茂吉の次男であり祖父が興した東京市赤坂区青山南町の青山脳病院の御曹司として育った。少年時代は昆虫採集に熱中する日々を送り、青南小学校では四年まで金免状の優等生だったが、腎臓病による病欠で五年から劣等生となり、府立一中の受験を断念した。麻布中学時代の成績は259人中6番であった。松本高校（旧制）に入学しても昆虫熱は冷めなかった。三島由紀夫も北杜夫も上流の家で育ったお坊ちゃまだった。お坊ちゃまの二人の会話とこぼれ話である。
さて科学者の湯川秀樹とノーベル文学賞に近づいていた三島由紀夫が登場したところで、科学論文や文芸とは別の種類に属するニュース報道に盛り込む材料とその要素のことを取り上げる。
火事場のどさくさでニュース報道をどのように書くのか。報道をするときに求められる記事要素、文書要素は簡単である。火事場に行かないまでも取材前に明らかなことがある。
火事は何時あったのか。火事場は何処であるか。これは火事場に行かなくてもわかっていることだ。つづいて次のことを確認する。火事は消されたのか。類焼中であるのか。火事で誰が被害を受けたのか。火事の火元は何処で誰の家だったのか。火事は何故発生したのか。それでどうなった。
報道記事は次のことを要素にして構成する。
１、何時
１、何処で
１、誰が
１、何を
１、どうした
１、何故そうなった、なぜそうした
１、それからどうなった
１、同じことが起こったらいいのか、起こったら駄目なのか
１、良いことならそれをどのように広める、駄目なことならどのようにすれば起こらないか
１、ほか、関係する事柄
上の事柄の性質を調べると次のようなことがわかる。何時、何処で、はあらかじめわかっている。誰が、何を、どうした、の三項目を調べて書き込む。何故、が追加されると内容がさらにわかる。上のことは創作力は要らない。見るがまま、あるがままを文章にすればよい。説明である。それからどうする、それからどうなった、がさらに追加されればもっとわかる。上のようなことだ。写真があれば添える。報道は頃合いをみることも大事だが早いことは何よりも大事である。
強者になると火事の報と聞いただけで上の要領で現場に行く前に記事をつくってしまう。現場では事実を確認して写真を撮るだけ。
読み物となれば人を面白がらせることが要素に含まれる。ノンフィクション小説は、事実を集めて積み重ねた文章である。下手な創作よりも事実は小説の奇怪さを超えることが少なくない。小説の奇怪さを超える事実を文章にして作り出されたのがノンフィクションだ。井伏鱒二の『山椒魚』はユーモア小説のようにみえるが皮肉や様々なことを人に伝える。松本清張の『点と線』には不思議さを紐解くことの面白さがある。『坊ちゃん』では勧善懲悪と破天荒とが組み合わさった江戸っ子の啖呵切りが痛快だ。
ノンフィクションもそうでない小説も説明の文章になっていてはならない。ならないというよりも説明の文章は面白みがない。報道記事や論説記事は説明でよい。読む人が知りたいことがわかればよい。そのための記事である。
文章と情報とAI について。AI（人工知能）とは、コンピューターが人間のように学習、推論、認識、問題解決などを行うための技術やシステムの総称。機械学習や深層学習（ディープラーニング）を基盤とし、データからパターンを学び、自動運転、音声認識、医療診断、画像生成（ChatGPTなど）など、多岐にわたる分野で活用される。
AIの特徴は１、学習能力＝ 経験（データ）を積むことで知識を深め、精度を高めます（機械学習・深層学習）。２、知的活動の模倣＝ 人間の「知能」とされる、言語の理解、推論、判断、問題解決などをコンピューター上で実現。３、自動化・効率化＝単純作業から複雑なタスクまで、人間よりも高速かつ正確に処理。
AIの活用例として次がある。１、身近なもの＝ スマートフォンの音声アシスタント、迷惑メールフィルター、推薦システム。２、ビジネス・産業＝ 金融（不正検知）、製造（異常検知）、医療（画像診断）、マーケティング。３、最先端技術＝自動運転車、生成AI（文章・画像生成）、ロボット制御。
AIの種類（概念的な分類）としては、１、狭義のAI（特化型AI）＝特定のタスクに特化し、高い性能を発揮します（現在の主流）。２、広義のAI（汎用型AI/AGI）＝人間のように多様なタスクをこなせるAI（将来的な目標）。
AIを大まかに捉えると１、明確な定義は存在しない＝提唱する機関によって定義が異なりますが、「人工的な知能」という概念は共通。２、進化する技術＝ビッグデータと計算能力の向上により、AIの精度と応用範囲は日々進化。
情報化社会とマーシャル・マクルーハンは情報社会論について。マクルーハンは情報社会においては地球は小さな村になると言う。100人だけの村人は、どこの鍛冶屋はどのような腕前で、お酒も飲まずに遊びも釣りだけでとても真面目に仕事をしているということをよく知っている。誰が信用できるのか、信用に値するのかということが見える。マクルーハン理論に立ち入ると、私たちはプライバシーとまたこれに関連して手持ちの財布の中身は見えないまでもほかはすべてあからさまなっていくと結論される。
マクルーハンは、「情報社会論」という言葉を使って理論を構築したわけではないが、そのメディア論は情報社会の到来とその影響を予見していた。
中心的な理論と情報社会論との関連性について、「メディアはメッセージである (The medium is the message)」とする。メディアが伝える情報の内容（メッセージ）よりも、メディアという形態そのものが社会や人間の感覚に与える影響の方が大きいと主張。例えばテレビが登場したことで、その映像という形式が人々の認識や社会のパターンを変化させたと論じた。この洞察はインターネットやデジタルメディアが社会に変化をもたらす「情報社会」の議論の基礎となっている。
「地球村（グローバル・ビレッジ）」論＝電子メディア（特にテレビなどの即時的な情報伝達手段）の発達により、世界中の人々が瞬時に繋がるようになり、地球全体が一つの「村」のようになるという概念を提唱。インターネットによるグローバル化社会を正確に予見していあた。「人間の拡張」＝メディアを「人間の感覚や機能の拡張」と捉えた。例えば車輪は足の拡張、本は目の拡張。電気（電子メディア）は中枢神経系の拡張であり、これにより情報の伝達速度が劇的に向上し、社会構造全体が変容する。
以上を内容とするメディア研究を通じて、マクルーハンは現代の情報化社会の特徴を分析し、情報社会論を説いた。
マーシャル・マクルーハン（Marshall McLuhan）は、1960年代に今日の情報社会の到来を予測したカナダ出身研究者。1911年7月21日から1980年12月31日。1933年マニトバ大学卒業。1934年同大学院修士課程修了。ケンブリッジ大学に入学。1936年同卒業。1943年ケンブリッジ大学よりPh.D。1952年トロント大学教授。1964年ロイヤル・ソサエティ・オブ・カナダのフェロー。1970年カナダ勲章。1980年オンタリオ州トロントで死去（69歳）。
大学生の就職に当たって公務員を選ぶか民間企業を選ぶかという選択に対して、民間企業は利益追求という言葉によって解説される。比叡山延暦寺に建てられている柱に刻まれた言葉「一隅を照らす、此れ即ち国宝なり」こそ、全ての労働に共通する性質である。
「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」は天台宗の開祖・最澄（伝教大師）の言葉。最澄の著書『山家学生式（さんげがくしょうしき）』の冒頭にある一節。「金銀財宝ではなく、自分のいる場所（一隅）で精一杯努力し、輝く人こそが真の国の宝」。一人ひとりが与えられた場所で責任を果たし周囲を明るく照らすことで、社会全体が豊かになることを説く。「径寸十枚、是れ国宝に非ず」すなわち「直径10寸の宝石（金銀財宝）は国の宝ではない」のであって物質的な富を否定する。「今いる場所で光り輝く人こそが国の宝である」ので、自己の場所での責任を持ち努力することが大切であるのだ。「一隅（いちぐう）」とは自分が置かれた持ち場のこと。「照らす」とは輝き、良い影響を与えること。その光が伝播し、周りも明るくする。
以上を概括すると、どんな小さな役割でも全力を尽くすことが大切。褒められることや見返りを求めず自己の理想や使命感をもって努力する。一人ひとりの努力が積み重なり、やがて社会全体を明るくする。人々が自己の役割に励み心を豊かにすることで平和な世の中を築くことができる。
現代の社会は一生懸命働いて人によっては成功し年収一億円の給与を得ても幸せを実感できないのか。ゴールドマンサックスの日本人部長の年収の事例であり、この人は働き甲斐に疑問を感じて退職した。
北杜夫はファーブルに成りたかったのであるが家業である医者の道を選んだ。旧制松本高校に入学する前に東大の医者促成コースに合格していたのだが退学して、旧制高校から旧制大学に進んでの医者の道を歩き直した。昆虫好き、文学好きを捨てきれない北杜夫をグータラ医者にし、文芸で生活に収入の主体を移させた。養老孟司も昆虫研究のためにこの分野のある九州大学への道に憧れたが、喰えないからと医者の道を選ばされた。東大医学部の解剖学教室の教授を57歳で退職したあとに出した本『バカの壁』シリーズは300万分以上も売れて、大学からの給与分を税金で補填したと述べる。養老孟司はゾウムシの研究を続けており、ゾウムシの分類から日本列島の変遷を掴んでいる。
働いていてもつまらないことについて経済学はGDPと幸福度の乖離、仕事の目的と意味の喪失、分業化・専門化された労働と疎外感、限界効用逓減の法則と過労、構造としての搾取、生活満足度重視政策への価値転換、ワーク・ライフ・バランスと時間的効用、ソーシャル・キャピタル（社会関係資本）の重視などを説く。
最澄の言葉「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」は至言であり、働いている人々はときどき思い出して口にしてみることだ。千代田区九段の並木道に蝉が大量発生していたころに幼稚園児であった蕎麦屋のアキオ君は生態系などということは意識の片隅にもおかずにアブラゼミをたも網で掬ってはギィーギィー騒ぐのを面白がって虫かごを満杯にしていたのであった。養老孟司は88歳になっても元気に虫捕りに励んでいる。北杜夫にしても何時しか好きな文芸の世界で生きていた。屈折した心理と折り合いをつけることができなかった三島由紀夫は自爆的に人生を放棄した。