ハカリの定期検査の実を上げる方策
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ハカリの定期検査の実を上げる方策
写真は発言する新潟県計量協会専務理事(当時)捧保文(ささげやすふみ)氏。
(タイトル)
ハカリの定期検査の実を上げる方策
(本文)
2015年に開かれた関東甲信越地区計量団体協議会(平成27年度)の議題である「ハカリの定期検査の完全実施を期すため」の方策についての議論は次のようであった。
A、 新潟県計量協会専務理事捧保文(ささげやすふみ)氏。発言の大要は次のとおり。
1、ハカリの定期検査検査の実施率を上げるためには、当該ハカリがどこにどのくらいあるか分かっていることが大事だ。計量行政はこれまで県の検定所が新潟県内の市町村に依頼して調査をしてきた。その調査を徹底すること、そしてその内容が定期検査の実施につながるように精密度を上げることが重要である。
2、新潟県計量検定所の職員は減員されているからこそ定期検査対象のハカリの所在場所を把握するために一層工夫しなければならず、このために新潟県内の市町村の担当者にどれが検定対象のハカリであるか理解させる説明やそのための講習をすることが求められる。
3、ハカリの販売事業が登録制であったころには再登録のために10年ごとに計量検定所と計量協会が連携した講習を実施していて、ここで取引証明にかかるハカリがどのような内容のものであるか説明できていた。
4、これが届出制に変更になってからは一度届け出ればあとはそのままで、知識の供与ということは実際にはできていない。県内の計量器販売届出事業者に対して講習を実施しようとして二百社に案内を出すと参加するのは十社ほどであり、その十社は日ごろから計量法令の知識習得に熱心な事業者ということである。そのような事情のために現在は定期的な講習会は行っていない。
5、病院や学校などに納入するハカリの多くは取引証明にかかるものであるが、納入事業者にはこの方面の知識が不足しているために検定証印がついていないものが安いからとこちらを納品していることが多い。ここには計量法に違反しても大したことはないという意識も働いているものと思われる。全体として由々しき状態にある。
B、東京都計量検定所所長戸谷嘉孝(とたによしたか)氏。発言の大要は次のとおり。
1、ハカリ定期検査の抜けを防止して実施率を高率で確保するためには検査対象器物を把握していることが大事である。
2、定期検査対象ハカリの所在場所を確認するために東京都計量検定所では高齢者事業団体などを通じて調査を実施している。定期検査対象ハカリの内容は複雑であり良く説明してあっても理解が行き届かないことなどが調査の現場では発生している。
3、東京都計量検定所では調査の実を上げるために様々な取り組みをしている。
議論のうちで注意を引く発言は上の二つであり、この内容はweb上に掲載されており会合当日から11年ほど経過した今日なおアクセスが続いている。
次は本議題に対する計量計測データバンク編集部の考察である。
1、計量法の目的である適正な計量の実施の確保の根幹になっているハカリの定期検査の完全実施実現に遠く及ばない現実を変えていく決意が漲(みなぎ)っている雰囲気が醸成されていた。
2、計量行政の目下の大問題でありハカリの定期検査の実施率が下がっていくことになると、法と現実の乖離(かいり)が顕著になって計量行政を根幹から揺るがす事態になりかねないという危惧が議論に熱を帯びさせた。
3、ハカリの定期検査実施が低下しているのは地方分権一括法の施行のおりに計量行政を機関委任事務から自治事務に移行させたことによって、国から交付されて回されるはずの計量行政費用が不当にも少なくされていて、実務を担当する職員が減らされたあげくに計量行政の実務を担うための知識と技術を持たない者が他の職務と兼務するという事態が幾つも見られるようになった。
4、大きな人員を要していた計量検定所あるいは計量検査所などでは人員が削減される傾向が急速に進行している。かつて情熱豊かに計量行政を推進していた計量検定所でも専門職員は居なくなり、質量計などの基準器検査ができない状態にある。また計量検定所でハカリの検定の実施する能力がないために、地方の計量協会職員がこれをしているという計量法違反の状態も出現している。そうしたことが法規違反であることを知らない計量協会幹部がハカリの検定を実施していることを公の場で説明するという事態を「ここまで堕ちたか」と単純に語ることはできない。
5、計量行政が機関委任事務であったころには中央官庁の担当職員が実施状況を監査するために計量検定所を訪れることがなされていた。自治事務になった計量行政ではこの監査がなくなっていて地方公共団体の責任で計量法令に適応した行政事務が行われているか自らが判断する。ところがハカリの定期検査をはじめとして計量行政の実務としての事務内容に疎い状態が地方公共団体にはある。疎い振りをして余所ではやっていないのだから自分のところでもやらないで行こう、とう判断を「積極的」にしている節がある。このようなことが重なってハカリの定期検査ほか計量行政は機関委任事務時代からは大きく後退しており、お世辞にも「安全・安心」な状態ではない。
6、地方公共団体が実施すべき計量法の定めによるハカリの定期検査業務の責務を知らない、知らないから実態としてこの業務をサボるということが進行している。
議題は、平成27年(2015年)10月23日(金)午後に東京都台東区の「浅草ビューホテル」で開かれたときのものであり、計量行政の実を上げるために何時までも追い求める大事な課題になっている。
ハカリの定期検査の実を上げる方策
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計量計測トレーサビリティのデータベース(サブタイトル 日本の計量計測とトレーサビリティ)
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計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)-2-
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計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)-3-
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