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私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)

私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その31- 煙を建屋外に出さない厳しい制約
製鋼工場から発生する多量の煙や粉塵を建屋内にて吸い取ってしまわなければならない



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私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その31- 煙を建屋外に出さない厳しい制約
製鋼工場から発生する多量の煙や粉塵を建屋内にて吸い取ってしまわなければならない

煙を建屋外に出さない厳しい制約

目的は省エネ・工事費削減 建屋集塵機の風量制御

 1975(昭和50)年、環境の問題が日増しに大きく取り上げられるようになった。わが製鋼工場の50t電気炉2基を中心とする6カ所の精錬炉や造塊ヤードにおいても、煙を建屋の外に出してはいけないという厳しい制約がかけられた。製鋼工場から発生する多量の煙や粉塵を建屋内にて吸い取ってしまわなければならないというのである。

 種々の計画が練られたが、計算によると膨大な集塵機と屋根の上には大口径の配管を設置せねばならなくなり、建屋自身がその荷重に耐えられるかどうかという問題まで出てきた。

 そこで、私はコンピューターを利用した風量制御を提案、操業に僅かの制約は与えるが、全体として集塵機・建屋上配管を半分にできると、その概略を説明した。各発塵設備の運転に優先順位を設け、または電気炉2基の操業開始時期をその後の処理作業での発煙パターンを考慮して、少しずらして開始すれば良い。また排煙を伴う各作業の開始に際しては、予約制としてボタンを押すだけの操作をすれば、後は12枚のダンパー操作を総てコンピューターに行わせ最小限の風量で操業が可能となる、いやそうして見せる、というものであった。

横河電機(株)の協力

 (コンピューターを利用した風量制御を提案したが)予算が通ってからが大変であった。集塵機屋には、総力を挙げて開度―風量が普通のS字型でなく、できる限り直線性を持ったダンパーを設計するべし、と注文を付けた。

 コンピューターの発注先が横河電気(株)と決まった時には、県立西宮高校の同期で同じ物理部でガキ同士で騒いでいた友(当時横河電機(株)の電算機担当部長)に趣旨を説明して、横河電機で一番の流量のシュミュレーション計算とソフトができる人を廻して欲しいとお願いした。ありがたいことに、快く引き受けてくれて、実に適切な素晴らしい人を担当させてくれた。

 こうして制御の問題が片付けば、残るは計測、即ち風量測定である。口径1m~2mの大口径での風速測定は初めての経験であった。文献調査から始めたが、行き着くところはやはり多孔ピトー管であったが、取り付け場所の選定に細心の注意を払った。これでやれやれ。

 それでも、いざ工事に入ってみると直径2mにもなる煙道が屋根に上げられ、2基の風量25000m2/minのブロアーと1100kwのモーター2台を見ると、我ながら「デッカイことを企てたものだなぁ。うまくいくかなぁ」と自信が失せる思いがしたものであった。部分的な試運転を済ませ、総合的な仮想運転へと移った後、部分的な実運転から総合的実運転へと入った。

煙の道

 結果は大成功、これほどコンピューターの威力を肌で感じたことはなかった。
 その後、個々の設定風量を少しづつ変更して行ったり、タイミングのずれを修正したりしていくと、コンピューターの計算の威力はますます増していった。
 発生するであろう煙を想定して、前もってダンパーの開度を所定のところに持っていき、風量が出てきているタイミングで発煙作業をはじめると、煙は素直に煙道に吸い込まれていく。実に美しい煙の流れである。これに反して煙が発生した後から吸い取ろうとしても、すなわち後から煙の道を付けようとしても、一度広がった煙は集まらない。従って予約、ダンパー開度設定、発煙作業開始の順序の厳守で製鋼作業は何の問題もなく進められ、建屋からは一条の煙も出なくなった。

 投資コストが半減で収められたことが何よりも喜ばれたのは言うまでもない。この件では、特許も取ったし、機械振興協会賞も頂いた。それに付けても、高校時代とはいえ、友達とはありがたいものである。

(つづく)

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その31- 煙を建屋外に出さない厳しい制約
製鋼工場から発生する多量の煙や粉塵を建屋内にて吸い取ってしまわなければならない


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私の履歴書 高徳芳忠 神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録(日本計量新報デジタル版)

私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その1-はじめに
西宮高校から神戸大学の計測工学科に進み川崎製鉄千葉製鉄所で計量の仕事を始める

私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その2-我が家と計量の係わり
祖父の高徳純教が「はかり屋」を始め社名に「メートル」を用いた気概に敬服

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その3-「異人さん」と「神戸メートル協会」
母は大阪の船場の商家の生まれで、“こいさん”(末娘)として育った

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その4- 父(忠夫)のはかり屋「高徳衡機(株)」
裕福な青年期を過ごした父は祖父が始めた「はかり屋」の跡を継いだ

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その5- 私の誕生は1936(昭和11)年9月である
私が誕生したのは神戸の御影という阪急とJRに挟まれた静かな住宅街であった

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その6- 1943(昭和18)年、私は魚崎小学校に入学した
疎開列車は家族揃って城崎温泉に湯治に行ったときと同じ流線形の蒸気機関車

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その7- 1高徳家の由来
酒醸造や両替商を営みかつ庄屋でもあったのが我がご先祖、姫路藩ご用達となり苗字帯刀を許されたらしい

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その8- 疎開地・丹波での小学生時代
疎開先で雑音と音声の途切れる玉音放送をラジオ屋の前で聞き後で戦争に負けたのだと教えられた

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その9- 田畑を耕し薪採りをした中学時代
高校1年生になる1952年までの10年疎開地に居着くことに 1949年に湯川博士のノーベル物理学賞

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その10- 父のはかり屋への復帰
私は京都府立福知山高校入学後の3学期に編入試験を受けて兵庫県立西宮高校に転校した

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その11- 西宮での高校生活
2・3年生の担任は英語教師である「英語は丸覚えなり」と指導され、これに従って何とか様になった

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その12- 文学への傾倒
浪人時代お金はない。参考書代が小説代に化けていった。父は「芳忠には小説を読ませるな」と。

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その12-2- 牧師と教会の人々
私を育ててくださった他大学の関西学院小林信雄氏ほかの偉い先生方

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その13- 楽しき神戸大学での学生生活
ボート部では艇が走る水音とスピード感、漕ぎ疲れ艇庫に戻る時の疲労感と達成感に浸る

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その14- 国立大初の神戸大学「計測工学科」に進む
J・トムソン(英国)の言葉「科学は計測に始まる」に感激、「科」とは禾(か)(稲・麦などの穀物の総称)を斗(容量の単位)るに学をつけて科学

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その15- 時代の要求で生まれた「計測工学科」の名が消えた
神戸大学「計測工学科」は「システム工学科」に、今では「情報知能工学科」になっている

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その16- 3年夏休みの工場実習は川鉄千葉工場へ
「石を投げれば37(昭和37年入社)に当たる」学卒大量採用の年度に川鉄に採用決定

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その17- 千葉製鉄所管理部熱管理課に
「千葉製鉄所管理部熱管理課に勤務を命ず」という辞令をもらい、「特急つばめ」で東京に向う

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その18- 川崎製鉄(株)最初の職場は計量整備掛
「始めは現場で人と計測機器に接するのが一番の近道だよ。これ程恵まれた仕事の与えられ方はない」

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その19- 消耗型熱電対の導入
計量整備掛に就いて1年も経っただろうか、次は消耗型熱電対が入ってきた

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その20- ドイツ人と計測技術の導入
端子台に及ぶまでドイツ独特の技術レベルの高さに敬服したものであった。

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その21- 仲間達との交わり
何の為に仕事をしているのか」と問われ、私は「金を儲ける為でない、隣人の為だ」と答えた

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その22- 電子計算機による制御
千葉でのプロセス用コンピューターとの初めての出会いは忘れることができない

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その23- 計量士の誕生
口頭試問は何を答えたのか全く記憶にない。試験官に「お父さんはお元気ですか」と聞かれびっくり。

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その24- 日本学術振興会製鋼第19委員会と計測部会
学術振興会19委員会と共同研究会計測部会で鉄鋼各社の計測担当者が調査・研究の成果を発表していた

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その25- 計量管理委員会に若手技師としてデビュー
製品の歩留まり・品質・生産性・環境保全・安全等の計量・計測は確実か成果を報告をして指示を仰ぐ

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その26- 計測器をあえて設備しなくてすませる
「ハス切り」になるという原因は装置がさずかに横に動くとだったのでラインと装置のセンターを取り確かな据付をして対応

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その27- QCサークルができて活動がはじまった
計量中に排出ゲートからわずかな漏れが原因の誤計量が重役まで聞こえてしまった。それが失敗が教えた知恵になった。

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その28- 西宮工場にて掛長を拝命し計量と熱管理を担当する
「作業長や班長さんの査定は、あなた方が言っている事を信用しては行わない。あなた方の部下の仕事振りや日々の表情をみてあなた方の査定を行う」

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その29- 表面傷検査装置が開発課題であった
始めての海外出張 ヨーロッパの連中が何を考えているかが知たかったし、またお互いに議論もしたかった

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その30- 欧州鉄鋼業の表面形状検査を調査
ドイツでは鉄鋼業を訪ね、パリではゼンジミア社の人に会い、ロンドンでは形状検出機の発明者のDr.ピアソンに面会する

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その31- 煙を建屋外に出さない厳しい制約
製鋼工場から発生する多量の煙や粉塵を建屋内にて吸い取ってしまわなければならない

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