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私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)

私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その13- 楽しき神戸大学での学生生活
ボート部では艇が走る水音とスピード感、漕ぎ疲れ艇庫に戻る時の疲労感と達成感に浸る



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私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その13- 楽しき神戸大学での学生生活
ボート部では艇が走る水音とスピード感、漕ぎ疲れ艇庫に戻る時の疲労感と達成感に浸る

楽しき神戸大学での学生生活 ボート部へ


大学入学式(計測工学科全員)、筆者は後ろから2列目左から2人目。

 1962(昭和37)年に神戸大学に入学して、まず考えたのは教養課程の1年半は、運動部に入り体を鍛えようということであった。

 そこで山岳部にするか、ボート部か迷った。それでも一度は山岳部に決めかけていた。

 しかし、ちょうどその頃、神戸大学山岳部が北アルプスで遭難事故を起こし、2人が死亡と新聞に出た。それを知った祖母の猛反対にあって、私の決心はぐらついた。幼い頃から可愛がられていたせいか祖母には弱かった。それともう一つ、申し込み書に血液型を書き込む欄があり、それを見た途端にこれはヤバイという気がした。

 高校1年の生物の時間、血液型を調べるから耳たぶから血を採れと言われて、採っている最中に脳貧血を起こし倒れたことがあったからだ。生来私は血が出る話とか、手術の話は苦手なのである。結局、山岳部は断念してボート部へ。

神戸大学ボート部大学対抗戦は大阪の堂島川。公害の垂れ流しの川。

ボート部、行き着くところは二軍のコックス、三軍の漕ぎ手であった。

 もちろん一軍の漕ぎ手になれる程の大男では更々ないので、行き着くところは、二軍のコックス、三軍の漕ぎ手であった。その上、神戸には川がないので、大阪に程近い神崎川が練習場であったが、昭和33、34年といえば公害の垂れ流しの頃であったので、この川もお世辞にも水がきれいとは言えなかった。

 それでも住めば都、そんなことに屈してなるものかと、脚力や腹筋を鍛えて、号令を掛け合って頑張ったものであった。皐月晴れの日の夕日が沈むころ、皆で漕ぎ疲れ艇庫に戻る時に味わった疲労感と達成感に、この上なき満足を得ていた。艇が走る水音とスピード感がまた良かった。腹を空かして皆で十三や梅田に繰り出して、豚饅やラーメンを食べたものだ。

 さすがに暑い夏の日の練習は休みで、秋になるとまた始まった。実に楽しい日々であった。体を鍛えることの快感ないし清清しさは、このとき初めて経験した。シーズンの秋になると練習にも力が入り、大学対抗戦が大阪の堂島川であったので、当然そこにも出向き、ボートレースの醍醐味を味わった。

清水正徳先生から哲学を学ぶ

 神戸大学の教養課程には、昔の旧制高等学校のようなところがあり、学生に好きなことを好きなように学べる体制として、指導教官制が置かれていた。

 学生が気に入った先生を指導教官として選び、1年半はその先生と過ごすという自主的な担任制度である。

 私はこれを知った時、ボートで身体を鍛える一方、頭の方は哲学で骨組みを築くことを考えた。いつの時代の、誰の思想か、が判れば類型を辿っていけるような気がしたからである。しかも関西学院の先生達とは反対のマルクス系の哲学が良いと考え、先輩の話を聞くうちに、文学部の清水正徳(まさのり)という哲学の先生が大いに気に入って、すぐに申し込んだ。ヘーゲルが専門で東北大から武市健人(たけちたてひと)と共に神戸に来た先生であり、宇野弘蔵(こうぞう)にも明るい人であった。

 講義はギリシャ哲学から始まりカント・ヘーゲルに及んだが、ゼミの方ではサルトル・カミュの話が主であった。当時構内にあった、進駐軍の払い下げのカマボコ型の部屋で、500円のすき焼きパーティを催して語り合ったものである。

女性を交えての読書会

 神戸大学の教養課程では、今までよりも一段と広い世界に飛び込んだような気がして、非常に面白かったが、メンバーは、となると経済や経営学部の男が主で、女子がいない。

 パーッと明るい雰囲気も欲しいので、友と相談し先生の了解も得て「古典を読もう」というチラシを作り配布、『狭き門』『若きウェルテルの悩み』等を読みましょうと誘った。

 そうしたら文学部、教育学部からたくさんの女子学生が来てくれて、先生も大喜び。先生の解説を挟んで楽しいひと時が持てたし、この読書会は長続きもした。

 こんな事があって、教養過程の1年半はあっという間に過ぎてしまった。

 清水正徳先生とは、卒業後も何度か会っている。私が川鉄を退職後、先生と電話で話をし「最近はキルケゴールを読み直したく思っている」と話すと、先生は電話の向こうで、「近頃は随分読みやすくなっているよ」と励ましてくださった。

(つづく)

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録-その1-はじめに
西宮高校から神戸大学の計測工学科に進み川崎製鉄千葉製鉄所で計量の仕事を始める

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録-その2-我が家と計量の係わり
祖父の高徳純教が「はかり屋」を始め社名に「メートル」を用いた気概に敬服

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その3-「異人さん」と「神戸メートル協会」
母は大阪の船場の商家の生まれで、“こいさん”(末娘)として育った

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その4- 父(忠夫)のはかり屋「高徳衡機(株)」
裕福な青年期を過ごした父は祖父が始めた「はかり屋」の跡を継いだ

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その5- 私の誕生は1936(昭和11)年9月である
私が誕生したのは神戸の御影という阪急とJRに挟まれた静かな住宅街であった

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その6- 1943(昭和18)年、私は魚崎小学校に入学した
疎開列車は家族揃って城崎温泉に湯治に行ったときと同じ流線形の蒸気機関車

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その7- 1高徳家の由来
酒醸造や両替商を営みかつ庄屋でもあったのが我がご先祖、姫路藩ご用達となり苗字帯刀を許されたらしい

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その8- 疎開地・丹波での小学生時代
疎開先で雑音と音声の途切れる玉音放送をラジオ屋の前で聞き後で戦争に負けたのだと教えられた

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その9- 田畑を耕し薪採りをした中学時代
高校1年生になる1952年までの10年疎開地に居着くことに 1949年に湯川博士のノーベル物理学賞

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その10- 父のはかり屋への復帰
私は京都府立福知山高校入学後の3学期に編入試験を受けて兵庫県立西宮高校に転校した

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その11- 西宮での高校生活
2・3年生の担任は英語教師である「英語は丸覚えなり」と指導され、これに従って何とか様になった

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その12- 文学への傾倒
浪人時代お金はない。参考書代が小説代に化けていった。父は「芳忠には小説を読ませるな」と。

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神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その12-2- 牧師と教会の人々
私を育ててくださった他大学の関西学院小林信雄氏ほかの偉い先生方

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ボート部では艇が走る水音とスピード感、漕ぎ疲れ艇庫に戻る時の疲労感と達成感に浸る




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