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私の履歴書 安斎正一(計量士)-その12-
思い出に残る出来事 人命救助…お手柄少年安斎正一君

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私の履歴書 安斎正一(計量士)-その12-思い出に残る出来事 人命救助…お手柄少年安斎正一君

思い出に残る出来事 その1

人命救助…お手柄少年安斎正一君(昭和28年福島民報掲載)

 私が福島県安達郡上川崎中学一年生のときのこと、当時農村の中学生は農繁休業といって、農業の繁忙期の六月の田植え・麦刈り時期に一週間、十月の稲刈り時期に一週間、それぞれ学校が休みになって自分の家の手伝いをしたのです。ただし夏休みは7月25日から8月20日までと短かくなりました。

 昭和28年6月15日午後4時過ぎの出来事、私は家から500mほど離れた麦畑で麦刈りの手伝いをしていたのですが、農具不足のため家へ農具取りに戻ったそのとき当時三歳の男の子がヨチヨチと私に駆け寄って来て、「お友だちが荒井戸に落ちた」というので家から30mほどの荒井戸に走って行ってみると、白く濁った2m四方の真ん中に衣服の裾がかすかに見えて動きません。

 私はとっさに向こう岸にある1・5mほどの丸太に気づき、その先で水中を探ったら溺れている子供の身体に触れ、そして向こう岸へグイッと押しやりました。急いで子供を引き上げて土手の草むらに仰向けに置いたら、紫色というか青白い顔をして、私は死んでると直感したのです。溺れたのは近所の二歳の男の子でした。私は大声で「子供が井戸に落ちた」と近所中に聞こえるように叫び続けながらその男の子の家へ全速力で走って母親に知らせたところ、母親は気が狂ったように何かを叫びながら右往左往したのを忘れられません。

 近所の人達が大勢集まり、そこへ井戸に落ちた男の子の父親が駆けつけ、いきなり男の子の両足を一本ずつ両肩にのせてグルグルと遠心分離するように回転すること十回ほど、そして男の子を地面に置いて胸に両手を当ててゆっくりと繰り返して押していました。この手法を約十五分間何度か繰り返しました。

 父親は「もう駄目か」と呟きながら諦めきれないように続けていたその時、男の子の口からアーアーという声と同時にガバーと大量の水を吐き出したので「助かる」と誰もが叫びました。近所の二十歳のお兄さんが自転車で五キロメートルも走って医者を呼びに行きました。

 翌日晴天の朝、男の子は、父親に連れられて「ありがとう」と私に元気なお礼の挨拶にきたのです。

 父親に聞いてみると、兵隊で「人工呼吸」の訓練を受けたことがあり、それを実行してみたとのこと、私はこのとき初めて人工呼吸ということを知ったのです。

 その父親は、「私を自分の子供の命の恩人」と中学校、警察署それに新聞社へと知らせたため、私は子供を救い上げたときの状況を何度もやり、写真まで撮られたりして、当時の福島民報だったと思いますが、「お手柄少年安斎正一君溺死寸前の子供を救う」という見出しで掲載され、二本松警察署長から人命救助で表彰され、当時は村中の模範少年として有名になったのです。

(つづく)

私の履歴書 安斎正一 目次
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その1-本欄の執筆をなぜ私が?
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その2-私の職場
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その3-私が生まれた日と父母兄弟について
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その4-夜間高校生と計量士との出会い
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その5-大学進学と空腹の日々
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その6-妻との出会い
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その7-寺岡精工へ入社
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その8-計量教習所と計量士資格取得
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その9-計量士資格取得
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その10-計量士会入会から役員35年間続く
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その11-寺岡精工CIは「新しい常識を創造する」
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私の履歴書 安斎正一(計量士)-その2-私の職場
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私の履歴書 安斎正一(計量士)-その4-夜間高校生と計量士との出会い
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その5-大学進学と空腹の日々
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その6-妻との出会い
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私の履歴書 安斎正一(計量士)-その8-計量教習所と計量士資格取得
私の履歴書 安斎正一(計量士)-その9-計量士資格取得
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私の履歴書 齊藤勝夫(元千葉県計量検定所長、元流山市助役)(日本計量新報デジタル版)

私の履歴書 齊藤勝夫(元千葉県計量検定所長、元流山市助役)(日本計量新報デジタル版)-その1-
第一章 私の歩んだ道-公務員として信念を持って 第1編 公務員人生を歩みだす
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第一章 私の歩んだ道-公務員として信念を持って 第2編 度量衡法末期の実状
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私の履歴書 齊藤勝夫(元千葉県計量検定所長、元流山市助役)(日本計量新報デジタル版) -その3-
第一章 私の歩んだ道-公務員として信念を持って 第3編 新しい夜明け、計量法の歩み
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私の履歴書 高徳芳忠 神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録(日本計量新報デジタル版)

神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録-その1-はじめに
西宮高校から神戸大学の計測工学科に進み川崎製鉄千葉製鉄所で計量の仕事を始める

私の履歴書 高徳芳忠(たかとく・よしただ)(日本計量新報デジタル版)
神戸大学計測工学科をでて製鉄会社で計量管理の仕事をした男の記録 -その2-我が家と計量の係わり
祖父の高徳純教が「はかり屋」を始め社名に「メートル」を用いた気概に敬服

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