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計測のトレサビリティ 文書(計量計測データバンク)


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計量計測データバンク ニュースの窓-206-計測のトレサビリティ 文書(計量計測データバンク)
計測トレーサビリティ物語-新 トレーサビリティのすすめ-(1) 計量計測データバンク編集部

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「日本計量新報」今週の話題と重要ニュース(速報版)2024年06月27日号「日本計量新報週報デジタル版」
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計測トレーサビリティ物語-新 トレーサビリティのすすめ-(1) 計量計測データバンク編集部
東亜計器製作所ガラス温度計のJCSS認定事業者に マイナス50℃からプラス350℃まで 精度を現す拡張不確かさ「信頼性の水準約95%」
JCSS登録・認定事業者検索 | 適合性認定 | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp)
登録区分

長さ
質量
時間・周波数及び回転速度
温度

角度
体積
速さ
流量・流速
振動加速度
電気(直流・低周波)
電気(高周波)及び電磁界
密度・屈折率

トルク
圧力
粘度
熱量 [標準物質]
熱伝導率
音響・超音波
濃度 [標準物質]
放射線・放射能・中性子
硬さ
衝撃値
湿度




├計測のトレサビリティ 文書

A、トレーサビリティとウィキペディアの解説

 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』はトレーサビリティをどのように説明しているか。

 トレーサビリティ(英: traceability)とは、食品の生産者、生産日、生産方法などの生産についての情報や、どのような経路で運ばれてきたかなどの流通についての情報を消費者自身が確認できる仕組み。QRコードなどで読み取る。

1、トレーサビリティ (計測器)
 計測機器の、標準器に対する精度を確認するための仕組み。

2、トレーサビリティ (流通)
 流通において生産者情報等を伝達するための仕組み。

a、もののさまざまな情報をコード体系を整えて、移動の時間、場所、それをトラッキングイベントごとに記録すること。その後そのデータを利用してトレースバックで原材料や生産情報を得たり、トレースフォアードとして出荷後、消費している人まで追う事ができる。

b、トレーサビリティ(英: traceability)とは、食品の生産者、生産日、生産方法などの生産についての情報や、どのような経路で運ばれてきたかなどの流通についての情報を消費者自身が確認できる仕組み。QRコードなどで読み取る。

B、ウッキペディアによるトレーサビリティ (計測器)

1、「トレーサビリティ (計測器)」

 計測機器の、標準器に対する精度を確認するための仕組み「トレーサビリティ (計測器)」として次のように述べる。

 トレーサビリティとは、「不確かさがすべて表記された切れ目のない比較の連鎖によって、決められた基準に結びつけられ得る測定結果または標準の値の性質。基準は通常、国家標準または、国際標準」と定義されている(JIS Z8103:2000計測用語より引用)。

 過去のJISでは、「標準器又は計測器がより高度の標準によって次々に校正され国家標準につながる経路の確立している度合」と定義されていたが、ISOとの整合性を取るために、上記のように変更された。

a、トレーサビリティチャート

 トレーサビリティチャートとは対象とする校正に用いた機器の校正経路を記載した書類である。単にトレーサビリティと表現した場合、この書類をさすことが多い。 しかし、このチャートは必ずしも計測器のトレーサビリティを保証するものではない。

 校正事業者の審査機関等(JCSS、A2LA等)より審査を受け、国際標準化機構および国際電気標準会議が定めた校正機関に関する基準 (ISO/IEC 17025) の要求事項に適合していることが確認され、校正事業者として登録された場合は、認定を受けた範囲内で審査機関等のロゴが入っている校正証明書を発行することができる。このロゴがトレーサビリティを保証しているため、トレーサビリティチャートの必要がない。

 そもそも、トレーサビリティチャートはISO 9000などの品質マネジメントシステムが普及したときに標準供給の方が追いつかず、審査機関等のロゴが入っている校正証明書を得ることが困難であったため暫定対応として行われた措置であり、JCSS等のシステムが整った現在では、トレーサビリティチャートを使ったトレーサビリティの保証は、ISO 9000などのマネジメントシステムにおいては一般的ではない。

2、「トレーサビリティ (流通)」
  流通において生産者情報等を伝達するための仕組み」について次のように述べる。

 トレーサビリティ(英: traceability)は、物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態をいう。日本語では追跡可能性(ついせきかのうせい)とも言われる。

a、概況

 20世紀末頃より、遺伝子組み換え作物の登場や、有機農産物の人気の高まり、食物アレルギーやBSE問題、偽装表示、産地偽装問題などの発生に伴って、食品の安全性や、消費者の選択権に対する関心が高まっており、特に食品分野でのトレーサビリティが注目されている。

 日本ではBSE問題から牛肉に、事故米穀問題からコメ・米加工品にトレーサビリティが義務化された。しかし、事故麦問題が起きている麦に対してはまだ義務化されていない。日本では消費者や量販店のメリットが注目を集めている。

 EUでは消費者のためではなく、ある商品が作られて消費者に渡る過程において、学校に行くべき児童が労働に従事していないかどうか、生態系を乱すような乱獲や乱伐を引き起こしていないかといった事を確認することがトレーサビリティの大きな目的として考えられている。日本においては、このようなEU型のトレーサビリティの目的はエシカルの概念が近い。

b、システム

 トレーサビリティとは、対象とする物品(とその部品や原材料)の流通履歴を確認できることである。

トレーサビリティには、トレースバックと、トレースフォワードがある。前者は物品の流通履歴の時系列にさかのぼって記録をたどる方向で、後者は時間経過に沿っていく方向である。

対象とする物品に対して関心を示した人間(代表例は消費者)が、その物品の履歴をさかのぼって、物品の生産履歴を見ることは、トレーサビリティ(トレースバック)によってもたらされる。対象とする物品に問題が発見された時、その物品が販売された特定顧客に対してピンポイントで商品の回収を行うことは、トレーサビリティ(トレースフォワード)によってもたらされる。トレーサビリティは、対象となる物品を、観測しうる物理量によって定量的に記述された記録によって構築される。物理量とは、時刻、重量、名称、物品に添付意された記号(バーコードなど)等々によって記述される。

物理量の計測結果が一定でなかったり、添付された記号などが故意・過失によって紛失等することは、物流におけるトレーサビリティの避けて通れない点である。したがって、トレーサビリティを構築する人間のモラルが、トレーサビリティの信頼の根源である。

c、観察可能な情報

 日本語で単に「トレーサビリティ」という場合には、一般に工業製品や食料品など、市場を流通する様々な商品に関連して、これら物品が遣り取りされ、最終的に販売されるところまでなどを指す傾向が強い。この場合では、農業や漁業といった食品産業における第一次産業や製造業など第二次産業から商業活動など第三次産業までにおけるトレーサビリティに限定されている。また、物理量の記述の蓄積がトレーサビリティの構築の必要要件であるため、無形財を対象としたトレーサビリティは不可能である。

 たとえば食品として流通する大根を考えた場合、この大根に関する観測可能な現象は、時間的な範囲では種子の選定から大根の成長、取り入れと出荷、消費もしくは廃棄されるまでであるが、対象範囲の空間は畑から消費した個人やごみ箱(さらには公的焼却炉など)までなる。厳密には、種苗企業やそれ以前の採種段階などの種の流通経路も含まれる。この情報に誰が関心を持つかによっても違ってくるが、情報を提供する手段や経路の選択も必要で、例えば農業協同組合などが統括している場合においては、生産者側であれば問い合わせにデータシートの形で提供することも可能であろうし、流通業者であればオンラインシステムで接続してデータベースの形で利用させ、末端の消費者であればインターネット上のウェブサイトなどより情報提供を行うことが想定できる。

d、リサイクル家電

 リサイクルの進展に伴い、家電製品や自動車などのリサイクル資源の処理についてもトレーサビリティが求められており、日本では消費者がリサイクル費用を負担する家電製品(2005年時点ではテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン)では、処理について確認することが可能となっている。

e、宅配便

 なお、宅配便等のサービスでは、発送元から到着先までが一対一であるため、追跡性が極めて高い。全ての貨物情報がオンライン処理されている現代にあっては、発送側や到着先が、荷物の受付伝票に記載された番号によって、今何処の集荷場を通過しているかを、インターネットの運送業者のウェブサイト上において、リアルタイムで確認する事が可能となっている。特にこれらは通信販売業者等が、商品発送の際に、顧客に伝票番号を通知・顧客側で荷物の到着過程を確認できるといった利用法にも用いられ、宅配便を使った円滑な商取引に活用されている。

f、ICタグ

 日本では、完全なトレーサビリティ実現の手段として、ICタグが経済産業省を中心とした官民合同で研究開発段階にある。また食品(特に牛肉・鶏卵等)は、農林水産省がトレーサビリティ普及に向けた活動を行っている。実際の普及までのハードルには、主にコスト面での課題に因る所が大きいが、ICタグを利用したトレーサビリティに関しては、社会的に浸透すれば一つ数円台にまで価格は低下すると見られている。

g、ロット管理との関係

 日本では、様々な下請工場を経て生産される工業製品の多くは、古くは管理番号と台帳・近年ではバーコードを印刷したシールを通箱に添付して要所要所でチェックする事で、ロット毎の品質管理を行う様式が発達している。これらは、様々な粗製品や半製品(仕掛品)の品質不良が判明した場合、いち早く該当する部品を使用した製品の所在を明らかにすることが可能で、日本製品の品質向上に大きく貢献しており、世界的にも同様の製造手法が導入されている。

 しかし、様々な部品が集約されて一つの製品となる工業製品とは逆に、末端に行くほど細分化されて流通する食料品の場合は、パック詰め状態にまで追跡すると、人的にも設備的にも膨大なコストを発生させる事から、なかなか進まない問題があった。一方では、年々高まる消費者の食品に対する関心により、生産者側から一方的に供給されるスタイルから、消費者が生産者によって購入するかどうかを選ぶスタイルも生まれて来た。特に海外からの輸入食料では、ポストハーベスト農薬等による、食の安全性という問題もあり、食品の流通にまで消費者が関心を寄せる傾向は1980年代より急速に高まっており、更に各種食品問題によってトレーサビリティの重要度は、多方面で認識され始めている。

g、BSE問題とトレーサビリティ

 アメリカでは2003年末に発生した乳牛のBSE(狂牛病)問題により、2005年現在でも日本を始めとする各国から牛肉の禁輸措置を受けているが(日本については2005年12月に条件付で禁輸解除→ウィキニュースされたものの、危険部位が除去されていなかったことが発覚し、再び輸入停止)、同国内のトレーサビリティが不完全であった事が、同問題を長引かせる要因として挙げられる。

 この問題では、異常プリオン汚染飼料を与えられた事が疑われる牛・80頭がカナダのアルバータ州からアメリカ内に入った後、28頭の行方までは189飼育施設の調査で判明したが、残り52頭は「調査不能」となっており、既に食肉として市場に出回ったり、肉骨粉として再利用された可能性も挙げられている。

 1990年代のイギリスBSE問題では、感染の可能性が疑われる牛425万頭が2000年に殺処分され、これら牛の飼育コストの補償や処分コストにより、莫大な損害を発生させているが、それでも酪農製品輸出の完全な禁止状態に比べれば、必ずしも不利益となり得ない背景がある訳だが、トレーサビリティが充実すれば、これらの損害を最小限に抑えられると考えられている。

 日本では、2004年12月から、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(牛肉トレーサビリティ法)の施行により、国産牛肉については、牛の出生からと畜場(食肉処理場)で処理されて、牛肉に加工され、小売店頭に並ぶ一連の履歴を10桁の個体識別番号で管理し、取引のデータを記録することになった。(→牛肉#日本における牛肉の履歴表示を参照)

h、EUの動向

(1)TraceFishプロジェクト

 BSEの経験より、畜産物だけではなく水産物の安全管理にもトレーサビリティの必要性を求めたEU政府は、「生活の質の向上と管理(Quality of life and management of living resources)」(project number QLK1-2000-00164)研究の一環として水産業の先進国であるノルウェーにTraceFishプロジェクトとして水産物トレーサビリティシステムの立案を委託した。

 TraceFishプロジェクトは2000年末から2002年末までの活動成果として水産トレーサビリティに必要な記録項目である「CWA14659漁業の追跡可能性 - 養殖魚流通チェーンに記録される情報の指定 CWA14660漁業の追跡可能性 - 捕獲された魚分布に記録される情報の指定[2]」が制定され、電子データの構造としてTraceFishXMLSchemaを策定した。TraceFishプロジェクトの成果はその後、EUのTraceプロジェクト(水産物を除く食品全般)とSEAFOODplus(水産物)に引継がれ、さらにこの2つのプロジェクトの成果を食品全般に対応可能なトレーサビリティに応用するTraceFoodプロジェクトの立ち上げが検討されている。

 TraceFoodではトレーサビリティシステムの電子取引情報の規格としてTraceCore XML、トレーサビリティ導入運用のためのガイドラインとしてGTP(Good Traceability Practice)がプロジェクト終了の2009年を目標に検討されており、ユニークな取引コード体系として欧州のEANコード体系とアメリカのUCCコード体系を統一したGS1(Global Standard One)の導入が推奨されている。

(2)法的規制

 法律面では「一般食品法への規則(EC)No178/2002」が制定され、2005年1月1日からの試行を経て2007年1月1日から、EU域内25カ国の全ての食品企業は、入荷から出荷までの製造過程の記録を残すこと、「One step Up、One step Down」が義務付けられている。

C、各種の辞書のトレーサビリティの説明

a、デジタル大辞泉 トレーサビリティー【traceability】

 「跡をたどることができることの意」
 農産物・食品・医薬品・工業製品などの商品やその原材料・部品などを個別に識別し、生産から加工・流通・販売・廃棄までの過程を明確に記録することによって、商品からさかのぼって履歴情報を確認できるようにすること。また、そのシステム。生産履歴管理システム。例えば牛肉トレーサビリティー法。

b、実用日本語表現辞典 トレーサビリティ(別表記トレーサービリティ、英語traceability)(2018年9月27日更新)

 トレーサビリティ(英: traceability)とは、商品の生産・流通過程が追跡可能であること、および、生産・流通の履歴を正確に記録・管理するシステムのこと。

 英語のtraceabilityは動詞のtrace(跡を辿る)に接尾辞-ability(可能である)が付いた形容詞である。日本語では「追跡可能性」という訳語が用いられる場合も少なくないが、単に追跡できるかどうかに留まらず、追跡のための履歴の記録や管理体制までを包括した表現として用いるためにも、英語をそのままカタカナ表記にした「トレーサビリティ」という言い方が用いられることが多い。

 「生産履歴」という生産・流通過程の記録を意味する用語もあるが、トレーサビリティはその記録を残す体制をどう構築するか、その記録をどれだけたどれるか、という概念である。

 トレーサビリティは、食の安全の観点から、特に食品流通の分野において重視されるようになった。例えば、2003年に、牛海綿状脳症(BSE)や偽装表示の問題を受けて牛トレーサビリティ法が制定・施行され、牛肉の生産加工・流通履歴の管理が義務化されている。各事業者が食品を取り扱った記録を作成・保存しておくことにより、食中毒などの健康被害が生じた際に、問題を含む食品がどこから来たのかを調べたり(遡及=トレースバック)、どこに行ったか(追跡=トレースフォワード)を調べたりすることができる。

 工業製品の生産・流通、家電製品等のリサイクル過程においても、トレーサビリティが求められるようになっている。

使用例
(1)「一つ一つ番号で管理される宅配便は、トレーサビリティが高い」。
(2)「完璧なトレーサビリティの構築には、関わる企業・個人のモラルが欠かせない」。

c、新語時事用語辞典 トレーサビリティ(英語:traceability)(2020年7月13日更新)

 トレーサビリティは「(食品の)移動を把握できること」を意味する英語由来の表現。「追跡可能(性)」と訳されることも多い。もっぱら、食品等の流通・品質管理の分野において、商品の生産過程や流通過程が流通・製造・原料の飼育や栽培に至るまで遡って追跡できること、および、そのためのシステムを指す意味で用いられる用語。

 トレーサビリティは、かつて食品の産地偽装や異物混入といった問題が多発し、社会問題化していた際に、その必要性が認識され、導入・整備が進んだ経緯がある。

 トレーサビリティ(のシステム)により追跡可能な一連の行程、および、その各段階における仕様を、方眼紙様の表にまとめた体系図が、トレーサビリティマトリクスと呼ばれる。

 トレーサビリティマトリクスは、商品の製造工程はもちろん、包装の材料やラベルの印刷工程、印刷用のインク等、あらゆる工程を記入対象とする。そのように厳密に把握・管理することにより、あらゆる段階で発生しうる問題の追跡や管理にも役立ち、仕様変更も行いやすくなる。

 食品トレーサビリティでは、原料の入手経路、農産品の栽培基準、農薬の使用基準と実際に使用した実績、種苗の入手経路や栽培土壌なども体系図に組み込まれ管理される。畜産物なら飼育基準や加工基準が、海産物なら漁獲地や、養殖に使われる薬剤が、トレーサビリティシステムマトリクスに含まれることになる。

d、精選版 日本国語大辞典 トレーサビリティ

  名詞。英語 traceability。
 trace(追跡)とability (できること)を組み合わせた語。

 食品がいつ、どこで作られ、どのような経路で食卓に上ったかという生産・流通履歴を明らかにする制度。食品の栽培や生産、加工や処理、輸送と販売などの各段階で正確な記録を残し、安全性について問題が生じた場合の原因究明や食品の回収を容易にする。また、品質・表示に対する消費者の信頼確保にも寄与する。

e、日本大百科全書(ニッポニカ) トレーサビリティ(traceability)

(1)一般の定義は、考慮の対象となっているものの履歴または所在を追跡できることであるが、食品では、生産、処理・加工、流通・販売等の食品供給行程(フードチェーン)の各段階における食品とともに食品に関する情報を追跡し、遡及(そきゅう)できること、と定義できる。具体的には、トレーサビリティシステムは、食品供給行程の各段階で、仕入先、販売先などの記録を取り、記録情報を保管し、識別番号等を用いて食品との結び付きを確保することによって、食品とその流通した経路および所在等を記録した情報の追跡と遡及を可能とする仕組みである。しかし、あくまで食品の追跡、遡及のための仕組みであり、製造工程での衛生管理を直接的に行うものではない。

 トレーサビリティシステムを導入することにより得られる利点は、以下の通りである。
(a)食品の安全性に関して予期せぬ問題が生じた際に、その原因究明や、問題食品の回収等を迅速・容易に行うことが可能となる。
(b)食品の安全性や品質等に関する消費者等への情報提供に資するとともに、表示内容の確認が容易になることを通じて表示の信頼を確保できる。
(c)生産者や食品事業者の行う製品管理、品質管理等の向上や効率化に資することができる。

(2)日本ではこのシステムは牛肉分野で初めて導入された。

 2001年(平成13)に、国内初の牛海綿状脳症(BSE)が発生し、それを契機に牛肉のトレーサビリティの確立が求められた。その後、食肉流通業者や食品スーパーでの食肉の表示違反が社会問題となり、食肉業界では消費者の食肉に対する信頼回復が緊急の課題となった。

 2002年には、国内で飼養されている牛に個体識別番号が記載された耳標(じひょう)の取付け作業が終わり、農林水産省による「牛個体識別台帳」が作成された。そして2002年10月からはインターネットによってその情報を閲覧できる体制が整えられた。2003年6月には「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(牛肉トレーサビリティ法)」(平成15年法律第72号)が成立し、関係政省令などが制定されて、2003年12月より同法が生産段階で施行され、2004年12月からは、と畜以降の牛肉流通段階でも施行された。

 国内で生まれたすべての牛と輸入牛に、10桁(けた)の個体識別番号が印字された耳標が装着され、この個体識別番号によって、その牛の性別や種別(黒毛(くろげ)和種など)に加え、出生から、肥育を経て、と畜・解体処理場までの資料が、データベースに記録される。その牛が牛肉となってからは、枝肉、部分肉、精肉と加工され流通していく過程で、その取引に関わる販売業者などにより、個体識別番号が表示され、仕入れの相手先などが帳簿に記録・保存される。これにより、牛肉については、牛の出生から消費者に供給されるまでの間の追跡・遡及、すなわち生産流通履歴情報の把握が可能となっている。消費者は、購入した牛肉に表示されている個体識別番号により、インターネットを通じて牛の生産履歴を調べることができるようになっている。

 2011年3月の東日本大震災の際に発生した福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質が大量に放出され、土壌や農産物等が広範囲に汚染された。2011年7月に、国産の稲藁(わら)を給与された肥育牛の肉から国の暫定規制値を超える放射性セシウムを検出、国産の牛肉が消費者から敬遠され、消費が減退する事態となった。その後、独立行政法人家畜改良センターや厚生労働省で、インターネット上で放射性物質検査状況等を調べられるシステムを運用させ、国産牛肉の安全性の強化を図った。

f、改訂新版 世界大百科事典 トレーサビリティ(traceability)

 さまざまな量の測定に用いられる計測器は、それぞれの量の単位の基準をもとにして目盛が定められていなければならない。そのために量ごとに単位の国家標準が定められており、さらにその値を一般の計測器に伝えるための精度の高い標準器が何段階か用意され,計測器の目盛定めや校正に用いられている。

 このように一般の計測器が精度的により高位にある標準器、あるいは計測器によって次々と校正され、単位の国家標準とつながる経路が確立されていることをトレーサビリティという。

 トレーサビリティが確立されていれば標準器、または計測器の表す値は国家標準を写しとったものとなり、精度、とくに正確さが保証されているとみなすことができる。

g、ASCII.jpデジタル用語辞典 トレーサビリティ

 主に品質マネージメントシステムにおいて使用される定義。ISO9000:2000においては「考慮の対象となっているものの履歴、適用又は所在を適用できること」と定義されており、具体的には「処理の履歴」「材料及び部品の源」などが挙げられている。

 トレーサビリティ自体は業界を問わないが、特に食品業界では、狂牛病や鳥インフルエンザなどの騒動もあって、安全性を徹底するため、生産者や生産地のほか、輸送の過程、加工の工程を明記するなど、安心かつ安全な商品の流通に努めている。
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報

h、世界大百科事典(旧版)内のトレーサビリティの言及 温度計と電気計測

(1)温度測定のトレーサビリティ(traceability)

 長さ、質量のような量のトレーサビリティを確保する際には、標準の量の2倍、3倍という考え方を援用することもできるが、温度については、この考え方だけでは処理できない面があり、高温にせよ低温にせよ、問題とする温度を現実に作り出したうえで、標準の温度計との比較を行って正確さを判定しなければならないのがふつうである。

 そこで温度の範囲をいくつかに区分し、それぞれについての標準温度計や比較校正用の装置が考案されている。

(2)電気計測のトレーサビリティ(traceability)

 通常、国家標準を基とし、校正を通じて現場の計測器までつながっていることが必要である。このことをトレーサビリティの確保という。

 測定データの処理

 測定結果の表示には最確値として平均値、偶然誤差として平均値の標準偏差の推定値をとる。

D、新しいトレーサビリティ制度がもたらすもの 計量研究所熱物性部長 小野晃

 本稿は一九九三年につくられた計量法トレーサビリティ制度の現状を説明するとともに、背景や同制度がはたす今後の役割等も考察している。本稿は計量研ニュースVOL.47 �10に掲載された。(編集部) 

はじめに

 新しいトレーサビリティ制度はヨーロッパで十数年前から普及し始めたが、EU域内の経済統合の進展とともに制度導入当初のねらいは変質してきた。一方平成五年に新計量法の成立によって導入された日本の新しいトレーサビリティ制度も日本の社会にさまざまな波及効果を及ぼしつつある。また計量標準に関する国際相互承認は、一世紀を超えるメートル条約の歴史の中で最大規模の事業となるであろう。これがもたらす世界的な影響は非常に大きい。
 ここでいう「新しいトレーサビリティ制度」とは二つの制度を含んでいる。一つは標準の供給制度であり、他は校正事業者の認定制度である。標準の供給は以前から国の仕事として行われてきたが、民間校正事業者の認定制度はごく最近の制度である。

 ところがその認定制度の導入が、古い標準供給制度にいろいろな変革を与えている。「新しいトレーサビリティ制度」としてここでは、新たに導入された校正事業者の認定制度だけでなく、それに伴って引きおこされた標準供給制度の変革もとりあげる。本稿では、新しいトレーサビリティ制度の現状を解説するにとどまらず、トレーサビリティ制度の背後に潜むもの、今後トレーサビリティ制度がもたらすと考えられるさまざまな事象に関して考察を試みる。

国家計量標準の信頼性と透明性

 従来、国家標準をつかさどる機関の活動は扱う精度が著しく高いため、一般からすると非日常的である。いちいち問わなくても国立標準機関はしっかり標準供給をやっているとの前提があったと思われる。ところが不確かさの厳密な評価は技術的に容易でない面があり、国立標準機関といえども十分に行えているとは言い難い面がある。

 一方経済がグローバル化し、部品、製品、サービスがあらゆる国から流れ込み、あらゆる国へ出ていく時代となると、世界には必ずしも国家計量標準に問題がない国ばかりでないことも見えてくる。まずEUの経済統合の過程で、参加国の間でそのような懸念が顕在化した。

 また先進国同士の間でもそのような通商の問題がなかったわけではない。特にアメリカは計量標準に関して独自の考えを持ち、以前から規制当局や産業界が他国企業に対してNISTトレーサブルな計測を要求することがしばしばあり、日本に限らずどの国も対米通商に関しては、国家標準の同等性について潜在的な問題をはらんでいた。

 新しいトレーサビリティ制度の第一のポイントは、これらの問題に包括的な解答を与えようとしていることである。国立標準機関といえども互いに標準が同等であることを、科学的・技術的な根拠をもって外部に示そうとしている。それが国立標準機関同士の国際比較であり、その結果の公表と相互承認である。同等性を示すということはすなわち、同等でないことを示すことをも意味している。そのために明確な手続きを規定して国家標準の国際比較が行われることになり、その結果にもとづいて各量とその範囲ごとに互いに同等な標準機関名を明示することになった。

トレーサビリティについて

トレーサビリティの定義:不確かさがすべて表記された、切れ目のない比較の連鎖を通じて、通常は国家計量標準又は国際計量標準である決められた標準に関連づけられ得る測定結果又は標準の値の性質。
<出所:JISZ9325(校正機関及び試験所の能力に関する一般要求事項)(ISO/IECガイド25)>

不確かさの定義:測定値が、一般的に見込みとともに、間違って見積もられる範囲を特徴づける目的で評価される結果。
<出所:国際計量基本用語集(VIM)>

図1 トレーサビリティのイメージ

国際トレーサビリティの合理化

 現在国家計量標準の国際相互承認協定締結に向けて議論の途上にある問題であるが、国家標準の同等性の表明に際して、すべての国立標準機関が自己の一次標準の国際トレーサビリティを明示する方向で調整が進んでいる。つまり自国の一次標準を定義にもとづいて自己で設定したのか、もしそうでなければどの国の標準機関で校正を受けたのかを明記することになると思われる。

 実際問題として標準を定義にもとづいて自己で設定している国は世界的に見ても多くない。量にもよるがおよそ十ヶ国、あるいはそれ以下というところである。ほとんどの国は自国の一次標準の校正を他国の標準機関で受けることにより、国際標準へのトレーサビリティを確保している。しかしながら現実の問題として国家標準の国際トレーサビリティ体系は非常に複雑かつ不透明である。ある国の国家標準がどの国にトレーサブルになっているかは、他国からは知る手段がない。国家標準に関して国家間で確固とした校正の契約ができているケースはまれであろう。そのときそのときの事情によりトレーサビリティを確保する先が一定しないことの方が多いかもしれない。

 もし現在議論されている方向で調整がなされるならば、相互承認を得ようとする国はすべて自国の国家標準のトレーサビリティ先を明示することになる。その結果世界のトレーサビリティ体系が関係者に明確に見えてきたとき、その影響は小さくないであろう。信頼性が高い校正を定常的に行っている国がどこかということが見えてくる。信頼性の高い校正が確実な契約のもとに受けられるような国際環境があることが分かれば、一次標準を自分で設定することのコストパフォーマンスを改めて見直す国も出てくるであろう。国際相互承認が進むに連れて標準の「安全保障論」は弱まり、国際トレーサビリティ体系の合理化が進むと考えられる。これが新しいトレーサビリティ制度がもたらす第二のポイントである。

 校正をする立場と、校正を受ける立場の両方から、各国の標準機関は合理的な政策決定を下せるような国際環境が遠からずできあがるであろう。

不確かさ評価における校正主体の責任

 新しいトレーサビリティ制度の第3のポイントは、校正の不確かさを、校正を行う主体が自己の責任で評価することとした点である。従来は、オーソライズされた「しかるべき手順」で校正を行えば、それだけで十分な信頼性が付与されると考えられてきた。しかしながら今日では、「しかるべき手順」で校正を行ったとしてもなお校正の不確かさは存在するし、信頼性は必ずしも十分でないとの考えが主流となっている。

 また「しかるべき手順」といっても世界の国々はさまざまで、それだけでは信頼感はほとんど得られないとの懸念もある。そこで計測あるいは校正に対して科学的に根拠のある不確かさの概念を導入してより確固とした信頼性を付与しようとしている。そのとき重要な点は、不確かさは誰か別の人が評価してくれるわけではなく、校正を行う主体が自らの責任で評価するという原則である。さらに第三者(認定機関)が不確かさ評価の妥当性を審査して信頼感の裏付けを与えようとしている。

 一般に校正は、その不確かさが小さければ小さいほど価値は高い。しかしながら新しいトレーサビリティ制度で重要とされていることはむしろ、校正の主体が不確かさを適切に評価しているかどうかである。認定機関の役割は校正事業者の不確かさの大小を審査するのではなく、校正事業者が表明した不確かさが技術的観点から妥当であるかどうかを審査することにある。国際相互承認はある意味では、それぞれの校正主体が宣言している校正の不確かさに対して信頼感を表明することであるともいえよう。

 このようにして校正を行うものは国立機関であれ民間事業者であれ、高価な設備と高度なスタッフで、小さな不確かさでもって高額の校正手数料を取ってもよいし、逆に安価な設備とそこそこの不確かさでもって廉価な手数料で効率的に校正事業を行ってもよい。いずれを取るかはその国や事業者の戦略と意志、市場ニーズによっている。

トレーサビリティ制度導入のねらい

 校正事業者の認定制度は10数年前からヨーロッパに普及し始めたが、この制度の原型はそれより以前にイギリスで考え出されたといわれている。その当時特にイギリスではEUの経済統合の動きは顕在化してなく、ドイツや日本の工業製品がその品質を誇っていた時期である。従ってイギリスの当初のねらいはむしろ自国の工業製品の品質向上にあったと考えられる。品質管理の高度化のためにISO9000シリーズ規格とともに新しいトレーサビリティ制度を導入し、民間の校正事業者を認定することによって計測の信頼性を全国的に向上させ、その結果イギリスの工業製品の品質向上を目指すという産業技術政策であったと思われる。

 その後EUの経済統合が進んで通商問題としての新たな側面が浮上し、最終的にドイツも同調するに至って新しいトレーサビリティ制度はEUの一貫した通商産業政策として完成度を高めてきた。このようにISO9000シリ-ズ規格や新しいトレーサビリティ制度の背景には通商問題だけでなく、当初は産業技術政策としての問題が潜んでいたと考えられる。この点が新しいトレーサビリティ制度の第4のポイントである。

図2 計量法における計量標準供給制度(トレーサビリティ)の一例
<長さ標準のトレーサビリティ>

新たな品質管理の手法

 国際貿易のグローバル化は最終製品だけでなく、部品やコンポーネントレベルで特に活発になっている。いままで日本では企業の系列関係が強く、部品、コンポーネントから最終製品の組み立てまで系列内で一貫して行うことが多かった。そのために部品やコンポーネントの品質管理手法をいち早く開発し、それが国際的な競争力の一つの源泉になったといわれている。しかしながら他方では系列の内部で個別的に発展した品質管理手法は、必ずしも汎用的、普遍的な形を取らなかった。

 一方経済のグローバル化は部品やコンポーネントレベルで広く起こっており、これらの品質確保こそがグローバルな通商での要件となった。この動きの結果、系列内にあった部品、コンポーネントの製造業者が独自性を強め、自らの責任で品質を管理し表明する必要に迫られている。ISO9000シリーズ規格はそのための品質管理システムであり、他方新しいトレーサビリティ制度はそのための計測管理のツールである。新しいトレーサビリティ制度では、そのような独自性を強めた企業が信頼性の高い計測を行うのを容易にしている。必要な精度の校正が必要なときにすばやく、認定校正事業者を通じて得られるような仕組みを提供している。この点が新しいトレーサビリティの第5のポイントである。

 国際同等性は外国から求められるものばかりではない。同等性はそもそも双方向・対等の性格をもっており、こちらが求められるものは、すなわちこちらが求めるものでもある。信頼性を保証された計測器を使うことが外国の顧客や規制当局から求められたとき、国際相互承認したトレーサビリティ制度のもとで認定事業者で受けた計測器の校正が効力を発揮する。同時に日本の企業や規制当局が、外国企業に対して日本のトレサービリティ制度(より広くは日本の基準認証制度)と同等であることを要求するのは当然である。これにより日本の製品の品質管理をより合理的に行うことができるようにもなろう。

科学技術データの信頼性

 これまで通商や産業技術に対して新しいトレーサビリティ制度がもたらすものを述べてきたが、科学技術データの信頼性の向上に対しても新しいトレーサビリティ制度は果実をもたらすと考えられる。この点が新しいトレーサビリティ制度の第6のポイントである。

 科学技術上の数値データは従来から国境を越えた普遍的なものと信じられてきた。計量標準に関していえば1875年にメートル条約が締結されて以来、世界的に統一の原則で動いてきたし、この100年間に計量標準の活動の重心は法定計量から科学計量へと大きく発展し、標準の精度は著しく向上した。現在でも計量標準の高精度化と広範囲化が進んでいる。従って原理的には科学技術データは世界のどの国で取得されても同等のはずである。

 しかしながら現実はそれほど楽観的なものではなく、1960年代におけるアメリカと旧ソ連の間での宇宙開発競争(そしておそらく軍事技術における競争)においてそれが問われることになった。アメリカは初期における宇宙開発の遅れを取り戻すべく理科教育の改革をはじめとした新しい政策を実施したが、米航空宇宙局(NASA)が国立標準局(NBS)と連携してとった手段は全米におけるトレーサビリティ制度の確立であった。宇宙機やロケットの部品・コンポーネントレベルでの品質のわずかな低下が、プロジェクト全体の成功を左右することが強く認識されたのである。得られた結論は、使用するすべての計測器の校正は、NBSの国家標準にしかるべき連鎖でつながっていなければならないというトレーサビリティの概念そのものであった。

 筆者は1980年代のはじめにアメリカの大学で熱物性計測の研究していた頃、研究者たちがしきりに温度計など計測器のNBSトレーサビリティを問題にしていた。計測器の校正精度が明らかでないと測定値の不確かさを評価する根拠が得られないからである。また1990年代から地球環境問題とからんで盛んになってきた宇宙からの地球観測においても、NASAは国立標準技術研究所(NIST,旧NBS)と連携して搭載観測機器の校正に熱心に取り組んでいる。

 一方旧ソ連でも宇宙開発と軍事技術の基礎データを自から取得する必要があったことは、アメリカと同じ状況であった。おびただしい量の熱物性データが旧ソ連の学術論文で発表され、またそれらを集大成た大部のデータブックも発刊された。

 今後日本あるいは世界で熱物性データに限らず科学技術データが収集・評価されるようになるとき、計測器のトレーサビリティはその信頼性に関する一つの重要なポイントとなるべきであろう。計測器の校正が認定校正事業者で確実に行われ、その不確かさが第三者によって確認されているということが科学技術データの信頼性を左右することになろう。一般に科学技術データに要求される精度は、通商で要求される精度よりも高いことが多いから、用いた計測器がどの国のトレーサビリティ制度のもとで校正されたかを明示することにより、データの信頼性を裏付ける有効な手段を提供することができる。国際相互承認の枠組みでは、校正事業者は計測器の校正証明書に、第三者によって認定された不確かさを95%の信頼度で明記することになっている。このことは科学技術データの信頼性向上に大きな役割を果たすであろう。

表 計量標準供給制度の実態

メートル条約加盟国の使命

 国家標準の同等性を表明する仕組みは、現在国際度量衡委員会と地域計量組織のもとで構築されつつある。まもなく枠組みが合意され、国際比較の第一陣の結果が出てくると思われる。その中では各量とその範囲ごとに互いに同等な国家標準が国名と機関名つきで発表される。それらの結果はデータベースに入れられ、インターネットを通して世界中のどこからでも容易にアクセスすることが可能になる。もし相互承認協定に名を連ねていなければ、国際社会から未だ同等とは見なされていないという厳しいものとなるし、名を連ねていれば国際社会から認められたものとなる。

 振り返ってみれば19世紀の後半にメートル条約が締結されてまず行われた事業は、各国間に存在した標準の不統一を解消し、世界共通の標準を設定することであった。メートル条約加盟国の努力は大きいものがあり、計測結果の整合性の確保が世界的なレベルで開始された。次に、1960年代からメートル条約のもとで行われたSI単位の普及事業は、基本量だけでなく日常的にさまざまな分野で使用される量について、単位の統一を図るものであった。国家間に存在する単位の不統一だけでなく、技術分野間に伝統的に存在する単位の不統一を解消しようという意図であった。SI単位の考えは現在世界的に広く受け入れられ、この事業は大きな成功をおさめたといえよう。

 現在国際度量衡委員会を中心としてメートル条約加盟国に課されている課題は、本稿の主題である新しいトレーサビリティ制度確立の事業である。メートル条約の歴史上第三の大きな事業となろうとしている。これは国立標準機関の間の相互承認の問題であると同時に、国立標準機関と標準ユーザとに関わる世界的な問題でもある。国立標準機関は従来のようにその非日常性と権威のゆえに他の世界から一定の距離を置き続けるのか、それとも国際トレーサビリティを世界のユーザに明確に示して、国家計量標準の実態を率直に提示するのか、岐路に立っている。標準の国際社会はすでに後者の方向に大きく踏み出しつつあると思うが、標準ユーザからより深い信頼感を得るために国際トレーサビリティの明示には一層の決断が必要であるように見える。日本も国益を考慮しつつ、メートル条約加盟国の一員として国際トレーサビリティ体系の明示と発展に向けて、しかるべき役割を果たしていかなければならない。

 国家計量標準は非日常的に高精度であり、ともすると社会の関心が薄い。これは日本だけの傾向ではなく、世界のどこの国でも多かれ少なかれ状況は同じであろう。そのような状況の中で各国の標準研究機関は独自性を出して、それぞれの存在を主張している。標準と社会との結びつきという面では、新しいトレーサビリティ制度はまさにその接点に位置する。これに正面から取り組むことにより、日本だけでなく世界的な規模で標準と産業・社会との結びつきが強められると考えている。メートル条約の今後の発展にも大きく関わるであろう。

おわりに

 本稿は計量標準と大多数の一般標準ユーザとの係わりという点に着目してトレーサビリティ制度を中心に述べた。一方トレーサビリティ制度がカバーしていないものとして、特殊な計測器の開発や特別に高精度の校正がある。これらは計量研究所から依頼試験制度や共同研究、技術指導という形で社会にサービスを行っている。これらもまた日本の科学技術と産業の競争力向上に対する重要な国家的支援であることを付記する。
(本面の図は通産省作成のものを使用した〔編集部〕)

E、計量計測分野における国際組織と国際比較の役割 3rd February, 2000.計量研 今井 秀孝

現状の認識

 西暦2000年を迎えるに際して、我々人間は自らが作り上げた情報化社会の大きな産物であるコンピューターに関連する問題で大いなる実験と心配をしたことになる。すなわち、人間からみればいたって単純とも思える課題をも含めて、コンピューター依存の機器やシステムにおいて安全・保全管理の面から試されたともいえるのではないか。結果的には、細かい問題を除けばおおむね良好な経過のようで、用意周到ともいえる準備体制の成果とみるべきであろう。しかし、今回の経験を何事もなかったとして忘れてしまうのではなく、この準備と実験の成果の蓄積を何らかの形で残すことを期待したい。

 我々の計量計測の世界でも、「何の問題もなく測ることができて当たり前」と思われているようであるが、そのような状況が得られるまでの多大な準備、確認と経験を大切にして、その過程の記録を実績として残し、正当に評価できるようにしたいものである。

 さて、昨年までの計量界では、メートル条約、法定計量、工業標準化などいろいろな分野で国際的な基準認証や相互承認に関連する課題がとり上げられて、多くの準備がなされた時代であったと考えられる。今年、2000年は数字の上だけでなく、世紀末、21世紀への助走の1年として、実践と実証を含めた仕上げが求められる大切な年と考えられる。

1.国際的連携の必要性 ・国際組織がなぜ必要か: Blevin Report(メートル条約)、 Birkeland Study(法定計量)
・GlobalとRegionalな位置づけ:中央集中と地域分散
・国際ルールの制定:Global MRA、ISO/IEC 規格・ガイド

2.国際組織の現状 ・メートル条約: CIPM/BIPM、量別諮問委員会、中央・ 地域の合同委員会(JCRB) 
・法定計量:OIML/CIML、TC・SC活動
・適合性評価:規格及びガイド作り;ISO/CASO、
 ISO/REMCOの活動

3.国際比較の役割と位置づけ ・国際比較による実証:Key comparisons 
・国際比較の結果の活用: Database 化

4.国内活動の国際整合化 ・国家標準の拡充と整備:知的基盤の整備、独立行政法人化 と連動
・認定認証関連の活動:JCSS、JNLA、JAB

5.今後の課題
・国際組織における日本の役割:先進対応と地域対応
・APEC傘下の計量活動:APMP、APLMF、APLAC、
 PASC、PAC

1.国際的連携の必要性(略)         

2.国際組織の現状

1)国際計量基本用語集(VIM)と不確かさ表現のガイド(GUM)の編集・発行:7機関
  ・国際度量衡局/国際度量衡委員会(BIPM/CIPM)
  ・国際法定計量機関(OIML)
  ・国際標準化機構(ISO):発行機関
  ・国際電気標準会議(IEC)
  ・国際純正応用化学連合(IUPAC)
  ・国際純粋応用物理学連合(IUPAP)
  ・国際臨床化学連合(IFCC)
  合同会議/JCGM:Joint Committee for Guides in Metrology、上記7機関で構成
          GUM(WG1)、VIM(WG2)の改定を検討中
   ・国際試験所認定会議(ILAC): JCGMに参入の予定

2)メートル条約の組織
   国際度量衡総会/CGPM: 加盟48ヶ国、準メンバー制を新たに導入(1999)
   国際度量衡委員会/CIPM: 18名の委員で構成
   国際度量衡局/BIPM: 研究機関と事務局機能(約70名)
   10諮問委員会/CCXX:長さ、時間・周波数、質量関連量、測温、電気磁気、 測光・放射、放射線、物質量、音響・超音波・振動、単位
   WG活動:力、圧力、密度、湿度、粘度、硬さ、流量
   JCRB:Joint Committee of the Regional Metrology Organizations and the BIPM
   RMO:APMP、EUROMET、COOMET、MENAMET、SADCMET、SIM 

3)OIMLの組織
   国際法定計量機関/OIML: 加盟57カ国
   国際法定計量委員会/CIML: 加盟国委員で構成
   国際法定計量事務局/BIML
   技術委員会・作業委員会/TC・SC
    国際勧告・技術文書の作成
    開発会議:途上国対応

4)ISOの組織
   総会:  加盟134カ国(正:90、通信:35、購読:9)
   理事会: 諮問委員会: CASCO(適合評価)、INFCO、COPOLCO、DEVCO
   技術管理委員会/TMB: 専門委員会/TC、REMCO(標準物質委員会)

3.国際比較の役割と位置づけ

1)従来の国際比較の意義
   最高精度の確認: 理論と実際の確認、学術的意義/チャンピオンデータ
   関係国間の実力評価: 技術能力の証明

2)現在の国際比較の意義と役割

 メートル条約におけるグローバルMRA(相互承認協定)と連携
・国家計量標準の同等性の確認[MRAの第一の目的]
・校正証明書発行の根拠: 信頼性評価を付与(不確かさ表記)[第二の目的]
・グローバルとリージョナルの連携
 CIPM Key comparisons, RMO Key comparisons, Supplementary comparisons
・計量標準機関の品質システム管理を重視: 管理システム評価、技術能力評価
・比較データ評価の定式化: RMO内評価→JCRBでの評価→CIPMでの評価 →国際データベースへの登録
・国際相互承認の根拠: 国際データベースの活用

3)種々の国際比較

 3-1 メートル条約
・CIPMによる基幹比較
・RMOによる基幹比較(APMP等)
・RMOによる補完比較(APMP等)
 MRAにおける付属書の記述内容
 A:グローバルMRAに参加する国家計量機関とそのロゴ、署名者の一覧
 B:CIPM基幹比較・PMO基幹比較・RMO補完比較の結果
  宣言した量の各値と不確かさ、基幹比較の参照値とその不確かさ
  参照値からの偏差とその偏差の不確かさ、参加機関相互の同等性
 C: 量、校正対象及びタイプ、校正の範囲及び単位、校正条件とその値、
  拡張不確かさ(95%)、参照標準器、トレーサビリティ、国際比較のリスト
 D:基幹比較のリスト
 E:RMOとJCRBに委託される事項

 3-2 OIMLによる国際比較
・型式試験の相互承認を目的:OIML計量証明書制度
 ・二国間比較における技術確認:日本/NRLM-オランダ/NMi(非自動はかり)、日本/NRLM-ドイツ/PTB(非自動はかり)、予定: 日本-イギリス、日本-韓国。

 3-3 試験所認定会議による国際比較
   APLACによる国際比較 

4.国内活動の役割と位置づけ(略)

5.今後の課題
  ・国際組織における日本の役割: 先進対応と地域対応
  ・APEC傘下の計量活動: APMP、APLMF、APLAC、PASC、PAC

1)国内組織の整備と充実
日本学術会議: 第5部標準研究連絡委員会
通商産業省:計量行政審議会基本政策部会、計量標準部会、計量士部会
計量研究所、物質研、電総研、製品評価技術センター
認定機関:JCSS(校正機関)、JNLA・JAB(試験所認定)
工業技術院:国際計量研究連絡委員会、知的基盤整備特別委員会

・国内外の組織体系:標準供給/トレーサビリティ:JCSS 現場の計量器→事業所内標準室→計量検定所・検査所・認定事業者→国家標準→国際標準
・計量法、工業標準化法、OIML国際勧告 品質システム要求:管理文書(管理マニュアル)、技術基準(技術文書)。校正証明書、試験成績書。

2)国際組織での活動 
メートル条約:CGPM、CIPM、CCXXでの応分の役割/MRAの実施
OIML関連条約:型式承認試験結果の相互承認
ISO・IEC:適合性評価の実践/試験所認定、製品認定、技量の認定
ISO/CASCO(適合評価委員会)
ISO/REMCO(標準物質委員会)

3)APEC傘下/アジア太平洋地域での計量活動
APMP(メートル条約関連):議長国/事務局:NRLM
CIPMの諮問委員会との連携:TC
執行委員会活動、JCRB(合同委員会)での活動
APMP基幹比較及び補完比較の実施
   技術基準の策定と技術審査、
APLMF(法定計量関連)
   執行委員会での活動
APLAC(試験所認定関連)
   技能試験への支援、技術審査への参画
PASC(工業標準化関連):議長国
PAC(品質システム認定関連)  

共通の概念/ことばと意味

・知的基盤とは
 科学技術に関連する知的資産が組織化され、研究開発活動、経済活動の円滑化・促進のために広く経済社会に体系的に提供されるもの。
・知的資産
 科学データ,計測方法(試験評価)、計量標準・標準物質
・適合性評価:各種の試験や検査により製品や方法、サービスが所定の要求を満たしているかを評価するシステム
 Keywords:検査、試験、校正、品質システム、品質保証、トレーサビリティ、不確かさ、国際比較、技能試験、適合性評価、相互承認、環境監査、校正証明書参考文献

1)国際情勢
・今井秀孝:計量標準の分野における国際的動向-相互承認への関心の高まり-、計量研ニュース、Vol.47, No.6(1999), 1/2.
・計量分野の国際関連図(前出)
・今井秀孝:計量計測分野における国際相互承認制度の最近の動向、第18回国際計量計測展:Interneasure'98特別講演会(1998年4月)
2)計量研究所紹介
 ・今井秀孝:計量研究所の現状と将来展望:工業技術、Vol.40,No.8(1999), 5/8.
 ・計量研究所の概要:要点メモ(後出)
3)知的基盤整備関連
 ・産業技術審議会・日本工業標準調査会合同会議、知的基盤整備特別委員会中間報告、 1999年12月.
4)国際会議等
 ・今井秀孝:第21回国際度量衡総会とグローバルMRAへの署名:計量研ニュース、Vol.48, No.1(2000), 1/3.
 ・瀬田勝男:第15回APMP総会及び関連会議出席報告:計量研ニュース、Vol.48, No.1(2000), 5/7.
 ・APMPの紹介: パンフレット
5)計量単位 
 ・今井秀孝:計量単位の現状-SI単位への完全切替え-、標準化と品質管理, Vol.52,No.10(1999), 4/9.
・国際単位系(SI)第7版日本語版、計量研究所訳・監修、日本規格協会(1999).
6)不確かさ評価
 ・今井秀孝編集:計測の信頼性評価-トレーサビリティと不確かさ解析-、日本規格協会、1996年1月発行.
 ・飯塚幸三監修、今井秀孝編集:ISO国際文書「計測における不確かさの表現のガイド」統一される信頼性表現の国際ルール、日本規格協会、1996年11月発行.
 ・今井秀孝:計測における不確かさ表現の歴史的経緯と展望、計測と制御、Vol.37, No.5(1999), 300/305.
・今井秀孝:「誤差・精度」から「不確かさ」へ:信頼性表現の統一に向けて、精密工学会誌、Vol.65,No.7(1999), 937/940.

ISO/IEC 規格及びGuide類(主なもの)
[参考資料]
ISO/CASCO(適合評価委員会)の活動: 認定・認証関連
ISO/REMCO(標準物質委員会)の活動: 標準物質の認証と技術基準の作成
品質マネジメント(品質システム管理)
ISO 9000-1 (JIS Z 9900) 品質管理及び品質保証の規格-選択及び仕様の指針-
  9001  (JIS Z 9901) 品質システム-設計、開発、製造、据付け及び付帯サービスにおける品質保証モデル
  9002 (JIS Z 9902) 品質システム-製造、据付け及び付帯サービスにおける品質保証モデル 
  9003 (JIS Z 9903) 品質システム-最終検査・試験における品質保証モデル
  9004-1 (JIS Z 9904) 品質管理及び品質システムの要素-指針
  10006 (JIS Q 10006)品質マネジメント-プロジェクトマネジメントにおける品質の指針

環境マネジメント(環境監査)
ISO 14001 (JIS Q 14001) 環境マネジメントシステム-仕様及び利用の手引き   
  14004 (JIS Q 14004) 環境マネジメントシステム-原則、システム及び支援技法の一般指針
  14010 (JIS Q 14010) 環境監査の指針-一般原則

校正機関・試験所の認定
ISO/IEC Guide 22: 供給者による適合宣言
ISO/IEC Guide 25 (JIS Z 9325) 校正機関及び試験所の能力に関する一般要求事項
     Guide 58(JIS Z 9358) 校正機関及び試験所の認定システム-運営及び承認に関する一般要求事項
     Guide 43-1(JIS Z 9343-1) 試験所間比較による技能試験 第1部:技能試験スキームの開発及び運営
Guide 43-2(JIS Z 9343-2) 試験所間比較による技能試験 第2部:試験所認定による技能試験スキームの選定及び利用

審査登録機関及び製品認証機関の認定
ISO/IEC Guide 61 (JIS Z 9361)認証機関及び審査登録機関の認定審査ならびに認定機関に対する一般要求事項
     Guide 62(JIS Z 9362) 品質システム審査登録機関に対する一般要求事項
     Guide 65(JIS Z 9365) 製品認証機関に対する一般要求事項
     Guide 67:相互承認の方法

標準物質
ISO Guide 30 (JIS Q 0030) 標準物質に関連して用いられる用語及び定義
  Guide 31 (JIS Q 0031) 標準物質の認証書の内容  
  Guide 32 (JIS Q 0032) 化学分析における校正及び認証標準物質の使い方  
  Guide 33 (JIS Q 0033) 認証標準物質の使い方  
  Guide 34 (JIS Q 0034) 標準物質の生産のための品質システム指針  
  Guide 35 (JIS Q 0035) 標準物質の認証-一般的及び統計的原則  

計量研究所の研究・業務内容と最近の活動
2000年1月現在.
平成11年度定員:204名(研究131、行政73:技術行政を含む) 予算:約38億円。4研究部(量子、熱物性、力学、計測システム)、大阪計測システムセンター、総務部、研究企画官、首席研究官(2)、国際計量研究協力官、統括標準研究調査官、計量標準管理官、産学官連携推進センター

1、計量標準の確立に関する研究:国内標準整備と国際整合化

 国際的に整合性のとれた国家計量標準を設定し(メートル条約)、それを維持・供給することにより国内のトレーサビリティ体系(JCSS)を確保する。さらに、次世代を目標に入れた新しい計量標準を開発する先導的研究を行う。

SI基本単位の実現:長さ(m)、質量(kg)、温度(K)、時間(s)、物質量(mol)
 SI組立単位及び工業量:力(N)、圧力(Pa)、体積、流量・流速、密度、粘度、
[SI:国際単位系] 湿度、角度、速度、加速度、振動、硬さ、衝撃値、幾何形状、材料物性値(光学的、力学的、熱的)、物性標準物質、標準データの取得、データーベース(データーセット)

2、計測技術の開発と試験方法の研究[科学・技術の基盤]

 共通基盤的あるいは国として先導的に取り組むべき高度計測技術・試験技術の開発
・縦割り的技術:量子力学、光エレクトロニクス、機械計測、流体計測、材料計測、超音波計測、電磁気計測、・・・
・横断的技術:計測数理工学(統計数理)、品質工学、情報工学、画像工学
・極限計測技術:超高温、極低温、超高圧、高真空、微小光学、マイクロ(ナノ)マシン技術、ナノメトロロジー

[例]磁気浮上方式の質量標準、アボガドロ数の決定、原子泉方式時間標準

3、計量法に基づく検定検査業務 [日常生活に密着]
・基準器検査:質量計、温度計、圧力計、体積計、密度計、濃度計、・・・
・型式承認試験:ガスメーター、水道メーター、タクシーメーター、・・・
・国際相互承認:OIML(国際法定計量機関)証明書制度、国際勧告への対応
・都道府県の計量検定所との連携: 工場、商店等の計量器の信頼性確保
4、国際的な活動(Global and Regional )[国家代表性]
・メートル条約:国際度量衡総会(1999年10月)、国際度量衡委員会・同諮問委員会
・OIML関連条約(国際法定計量機関)国際法定計量委員会
・ISO(国際標準化機構):適合評価委員会(CASCO)、標準物質委員会(REMCO)
・ILAC(試験所認定協議会)
・APEC(アジア太平洋経済協力会議)傘下の計量関連活動
  APMP(メートル条約関連) :1999年11月より議長国
  APLMF(法定計量)、APLAC(試験所認定)、PASC(工業標準化)、PAC(品質システム)
5、当面の課題
・国際比較(基幹比較)に基づく国家間の相互承認(MRA)
・国内計量標準の整備と拡充(JCSS/トレーサビリティ)
・アジア太平洋地域のリーダーとしての役割分担

計量計測分野の最近の動向

・計量法の改正と施行(1993年)
  JCSS(Japan Calibration Service System)の創設
  長さ、温度、質量の国家標準の設定と供給開始
  その後、力、圧力、振動加速度を追加  (1997年)
  湿度、流量・流速、硬さを追加 (1998年)

・APEC関連会議(1995年 大阪宣言)
  2005年(主要国2000年)までの相互承認計画
  メートル条約(APMP)、法定計量(APLMF)、試験所認定(APLAC)、工業標準化(PASC)、品質システム(PAC)の5分野
・科学技術基本計画(1996年)
  計量標準・標準物質の整備、人材確保、支援体制整備
  知的基盤整備特別委員会の設置・報告書作成(1998年)
  計量標準センターの開所(1998年)
  国際計量標準センター(2000年:予定)
  標準物質センター(2001年:予定)
・JIS法の改正(1997年)
  JISに基づく試験所認定制度の発足/JNLA
  評定委員会の活動、審査員研修制度
  APLACによる認定(JNLA、JAB:1998年)
・日本学術会議第5部の提言(1997年)
  計量標準研究の重視、国家的支援体制の確立
  IMEKO世界大会の日本開催(1999年6月、大阪)

・アジア太平洋地区国際会議の日本での開催(1997年)
  APMP/1996年)、APLMF/1997年、APLAC/1997年
   メートル条約     法定計量       試験所認定 

・メートル条約に関する計量標準研究所長会議(1997年、1998年)
  国家計量標準の同等性の相互承認、校正証明書の相互承認を目指す
  基幹国際比較の実施/結果の信頼性評価:国際トレーサビリティの重視

・第21回国際度量衡総会とグローバルMRAへの署名(1999年)
  地域計量組織(APMP等)と国際度量衡局の役割分担/JCRBの設置 
  第21回CGPMにてMRAの署名(1999年10月)
  APMPの議長国就任(1999年11月、NML→NRLM)

F、トレーサビリティの土壌 学術会議提言の実現に向けて
-多賀谷宏(コンサルタント)-(日本計量新報98年1月18日号)

●山 高きが故に貴からず
 お正月のカレンダーや年賀状には富士山をあしらったものが多い。わが国最高峰というだけではなく、明快で美しい単一の頂きをもつ山容が広く周辺各地から眺望できることで多くの人を魅了し、それがまた海外からも高く評価される由縁であろう。単純明快ということはそれ自体が人類共通に響く美しさを持つようである。

 私は日本産業技術振興協会(技振協)時代に何度か、米英仏独等から大使館付き科学アタッシェ等を招いて国際シンポジウムを開催したことがある。それらの運営を通じて強い感銘を受けたのは、米国の国家公務員だけが事務局が用意した講演謝金を絶対に受取らなかった事である。欧州や中国の官僚制度の影響を根深く残す日本と、多民族国家としての度重なる洗礼を受け独自の行政機構を造り上げたアメリカとの、もっとも大きな文化の違いが、こんな所にも端的に顕れているように感じている。

 経済力や軍事力をチラつかせて何かというと「制裁」を振り回すなど、米国の鼻持ちならぬ面はたしかに少なくないが、政治形態の差を越えて国家公務員がこうした他国に見られない厳しい自己規制をかけている点は、日本も率直に見習うべき一つではないだろうか。

 環境・産業・金融・情報・貿易どれをとっても今や地球全体がある意味で一つの多民族社会を構成しつつある中で国境を越えた説得力と倫理観を持たなければならない時代になっており、昨年末の「温暖化防止京都会議」でも発展途上国に対する欧州とアメリカの譲歩を通じて世界に強い印象を与えた。

 今後、多国籍化ないし業際的な対応と理解を強く求められる計量界も明快な国際理解を目指すべきで、行動指針やターゲットもしくはライバルをどこに視るかは、日本との産業構造・人口比・GDP構成内容などを熟慮し、かつ基本的な目的(国家標準設定の充実)と補間的な手段(指定・認証等の制度整備)との重みを見誤ることなく資源配分を心掛ければ自ずと見えてくるだろう。

 ちかごろ私の見聞きするところ度量衡畑、電気計測畑を問わず、実態に詳しい標準研究~管理技術者の間では、昨今の欧州の標準関連行政機関の動向やトレーサビリティへの道筋づくりに疑念を持つ人が多いようである。欧州が抱える問題には様々な事情もあるようだが複雑曖昧さは多民族間の共通理解を得難い。歴史的精神文化の高さのみでは現代の広い産業技術の裾野のレベル維持や向上・変革への共通理解には直接繋がらないという事なのだろうか。

●ある日の桜井健二郎さん
 ところで長いトレーサビリティとの付合いを通じて私にとって忘れ得ぬ人は数多くおられるが、その中でも故桜井健二郎博士は先ず最初に挙げておかなければならない人であろう。

 十年あまり前になるが、ある日の昼休みのこと、遅い昼食を共にした同僚達と新橋の第二十森ビルにあった事務所へ戻る途中、後から呼びとめられて振返ると、そこに人なつこい顔があった。なんと電子技術総合研究所(電総研)電波電子部長を辞められて光産業関連の研究組合のヘッドになられた桜井健二郎さんだった。事務所がお近くに設立されたとは承知していたが思いがけない再会だった。

 こんなことがその後も数回あったが、当時私の仕事は新エネルギー関連や通産省の技術政策がらみの調査が主体になっていたり、かつて桜井さんにお世話になった計測やトレーサビリティ関連からは暫し遠ざかっていたこと、そして何よりこの時の先生は時代の最先端技術オプトエレクトロニクス研究所のリーダーだったので、とてもご挨拶に伺う気もないまま過ごしていた。ところがその空白を全く感じさせない笑顔に出喰わし私はすっかり恐縮してしまった。往年カミソリのような鋭敏な風貌を強く印象づけられていたので、この時の暖かく柔和なお顔をみて新たな懐かしさがこみあげてきた感じでもあった。

 しかし後で聞いて判ったのだが、このころ先生は寄り合い所帯のとりまとめと新研究所の方向付けにたいへんなご苦労をなさっていたようである。あたら天下の鬼才をこのような雑務で夭折させてしまった官僚機構の制度疲労を思ったものである。せめてもの救いは没後この分野で優れた研究成果を挙げた若手研究者に贈られる賞に桜井健二郎の名が冠せられるようになったことであろう。

洞察力と先見性の人
 話はぐっと遡るが一九六三年前後、氏は直近の在米研究時代にNBS(現NIST)やNCSLで目のあたりにした、企業が自己責任で国家標準への接続性を確保するという、まったく新しい計測標準の信頼性維持システムの考え方、つまり米国でのトレーサビリティ関連情報を日本に最初に紹介した人である。

 洞察力とすぐれた先見性の持主だった氏はまた生産現場で測定する人が自分の責任において信頼性を確保し、最終的にはなんらかの形で国家標準への接続性を保つという、まったく新しい計測標準信頼性維持への捉え方つまりトレーサビリティの概念が将来、日本にとっても重要な役割をもつことを早くから見抜かれた方でもある。帰国後、氏は産業界や行政をはじめ各方面に説かれると共に、計量研究所(計量研)の高田誠二第一部長や電総研の石毛竜之介標準計測部長にその具体的行動計画立案を示唆されたのである。

衝撃的な情報に触発

 この頃私は計量研の企画部門にいたが、計量研の担当範囲内でもすでに力計(確か航空 機の負荷バランス測定用のストレンゲージ式のものだったと思うが)の検査成績書交付時に、納入先が駐留米軍関係 だった申請者から、「米国NBSに相当する日本の国家標準との接続性が存ることを明記」してほしいとの当時としては異色の要求があったことを鮮明に憶えている。

 この時代、私はメートル条約(国際度量衡委員会)がらみで、国内連絡調整機関としての機能を持つ日本学術会議第5部国際度量衡研究連絡委員会(度量衡研連)への計量研窓口でもあったが、当時よく使われた産官学という言葉の中の「産」の意向の吸上げ機能がこの委員会には欠けているのが常々気になっていた。

 桜井さんからもたらされた衝撃的な情報に触発されて早速、高田・石毛両部長をはじめ、その頃駐米日本大使館での第二代科学アタッシェを務め上げて帰国したばかりの東京工業試験所石坂誠一次長、それに前記度量衡研連の「時間」標準問題で面識をいただいていた郵政省電波研究所の佐分利義和部長など多数の方々のご支援を得て、産官学構成による「国際標準研究連絡会議」の設立計画を立案し工業技術院に予算措置を求めることにした。

 研究予算以外での新規要求は無理かとも思ったが、淡泊で諦めの早い私にしては珍しく根気よくアタックしたので、当時工業技術院研究業務課で計量研担当だった柘植方雄氏(現地熱技術開発0x01F1社長)にはこのとき随分と御迷惑をかけてしまった。しかし氏のご尽力のお陰で予算も確保されスタートできるに至ったし、この会議設立時の人脈が後年、技振協で日本版NCSLを目指した産業計測標準委員会の設立、さらにその枠で行なったトレーサビリティ体系調査事業(昭和四十九年度)の「体系調査委員会」の編成時にも大いに役立つことになった。

●その後の学術会議から

 ひるがえって昨一九九七年の計量界のトップの話題を挙げるとするなら、私としては前出の日本学術会議「第5部」報告として「標準の研究体制強化についての提言」(平成九年六月二〇日)が打ち出されたことを挙げたい。理由はその中に標準研究の在り方、方向付け、成果の活用、供給体制の整備、省庁の縦割り排除による標準関係施策の一貫性確保と一元化の必要性等々、大筋として実に我が意を得た内容が盛り込まれていたからであるが、それだけでなく提言の最高責任者‥第5部長として、学界からではなく内外の産業界を熟知される内田盛也=ウチダもりや先生(工博・0x01F1帝人顧問)の名をそこに見い出したことで一層嬉しくなったからである。

 実は私がトレーサビリティ関連業務を一時離れた技振協時代の後期、ちょうど先進諸国間の技術開発政策の対比や日・欧・米の特許制度比較問題などの委託調査に専念していた頃であるが、この分野の先達でいらした先生には何度もご指導とお力添えを頂いたことがあり、今も尊敬感謝申上げている方でもあったから、その名を思いがけずもこの標準研究体制の改革検討という場で再発見できたという喜びと共に、人の出会いと縁の妙をあらためて感じたからでもある。

 流麗と評すべき内田ぶし?は不思議に接する者を元気付ける力をもっており、名伯楽を迎えて一九九八年が日本のトレーサビリティの屋台骨を支え、成長への肥沃な土壌をも提供することになるであろうこの提言の実現に向け、確実な一歩を進める年になることを切望してやまない。

(コンサルタント)

【NBS・国立標準局、のちのNIST・国立標準技術研究所。NCSL・全米標準管理ラボ連絡会議。文中の役職名はいずれも当時】

G、計量トレーサビリティとは 独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター

 測定・試験データを国際的に相互比較し、受入れられるようにするために、データが一定の基準からどのくらいの位置にあるのかを統一的に特定して行こうとする考え方です。

「計量トレーサビリティ」の意味

「計量トレーサビリティ」は、ISO/IEC Guide 99:2007 [ 国際計量計測用語-基本及び一般概念並びに関連用語(VIM) ]において、次のように定義されています。

“個々の校正が測定不確かさに寄与する、文書化された切れ目のない校正の連鎖を通じて、測定結果を計量参照に関連付けることができる測定結果の性質。”

これらは、具体的には

「切れ目のない校正の連鎖」
「測定の不確かさ」
「文書化(=校正記録や校正証明書)」
「能力(校正技術)」
「国際単位系(SI)への参照」
「適切な周期での再校正」

という、6つの構成要素で実現されることになります(ISO/IEC Guide 99:2007 2.41注記7参照)。

 このように、昨今、現場における測定結果が、切れ目のない比較(校正)の連鎖を通じてより上位の標準へと遡る(トレース)過程の能力を文書化して表明することが重要視されるようになってきています。

 これら6つの要素はISO/IEC 17025で認定された(=上位標準から切れ目なく校正を受けた、きちんとした管理体制と技術能力のあることが認められている)校正機関で校正を受けることによって最も確実かつ合理的に実現されます。ISO/IEC 17025で認定された認定校正機関の発行する認定シンボル付きの校正証明書は、それ自身でこのことを証明できるという非常に便利な手段です。

なぜ「計量トレーサビリティ」が必要になってきたのでしょうか?

わかりやすいたとえ話:ザンジバール島の時計

 従来は、国内のそれぞれ関係する企業グループの中や国内だけで統一的な計測管理ができていれば、一貫した品質の部品が供給され、そのグループ内の製品の品質が保証できるという仕組みになっていました。

 昨今、産業や取引のグローバル化に伴い、海外も含めたいろいろな出所の部品を購入して製品を製造する場合、基準がまちまちでは製品の品質が安定しないため、基準をどこかに決めて統一的に管理する必要が出てきました。

東西冷戦時代に、アメリカはロシアに先んじて宇宙開発するため、違う出所の部品を一定の品質で効率よく調達する必要がありました。この時に導入されたのが、この「計量トレーサビリティ」の考え方でした。
この動きは、近年、各国間同士のデータのやり取りや国際貿易においても、技術的インフラとして重要となってきています。

「計量トレーサビリティ」を説明する資料はないの?

 認定センターではQMS審査登録機関等向けに、トレーサビリティの利用に関する説明会を実施しています。説明資料はこちらです。

「計量トレーサビリティ」の情報を得るには?

 日本を含め世界の国立標準研究所はどんな状況か・・・・BIPMの基幹比較データベース別ウィンドウで開きます

 JCSSで確保されるトレーサビリティ体系は・・・ JCSSで確保されるトレーサビリティ体系

 JCSSの登録・認定事業者についての情報は・・・JCSS事業者一覧

 標準物質供給機関についての情報は・・・RMinfo (国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターホームページ)別ウィンドウで開きます

 認定センターは、JCSSを始めとする校正機関のISO/IEC 17025認定を通じて、「計量トレーサビリティ」確保をサポートしています。

お問い合わせ
独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター
TEL:03-3481-1946  FAX:03-3481-1937
住所:〒151-0066 東京都渋谷区西原2-49-10

H、計測のトレーサビリティについ 京都府中小企業技術センター 中丹支援室 TEL:0773-43-4340 FAX:0773-43-4341 E-mail:chutan@mtc.pref.kyoto.lg.j

■まず、正しく測定するために重要なこと

 各種測定において、正確さを保つためには、「測定器の正確さ」と「測定方法の適正さ」を確保することが重要になってきます。

●測定器の正確さの確保

 目的に合ったもの、信頼性のあるものを用いること
定期的な点検、校正を行うことが必要

●測定方法の適正さの確保

 規制・基準等で定められている公定法等に基づき、測定を実施。

 この「測定器の正確さ」の確保において、測定器の校正は重要なものであり、そのために国において、計量法に基づき、計量の標準となる特定標準器や特定標準物質が国家計量標準として定められています。

 そして、上位の標準(「ものさし」や「はかり」)との比較の連鎖によって、最終的に国家計量標準につながることで、その信頼性を担保しています。

■計測のトレーサビリティとは

〈定義〉

 「不確かさがすべて評価された切れ目のない比較の連鎖によって、決められた基準に結び付けられ得る測定結果又は標準の値の性質、基準は通常、国家標準又は国際標準である。」と、VIM(国際計量基本用語集)で規定されています。

 これは、現場で利用される測定器は、より正確な(不確かさがより小さい)標準器によって校正され、さらに、その標準器は、外部の登録校正事業者が保有するより正確な標準器によって校正されるというように、校正の連鎖により正確な標準器を求めていき、最終的には国家計量標準にたどりつくことです。不確かさがすべて評価された切れ目のない比較の連鎖によって、決められた基準に結びつけられる測定結果又は標準の値の性質がトレーサビリティとなります。

■JCSS制度について

 JCSS(Japan Calibration Service System)制度は、計量法に基づく計量法トレーサビリティ制度の略称であり、計量標準供給制度と校正事業者登録制度から構成されています。

◉計量標準供給制度

 国家計量標準(一次標準:特定標準器等又は特定標準物質)は、計量法に従い、経済産業大臣により指定され、独立行政法人産業技術総合研究所、日本電気計器検定所又は経済産業大臣が指定した指定校正機関によって、指定された特定標準器等又は特定標準物質を用いて、登録事業者に対し計量標準の供給(校正等)が行われています。

 さまざまな測定器を製造、保守点検する上で、基準となる計量標準は欠かせません。しかし、国家計量標準は日本で唯一であり、測定器の製造者や保守点検の実施者が、直接、国家計量標準を使用することはできません。そのため、それらの事業者が利用できる、国家計量標準に繋がるトレーサビリティが確保された2次標準、3次標準の供給(校正)がなされているのです。

◉校正事業者登録制度

 測定器の校正又は標準物質の値付けを行う者(校正事業者)は、国家計量標準と測定器を繋ぐ信頼性の確保に努めることが必要であり、校正技術と設備を有することが審査で認められた事業者のみ(ISO/IEC17025の要求事項を満たしている者)が国に登録され、校正
証明書の発行など校正業務を行っています。

 校正事業者登録制度は、国に代わり、独立行政法人製品評価技術基盤機構によって、審査・登録が行われています。

■計測のトレーサビリティの実現

 計測のトレーサビリティは、

①切れ目のない比較の連鎖 ②測定の不確かさ
③文書化(校正記録や校正証明書) ④能力
⑤国際単位系(SI)への参照 ⑥再校正(校正間隔)

という、6つの構成要素で実現されることになります。

 これら6つの要素は、計測器の上位の標準から切れ目なく校正をうけた、整った管理体制と技術能力をもつことをみとめられた校正機関(JCSS登録事業者)で校正を受けることによって、最も確実かつ合理的に実現することができます。

 つまり、測定に使用する測定器のJCSS標章付の校正証明書は、国家計量標準への計測のトレーサビリティの証となります。

計測のトレサビリティの体系図(例:長さ)

参考文献
経済産業省 計測標準ポータルサイトHP 
http://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/k-portal-index.html
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 HP
http://www.iajapan.nite.go.jp/iajapan/index.html
独立行政法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター HP
https://www.nmij.jp/

I、計量計測トレーサビリティとは-JEITA講座
「計量計測トレーサビリティ概論」横河電機株式会社品質保証本部計測標準部 霞芳

本編-計量計測トレーサビリティとは-

 計量計測トレーサビリティは、測定結果の同一性を確実にするためのものであり、経済・製造・医療等の社会活動を維持するための基盤のひとつである。
計量計測トレーサビリティとは、測定の結果が不確かさが評価された校正の切れ目のない連鎖により、決められた基準へ関連づけることができることである。

 現在の日本においては、食品のトレーサビリティは広く知られているが、計量計測トレーサビリティはなじみが薄い。本講義では、計量計測トレーサビリティの必要性とその仕組みについて詳細に述べるとともに、両者の違いについても明らかにしたい。

講義により、みなさんが計量計測に興味をもち、今後の生活や実験等で測定にこだわるようになっていただけたら幸いです。

計量計測トレーサビリティとは・・・実験
状況
̶ ある骨董品店に伝説の角棒が持ち込まれました。市場価格は1cm、一万円です。長さを測定して持ち込まれた角棒の価格を決めてください。
測定条件
̶ 3人の方に協力してもらいます。
̶ ものさしA,B,Cの一つを使用して角棒の長さを測定してくだ
さい。
̶ 測定は、cm単位で、小数点第二位まで求めてください。
例:13.45cmと測定する

実験結果
測定結果・・・
買うとき、売るとき・・・
こんな話って・・・
京間
955x1910
中京間
910x1820
江戸間
880x1760
団地間
850x1

単位:mm

測定の重要性
「はかる」ことは経済活動の基本
右図は、米屋に嫁いだ嫁が舅から大きな買い桝で買って、ちいさな売り桝で売ると言われ、あまりのひどさに、「こんな家に居られない」と暇乞いをすると、さすがの舅も行いを改めた。

「はかる」重要性と、ものの善悪を教えた版画
です。

日常生活における測定
電気料金 ペットボトルの内容量
肉のおもさ

まとめ-計量計測トレーサビリティ-

 計量計測トレーサビリティは、測定結果の同一性を確実にするためのものであり、経済・製造・医療等の社会活動を維持するための基盤のひとつである。

 計量計測トレーサビリティとは、測定の結果が不確かさが評価された校正の切れ目のない連鎖により、決められた基準へ関連づけることができることである。

̶ 基準は通常、国家標準・国際標準である。
̶ 校正とは階層間の比較のことであり、上層の測定器の示す測定値との差を確定することにより測定値のずれ(量)を把握することである。

● 校正結果は測定値(最良測定値)と不確かさによりあらわされる。
● 信頼のある測定のためには周期的な校正が不可欠

国際的な計量計測トレーサビリティ確立のためには国際相互承認が必要
̶ 国際相互承認の枠組みの中で、測定結果の同一性が認められ円滑な社会活動を実現できる。


計量計測データバンク ニュースの窓-164-計量計測トレーサビリティデータベースとその辞書



日本の新聞社、メディア、情報機関など web検索(計量計測データバンク)
日本のテレビ局 web検索(計量計測データバンク)


計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測データバンク編集部)

計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)(計量計測データバンク編集部)

計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)-2-(計量計測データバンク編集部)

計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)-3-(計量計測データバンク編集部)


計量計測トレーサビリティデータベースとその辞書
計量計測トレーサビリティのデータベース
(計量計測データバンク編集部)
計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)
(計量計測データバンク編集部)

計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)-2-
(計量計測データバンク編集部)
計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)-3-
(計量計測データバンク編集部)
計測のトレーサビリティと「あるドイツの小話」

約5分でわかる「計量トレーサビリティ」 ザンジバル島の時刻

日本計量新報 社説(96年10月6日号~97年8月31日号 (keiryou-keisoku.co.jp)
■ トレーサビリティに関するドイツの小話にみる教訓(97年3月2日)
 計量法は経済と文化活動を支える社会基盤として存在意義をもっており、計量の基準を定めることと適正な計量の実施の確保という二つの目的を実現する法体系となっている。

 適正な計量の実施の前提は計量の基準が定められていることであるが、計量の標準が社会の必要な所に過不足なく供給される体制があること、適正な計量器が供給されていることがあわせてなくてはならない。

 計量の標準に係る「計量標準の認証制度」は、一般に「計量法トレーサビリティ制度」と呼ばれている。

 産業界を中心に社会に計量標準を供給する公認の校正サービス事業者は「Jcss 認定事業者」と呼ばれ、日を追うごとに認定者数が増えている。

 計量法トレーサビリティ制度は産業計測標準の需要の増加に民間の計測標準技術、校正技術を保有する者の能力を活用して対応しようとするもので、国が認定する「Jcss 認定事業者」には民間の計測標準機器の製造事業者、校正サービス事業者等が申請をし、所定の要件を満たしていることが確認され認定を受けている。日本の計測標準の供給体制は国が管理する一次標準である国家標準とトレーサブルな関係がオーソライズされた「Jcss 認定事業者」を、産業界等一般への計測標準供給の中核とする社会システムとしてつくりあげられた。

 この社会システムは計量法の定めに従ったものであるものの「Jcss 認定事業者」の業務は校正サービスの業であり、収益を確保できるビジネスとして成立することが実質上の前提になっている。認定事業者の採算性、ビジネスとして成立するものなのかは標準分野ごとに異なるようではあるものの、計量・計測関係事業者の認定を受けることの意欲は小さくないだけに、制度を運営する関係当事者の細心の注意と配慮が求められる。事業者の認定がこのところ停滞していることから、この社会システムの創造的構築および認定事業者の認定促進に向けて行政を中心に推進のための機運を高める必要があるようだ。

 ともあれ認定事業者の数の増大、標準分野の拡大が大きな課題となっているので、主として工業別に事業者認定のための研究会活動等が活発化することに期待したい。。

 日本のトレーサビリティについては、概略以上のことを心得ていなければならないが、以下では日本にトレーサビリティの考えが醸成された一九七〇年頃のトレーサビリティの普及・啓発活動のなかで紹介された教訓的な逸話の一つ「ドイツの小話」を引用し、これを一考することで、トレーサビリティを理解する一助としたい。


あるドイツの小話
 農家の老婆がパン屋の主人に訴えられて、役人の取り調べを受けた。

 訴えによると、老婆が一キログラムと称して毎日パン屋に届けるバターの目方は、実に八五〇グラムほどしかないのだそうである。

 そこで役人がたずねてみると、老婆は立派な天びんを使ってバターの目方をはかっているのだが、困ったことに、孫が分銅をおもちゃにして見失ってしまった。

 「けれども」と老婆は自信を持って答えた。

 「私はパン屋で黒パン一キログラムを買い、それを天びんの片方のさらにのせ、それと釣り合うだけのバターをもうひとつのさらにのせて、パン屋に届けております。自分の方が違っているはずはございません」と。

 目方をごまかしたのは、実はパン屋のほうだったのである。

     (一九七三年計量研究所第六回学術講演会     「国際単位系しくみと実際」からの引用)


ドイツの小話の解説「コンパティブルだがトレーサビリィ不足だった質量測定の一例」
 バター一キログラム(一〇〇〇円)=パン1キログラム(一〇〇〇円)という等価式のもと、バター八五グラム(八五〇円)=パン八五〇グラム(八五〇円)という交換が行なわれていたので、農家の老婆とパン屋の主人の間には損得関係は発生しない。

 この等価式に鶏肉一キログラム(鶏肉屋)とジャム1キログラム(ジャム屋)が加わって、鶏肉屋がバター八五〇グラム=鶏肉一〇〇〇グラム=パン八五〇グラム=ジャム一〇〇〇グラム、の取引が行なわれ一巡したとする。取引はお金の物との交換だから、それぞれの手元に残るお金は一〇〇〇円であり、手にした実際価値は農家の老婆一〇〇〇円、鶏肉屋八五〇円、パン屋の主人一〇〇〇円、ジャム屋八五〇円となる。農家の老婆とパン屋間だけの取引の間は損得の不都合は発生しないが、これが社会に連関するとその行為は不当を持つことになる。

 定められた基準と比較することが計量であるから、比較器である老婆の天びんがいくら立派でも、誤った「基準」と比較していたのではその比較が正しくても、その比較は社会的にはつじつまが合わない。

 登場人物のうち悪いことをしてやろうという意識を持っていたのはパン屋の主人だが、正当な行為と思って行なった農家の老婆の行為は結果としてパン屋の主人の行なったことと変わりない。老婆の「一キログラム」が一キログラムであるためには、社会の一キログラムでなければならないが、この一キログラムを決めるのは国の仕事になる。国と国の間にも一キログラムの間で整合が取れていなくてはならない。老婆とパン屋の主人の間では質量の比較に関しては、確かにつじつまが合っていた(コンパティブルであった)わけだが、ここに幾人かが加わってくるとそれは社会的関係に変じ、途端にコンティブルではなくなる。社会的につじつまの合うコンパティブルな内容の計量を行なおうとすると、国が定めた計量の標準との整合性を確保しなければならないが、このことをトレーサビリティと考えたら分かりやすいだろう。


計量法の計量についての定義とJISのトレーサビリティの定義
 「物象状態の量を計ること」を計量法では計量と定義している。物象の状態の量をはかることは、その量の定められた基準と比較し、比較値を数値で表すことによって実現する。比較値の最後に単位記号を付けることによって、その比較値が長さ、質量、時間、電流、温度、物質量、光度等を表する。計ることに関する用語には「計測」「計量」「測定」などがあり、この用語はJISの計測用語で意味を規定しているが、この規定は必ずしも社会一般のその言葉に対する認識と符合しないので紹介は差し控える。

 「トレーサビリティ」という用語は計量の仕事に従事する人々の間では普及しているが、その理解内容ということになると必ずしも共通の認識にはなっているとはいえない。JISの計測用語はトレーサビリティを「標準器又は計測器が、より高位の標準によって次々と校正、国家標準につながる経路が確立されていること」と規定している。この規定に間違いはないが、社会システムとしてのトレーサビリティを確立しようとする計量計測関係者の意気込みを反映するということでは十分でない。一九七〇年代のトレーサビリティの普及運動では、上位の標準の経路の明確化は当然として、同位の標準の横のつながりのつじつま、つまりコンパティブルな関係の確認に対しての意識が大きく働いていた。そこには上位の標準が尊くかつ偉くて、下位の標準は卑しいという意識はなく、標準のそれぞれに必要な働き場があり、その意味で労働に貴賤がないのと同じに、標準にも貴賤はないという哲学が働いていた。

 産業計測標準の本来の姿は必要な標準が権力や神秘性の衣をまとうことなく、必要な場所にいつでも置かれ、それが頻繁に手軽に使われ、かつ手軽に頻繁に上位の標準と比較(校正)できることである。生産現場には権力や神秘性など無用で、必要なのはツールとしての実用性である。


■ 国家的課題としてのトレサの確定(96年10月27日)
 計量記念日を数日後に控え、全国各地で記念日行事が旺盛に行われているがそのピークはやはり十一月一日記念日当日の普及・啓発行事であり、国民には新聞、テレビ、ラジオなどマスコミを通じて計量が大きくアピールされる。

 国民は計量制度をメートル法(あるいは国際単位系SI)の実現による産業振興と国民の消費生活の安全を実現する適正計量の実現のためなくてはならない社会制度として理解しており、このため国と自治体が大きな働きをしていることも計量協会や計量関係行政機関などのPR活動を通じて知っている。

 望ましい計量制度の実現とこれに連動する計量観念(科学的思考方法の確立といってもよい)の確立のため、計量協会を中心とした関係者が努力と情熱を注いだ背景には、先進諸国に追いつかなければならない事情のほか、先達の科学思想に裏打ちされた揺るぎない信念があったものと思われる。

今日の日本として計量制度のどの分野が整備・強化されなければならないか。その答えは新計量法の制定意図の中にある。

 その第一は計量単位の国際的な整合性を図るために、取引または証明に使用することが認められる法定計量単位を原則として今世紀中に国際単位系(SI)に統一することである。第二は工業生産技術の向上を踏まえて、計量器の製造、修理、販売事業の登録制を届出制にするとともに、計量器の検定について、一定の水準の製造・品質管理能力のある製造事業者の製品については検定を免除する制度を導入する等計量制度の一層の合理化をはかる。第三は先端技術分野を中心とした高精度の計量に対応するため、計量標準を国が定め、計量器の精度をそれとのつながりで対外的に証明する制度を創設する。

 以上の三点であるがこれを簡単にいうと①SI化、②規制緩和と指定製造事業者制度の創設、③計量標準のトレーサビリティ制度の創設、となる。

 このほかの課題と考えられる事項は、①国内の計量諸制度と国際的計量諸制度との融合化、②消費者利益にかかわる計量諸制度の整備と実際に消費者利益の確保するための施策の実行などである。

 産業の新興、経済の発展、文化の向上に直接に大きく作用する、計量標準のトレーサビリティ制度の充実・拡大は、これを軌道にのせる大事な時期にあり、この推進のため行政機関をはじめ標準関係のメーカーなど全ての関係者の協力が必要である。

 十月二十八日には「全国計量大会」が開かれるが、日本のトレーサビリティ運動の草創期の一九七〇年代には「トレーサビリティ大会」が開かれていたのでこの二つを対比して考えることは無益でない。当時のトレーサビリティ運動は一つの結論としてトレーサビリティがオーソライズされたシステムになることを要望していたが、新計量法によってこれが実現している。 現在の計量法トレーサビリティ制度は通産省が認定する中間トレーサビリティ機関としての「認定事業者」が核になっているが、現在の認定事業者の標準の種類と数は望まれる規模からするとまだ緒についたところといえるものである。産業界からトレーサビリティの要望に細かに対応できるネットワークの構築こそ計量関係の最重要課題といってよい。

 一九七〇年代の第一次トレーサビリティ運動の経験に学ぶとトレーサビリティ制度の整備・拡充のために欠かせない視点として民間の自発的な活力の活用がある。計量法トレーサビリティが産業現場が標準を求めての強い動きを基としているのではなく、どちらかといえば従来の標準供給的な仕組みになっていることは第一次トレーサビリティ運動の経験者の立場からは官製という感想がでてくるようだが、制度として建ち上げるうえでの苦心の結果を前向きに最大限に利用するしかない。

 今後は民間の積極的な参加と協力を促すためにもトレーサビリティ制度を整備・拡充のための総合計画がもっと広く知られることが必要である。

 トレーサビリティの整備・拡充のための産業界を含めた大プロジェクトができるのが望ましいし、この事業推進のためにかつて開かれていた「トレーサビリティ大会」を開く必要もでてこよう。また品質保証に関する国際規格ISO九〇〇〇シリーズや環境システムのISO一四〇〇〇推進などにみる産業界挙げてのフォーラムの経験に学ぶ意義は大きい。


■ 指定製造事業者制度がもたらすもの(96年10月13日)
 新計量法の下で新たに設けられた制度である指定製造事業者に指定される事業者が日を追って増えている。指定製造事業者制度は特定計量器の製造事業者が計量法の規定に基づく品質管理を実施することにより、役所等第三者機関が行う「検定証印」と同じ効果をもつ「基準適合証印」を特定計量器に付して供給できる制度である。指定の権限は国(通産大臣)にあり、これまで検定を実施してきた地方庁の事情等を考慮して制度の稼働開始期限を特定計量器ごとに定めているが、遠からず電気、ガス、水道メーター等の各特定計量器でのほとんどのメーカーが指定製造事業者の指定を受けるだろうから、特定計量器をめぐる検定の図式は完全に書き換えられる。

 指定製造事業者の指定を受けるメリットは幾つか挙げられるが、そのうち最大のものは検定手数料の「節約」であるといわれている。またメリットが発生する条件は一定程度の量産にあるともいわれる。

 このことと関連しては、特定計量器の「検定」業務が大幅に縮小する自治体は業務の大幅な見直しを迫られている。

 一方で一品生産的な特定計量器の検定という仕事はそのまま残ることになるので、この対策をどうするかは実際には重要な課題になる。質量計を含めて一品生産的要素の強い特定計量器の検定のために社会がシステムを確保して置くことは実際は大変なコストを要することである。こうした特定計量器を製造する企業のうち小さな所は社員一人である。社員数名としても職人気質の人々は一般的な品質管理に関する理屈や関係書類を作ることなど苦手でできないことである。

 自治体が一品生産的な特定計量器の検定体制を確保できないようであれば、このような業界内弱者の品質管理の代行、支援のような行為に制度的な保証を与えて、小なりといえども天下晴れて指定製造事業者であるとなりえることは出来ないだろうか。

 本来は小人数の特定計量器製造事業者の奮闘を強く促すべきであろうが、行政が支援することがなければうまく行かないだろう。

 計量関係者は新計量法の本格的稼働で計量関係の図式が大幅に変わっていることを忘れて仕事をするわけにはいかない。




日本計量新報 社説(02年1月~4月) (keiryou-keisoku.co.jp)
■社説・陳腐な言葉の羅列の長い話は聞きたくない(02年2月17日号2434号)
 会議のおり、代表者や来賓の挨拶が行われる。挨拶する人のなかにはその場の主役がだれであるか忘れていることが多い。会長など代表者の挨拶も来賓の挨拶も儀式その場に付随した儀式の一つになっている。この儀式は主役である一般の会員・聴衆のために用意されているものと理解すべきである。挨拶の様子をみていると主客が逆転している場面に遭遇するので驚く。

 長い挨拶、つまらない挨拶が多くなっている。平和なものだ。だれも聞いていない話を平気でする人は老化の激しい人に多い。権力に似たものの上に胡座(あぐら)をかいているような心理状況にある人の話しもつまらない。

 文章にすればなるほどと思える内容でも、実際には陳腐で面白くない挨拶をする人もいる。聞き慣れすぎた言葉をただ並べるだけの挨拶は面白くないのである。自分が何をしたいか、自分が何を考えているのかを本気で話すことのない人の挨拶はつまならい。また出来もしない夢物語にもならないことを繰り返し話されても困る。このような話はだれも聞いていない。実際につまらない話がつづくと、私語が始まり、会場がざわつくことがある。以前そのようなときにブーイングが起きた。するとある紳士が「武士の情けだと思って黙って聞け」と言い捨てた。武士の情けをかけてもらった人は業界団体の現職でいる。「武士の情け」をかけてやっても、その情けを知らないのだから情けない。情けをかけた紳士は面目を失った。

 ある団体の代表者に就任した人の挨拶はお世辞にも上手なものではなかった。しかし、下書きした文章を一生懸命に読んでいる純情がよかった。就任後一年もすれば、場慣れして聞く人を飽きさせない話をすることになるであろう。

 計量研究所所長に就任した直後の、ある人の挨拶がひどすぎたものだから、聴衆の一人が「これはだめだ」と呆れ声をだした。しかし、その人はその後、話の名手に見事に変身した。科学者、技術者が広い知識をもとに練って繰り出す言葉は聞きごたえがある。陳腐な概念や言葉の集積のような話をしないのがよい。広い知識のなかから滲み出る良質の言葉を用いるから、短い時間であっても聴衆を魅了する。概して常識を備えた科学者や技術者の話は面白い。

 話をすることは自分を出すことである。自分以上でも、自分以下でも駄目だ。駄目な自分なら駄目さ加減を見せればいい。それでもいいといって周囲は代表に選んでいるのだから、自信を持って話をすればいいのである。それで駄目だと烙印をおされたら代表を辞めればいい。それはその組織に、次にはもっといい人を代表に選ぶ訓練をさせているのだ。

 力み返った政治家の口調の話は聞きたくない。陳腐な言葉を羅列した、長い話も聞きたくない。いい話のあとの会議や宴会は気持ちいいものになる。挨拶をする人はそのことをよく考えなくてはならない。挨拶は短いほどいい。

日本計量新報 社説(02年1月~4月) (keiryou-keisoku.co.jp)

日本計量新報 社説(02年9月~12月) (keiryou-keisoku.co.jp)
■社説・計量のトレーサビリティと校正ビジネス(02年11月10日号)
 計量器には製造・出荷後に性能が劣化しないものと、時間の経過につれて大きく変動するものとがある。金属製の直尺などのうち精密な計測に用いられないものは、買ったら壊れるまで気兼ねなしに使うことができる。器差がかなりの程度で変動する計量器の場合は、器差の変動状態を定期的に確認したり、所定の器差に調整する必要のあるものもある。

 計量器の性能の変動をもとの状態に戻したり、変動の状態を確認する作業を校正といい、このための作業がビジネスとして成立している。計量士によるはかりの定期検査は法定の検査の一つではあるが、仕事の性質を技術的視点でみると校正作業にからむこれも校正ビジネスになる。

 計量器は精密さの度合いは様々でも、所定の性能がありその状態をある範囲で維持していることが求められる。精密さの度合いの上位のものは標準器としての性質をもち、ここから以下につづく計量器の精密さが実質的に規定され、定められていくことになる。したがって精密さの度合いの上位の計測器あるいは計測標準器の校正作業は大事である。

 国あるいは国際的な計測量の標準器と各使用段階の計測器の精密さの度合いのつながりの整合を計測のトレーサビリティという。トレーサビリティが確立していない計測は、世界と連動せず、そこでの計測結果は世界が認めることはないあくまでも私的なものになってしまう。計測のトレーサビリティは品質保証の国際規格であるISO9000シリーズでは絶対的な要求事項であり、これを満足しない限り、その計測は認証されない。

 日本の計量の国家標準は国際標準とある約束ごとのもとに整合をとって繋がっている。こうした日本の計量標準との繋がりを公的に証明する制度が計量法の規定にしたがって制度化されている「計量法トレーサビリティ制度」であり、JCSS制度とも呼ばれている。

 現在のJCSS制度の不完全性は、産業界その他が求める計測標準を必ずしも満足するほどにカバーしていないということであり、同制度にしたがった校正料金が需要者側の満足する度合いより高いということである。JCSS制度利用の校正料金が高い理由の一つは、認定を受けようとすると実際には機器と設備の投資が求められ、さらに認定を受けるまでに多くの人件費を要することである。こうして認定を受けても校正需要が投資を賄うのには及ばないという事情がある。実質的に同様・同程度の計量標準器の校正が、それまで計量行政機関が実施していた基準器検査の手数料の何倍にもなるという事実が、JSCC制度への校正依頼を少なくする要因となり、この校正ビジネスを難しいものにしている。

 JCSS制度は、この認定を受けるために努力し認定後関連のビジネスで売り上げを伸ばしている企業と、設備費用その他の事情から認定を受けないまま従来あった校正需要が断ち切られている企業との間に格差を生じている。企業努力の結果といえば聞こえはいいが、そう簡単に言い切れないのが日本の計量標準供給の実情である。

 計測の結果は国際的な整合を保持しなくてはならないが、そのためには計量標準と計量器の精密さが国内標準にある手続きのもとに整合性がとれていなくてはならない。産業界への計測標準の供給はJCSS制度にもとづくもの、同制度が整備されていない分野での製造企業その他の技術的手続きを踏んだもの、その他がある。計量法の基準器検査制度にもとづく検査は計量の公的機関、製造事業所、計量士などに限定されたため、このルートからの産業界への計測標準の供給は標準器の技術的な内容を備えているとしても、法的な意味では根拠を持たない。

 日本の産業計測標準とその供給、正しくは計測標準のトレーサビリティの在り方は広い視点にたって存分に議論され、検討されたうえで方策が定められるべきであろう。そして計量トレーサビリティに関するビジネスは重要な計量ビジネスの一つである。

森と林と高原のホテル 甲斐鐵太郎



























計量法解説 (keiryou-keisoku.co.jp)

:計量法の読み方 - livedoor Blog(ブログ)

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微分も積分も忘れてしまう東大理三卒の大学教授(2023-05-09)【理3のリアル@50代】 東大医学部卒の弁

フィルムカメラとデジタルカメラの発展の速度の違い

「ハッピーエンド」を聴く。メンバーは大瀧詠一,細野雅臣、鈴木茂、松本隆。


シンボル操作(symbol manipulation)
社会学用語。それ自体は客観的であったり、また多義的に理解されているような物や言語や行動様式をシンボル (象徴) として使い、特定の意味内容をこめて多くの人々のそれへの同調ないし反動形成を促し、一定の方向に行動させること。シンボル操作の典型的な技術の一つが、人々の態度・行為・価値観をあらかじめ意図された方向へ誘導するための組織的コミュニケーション活動といわれる政治宣伝である。マス・メディアの驚異的な発達と宣伝技術の高度化により、現代社会ではシンボル操作の余地は拡大した。


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