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ある計測技術者外伝 後日譚(1) 矢野耕也
A Certain Measurement Engineer: Sequel (1) by Koya Yano

測量つながりというわけではないが、矢野宏は素人劇団運営に熱を上げていた時代に舞台美術を担当してもらったことが縁で、日本地図の作製で有名な伊能忠敬の子孫である洋画家の伊能洋氏と友人関係にあった。伊能氏のアトリエは都下世田谷区にあるが、東急田園都市線が開通する 10 年以上も前、渋谷駅から二子多摩川園を結んでいた玉電と呼ばれていたチンチン電車で連れて行ってもらった記憶があり、天井が高くいかにも画家のアトリエという印象が強く残っている。

ある計測技術者外伝 後日譚(1) 矢野耕也


(計量計測データバンク編集部)

ある計測技術者外伝 後日譚(1) 矢野耕也

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(タイトル)

ある計測技術者外伝 後日譚(1) 矢野耕也

(本文)

計ると測る


祖父と乳児時代

 計測に関わった研究者、技術者は数多おられるので、本記事で綴られる内容はレベル的に個人のブログで書くようなものとお叱りを受けることを承知の上で、昭和戦前の激動期に生まれ、戦後の高度成長期の製造業の一端を、行政側から計測面で
担った矢野宏(令和 5 年 1 月没)の一技術者としての足跡を残していくが、計測や計量から逸脱する点が多くなることをどうかご容赦願いたい。

 昭和 6 年 5 月に東京府牛込区で生を受けるが、実父は教師で、母方の祖父は測量技術者だった。測量技術者といっても実際は日本陸軍の軍属で、シベリアにも出兵して奥地まで測量をしに行ったと伝えられているし、本家には警察に届け済みの本人が所持していた当時の軍刀が残されている。軍属とは軍隊に所属するが兵士ではなく、事務的業務、技術関係、兵站などを受け持つ対象者を指す。

 計量も測量も対象を物理的に測定することには違いがないが、測量は地表の緯度経度、距離、面積、高度などの測定が中心で、工学的に物理量を幅広く対象としている計測とは少し異なるかも知れない。また計量は経済産業省管轄下の計量法に従うが、測量は昭和 24 年法律第百八十八号で定められる測量法に準じ、管轄も国土交通省であるところからして非なるものである。

 なおシベリア出兵とは、1918(大正 7)年から1922(大正 10)年にかけ、第一次世界大戦の連合国がロシア革命に対する干渉派兵を行ったものであるが、軍属であった祖父は前述のように遠くバイカル湖あたりまで測量に行ったと聞いている。バイカル湖といえばイルクーツクの方であり、日本から見たらかなりの奥地であることから、測量以外の任務で行ったのではないかという話であったが、確かめる術はない。

 測量つながりというわけではないが、矢野宏は素人劇団運営に熱を上げていた時代に舞台美術を担当してもらったことが縁で、日本地図の作製で有名な伊能忠敬の子孫である洋画家の伊能洋氏と友人関係にあった。伊能氏のアトリエは都下世田谷区にあるが、東急田園都市線が開通する 10 年以上も前、渋谷駅から二子多摩川園を結んでいた玉電と呼ばれていたチンチン電車で連れて行ってもらった記憶があり、天井が高くいかにも画家のアトリエという印象が強く残っている。

 なお伊能忠敬については専門家による研究会が設置されており、矢野宏は計ることにつなげて測ることをテーマとして講演を行ったことがあった。ここで測量に絡めて、品質工学の創始者である田口玄一博士の若き日の師である増山元三郎博士(1912~2005 年)も取り上げていた。増山博士は日本の数理統計学の泰斗の一人であるが、物理学専攻から中央気象台へ進み、同時に医学部で物療内科に所属をして幅広い活動を行った方であり、医学に強いことからサリドマイド裁判で活躍もしていた。戦時中に軍部への協力を強要されたが、平和を愛する氏は人の命を救うのであればということで陸軍医学校で国産ペニシリン開発チームの一員となり、その関係で昭和 20 年の秋に原子爆弾の被害調査で GHQ 関係者とともに被爆地入りをし、爆心地の位置や炸裂の高さの推定なども含め、人的被害の調査をかなり正確に「測って」いた。もちろんその後 GHQ により調査報告は没収されたが、公表禁止が出る前の 1949 年の朝日新聞社発行の「推計学の話」にその部分がこっそりと掲載され、熱線が与えた影の長さから爆心地の位置や炸裂した高さを推計しており、のちにアメリカが公表した値とほとんど変わっていない点に驚いたものである。

 今回は計量の専門家であっても測量は門外漢である矢野宏の関係者の話を記したが、測るという行為がかなり幅広い分野に渡る性質を持つことが、どんな分野にも首を突っ込むという当人の行動パターンに多少なりとも影響をしているような気がしている。

2025-04-23-a-certain-measurement-engineer-sequel-no1-by-koya-yano-

目次 官僚制度と計量の世界 執筆 夏森龍之介

官僚制度と計量の世界(24) 戦争への偽りの瀬踏み 日米の産業力比較 陸軍省戦争経済研究班「秋丸機関」の作業 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(23) 第二次大戦突入と焦土の敗戦「なぜ戦争をし敗れたのか」 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(22) 結核で除隊の幹部候補生 外務省職員 福島新吾の場合 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(21) 戦争と経済と昭和天皇裕仁 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(20) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(19) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(18) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(17) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(16) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(15) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(14) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(13) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(12) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(11) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(10) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(9) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(8) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(7) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(6) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(5) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(4) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(3) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(2) 執筆 夏森龍之介
官僚制度と計量の世界(1) 執筆 夏森龍之介

ほか

[資料]国立研究開発法人産業技術総合研究所:役員および執行体制 (aist.go.jp)
https://www.aist.go.jp/aist_j/information/organization/director/director_main.html

[資料]

銀行券・貨幣の発行・管理の概要 : 日本銀行 Bank of Japan

財務省が第153次製造貨幣大試験を実施 令和6年10月28日、大阪市の造幣局で

第153次製造貨幣大試験を実施しました : 財務省

貨幣大試験 - Wikipedia

貨幣として機能した麻薬のアヘン

【明治銀貨13枚】ポチっとシリーズ。


計量計測トレーサビリティのデータベース(サブタイトル 日本の計量計測とトレーサビリティ)
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