「計量計測データバンク」サイトマップ
measure and measurement data bank of saite map

ウイルス感染爆発対応は冷静さこそ大事だ
新型コロナウイルス感染症が政治的に利用された
Calmness is important for responding to virus infection explosion
New Coronavirus Infections Politically Used
緊急対談「のんちゃんとコロナ」岡部信彦氏と指揮者の井上道義氏との対談 動画 2020/04/10(金)

オーケストラ指揮者井上道義氏のの幼馴染「のんちゃん」こと、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議メンバーである岡部信彦さんと「新型コロナ」ついて緊急対談(LIVE配信)した。国立感染症研究所感染症情報センターセンター長を歴任し、新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員である岡部信彦氏(日本の医師、現在川崎市健康安全研究所所長)は、指揮者の井上道義氏との対談(2020/04/10(金)15:10からライブ配信)で新型コロナウイルス感染症が政治的に利用されたと話す。
福岡伸一氏が水道橋博士氏、宮崎哲弥氏の番組に呼ばれて話した。10年以上前に新型コロナウイルスが大流行したときのことであり新型コロナウイルス騒ぎへの警鐘となっている。国立感染症研究所感染症情報センターセンター長を歴任し、新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員である岡部信彦氏(日本の医師、現在川崎市健康安全研究所所長)は、2020年3月10日に開かれたプレスクラブ(日本記者クラブ)での講演などで、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザより少し害毒性が強い程度だと述べている。また指揮者の井上道義氏との対談では新型コロナウイルス感染症が政治的に利用されたと話す。
ウイルス感染爆発対応は冷静さこそ大事だ

 ウイルス感染爆発対応は冷静さこそ大事だ

ウイルス感染爆発対応は冷静さこそ大事だ

ウイルス感染爆発対応は冷静さこそ大事だ
ウイルス感染爆発対応は冷静さこそ大事だ

福岡伸一(ふくおか しんいち、1959年9月29日-)

新型コロナウイルス感染症が政治的に利用された

写真は岡部信彦(おかべ のぶひこ)氏ウッキペデイア
ウイルス感染爆発対応は冷静さこそ大事だ 福岡伸一氏

前川喜平さんにきく 「緊急事態宣言下の学校と政治」 2020年4月8日収録 デモクラシータイムス2020/04/10アップ

前川喜平ウッキペディア

(タイトル)
ウイルス感染爆発対応は冷静さこそ大事だ 福岡伸一氏
(副題)
新型コロナウイルス感染症が政治的に利用された

(本文)

 福岡伸一氏が水道橋博士氏、宮崎哲弥氏の番組に呼ばれて話した。10年以上前に新型コロナウイルスが大流行したときのことであり新型コロナウイルス騒ぎへの警鐘となっている。国立感染症研究所感染症情報センターセンター長を歴任し、新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員である岡部信彦氏(日本の医師、現在川崎市健康安全研究所所長)は、2020年3月10日に開かれたプレスクラブ(日本記者クラブ)での講演などで、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザより少し害毒性が強い程度だと述べている。また指揮者の井上道義氏との対談では新型コロナウイルス感染症が政治的に利用されたと話す。

福岡伸一氏は水道橋博士氏、宮崎哲弥氏との鼎談のなかで次のように語る。

 新型インフルエンザ感染爆発について大事なことはある種の冷静さ、冷静な対応こそ大事だ。全てのウイルスは絶え間なく変化しているので押し寄せてくるウイルスは結局はどれもが全てが新型である。新型インフルエンザウイルスは豚由来なので少しは新しいかもしれない。全てのウイルスは新型なのだが感染力が強くて致死率が高いウイスルを新型と定義される。十分な体制が必要だ。毎年押し寄せる季節型のインフルエンザに沢山の人が感染して「沢山の人が亡くなる」。新型インフルエンザであっても季節型と同じように考えるべきだ。感染するということではいくら免疫があっても感染は成立してしまう。これが重症化するかどうかが免疫力です。これだけ人が右往左往している現代社会では感染を完全に止めることはできないことなのです。密集している社会だと感染は免れない。大事なことは何かというと重症化して亡くなる人をできるだけ最小化すること。重症化して亡くなる人を最小に抑えるために医療資源はこのために集中することが大事だ。感染を防止することにあまりにも極端な注意を向けられるとかえって死者を増やしてしまう。

【関連のニュース、webほかYouTube動画など】
新型コロナウイルス感染症対策はコロナウイルスは重症者・死亡者をいかに抑えるかがポイント 日本記者クラブでの岡部信彦氏講演 2020年3月10日
元国立感染症研究所感染症情報センター長で小児の感染症問題が専門の岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長が3月10日、日本記者クラブで会見し、新型コロナウイルス感染症問題との向き合い方などについて語った。プレスクラブ(2020年3月10日) 岡部氏は最新のデータを示しながら、感染者の8割に症状が出ない、もしくは軽微な兆候しか見られない新型コロナウイルス感染症は、極度に恐れるべき病気ではないが、逆にそれが感染が容易に広がる要因となっていることに注意が必要だと指摘。「若い人はそれほど恐れる必要はないが、高齢者が感染すると重篤化したり死亡する場合がある」ため、重症者や死亡者の発生をいかに抑えるかが今後の重要なポイントになるとの考えを示した。岡部 信彦(おかべ のぶひこ)プロフィール。川崎市健康安全研究所所長。1946年東京都生まれ。71年東京慈恵会医科大学卒業。同大小児科助手、神奈川県立厚木病院小児科などを経て78年米バンダービルト大学小児科感染症研究室研究員、WHO西太平洋地域伝染性疾患予防対策課長、慈恵医大小児科助教授などを経て、97年国立感染症研究所感染症情報センター室長。2013年より現職。著書に『かぜと新型インフルエンザの基礎知識-知って防ごう』、共著に『新型インフルエンザパンデミックに日本はいかに立ち向かってきたか』、監修書に『新感染症ガイド R-BOOK 2018-2021』など。
岡部信彦(おかべ のぶひこ)ウッキペデイア

緊急対談「のんちゃんとコロナ」岡部信彦氏と指揮者の井上道義氏との対談 動画 2020/04/10(金)15:10~(2020.04.11アップ)

オーケストラ指揮者井上道義氏のの幼馴染「のんちゃん」こと、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議メンバーである岡部信彦さんと「新型コロナ」ついて緊急対談(LIVE配信)した。国立感染症研究所感染症情報センターセンター長を歴任し、新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員である岡部信彦氏(日本の医師、現在川崎市健康安全研究所所長)は、指揮者の井上道義氏との対談(2020/04/10(金)15:10からライブ配信)で新型コロナウイルス感染症が政治的に利用されたと話す。

岡部信彦氏 新型コロナウイルス関連インタビュー記事 BuzzFeed News
「日本でも欧米のような大流行が起きるの?」「大規模イベントどうする?」専門家会議が共有したかった危機感とは 2020/03/24

「日本でも欧米のような大流行が起きるの?」「大規模イベントどうする?」 専門家会議が共有したかった危機感とは。新型コロナウイルスに関する政府の専門家会議が3月19日、新たな提言を出しました。日本でもいつ爆発的な患者急増が起きてもおかしくないと危機感を強く打ち出す一方、イベント開催については会議の中で意見が分かれもしました。委員の一人、岡部信彦さんにそこに込められた思いを伺いました。

「突然爆発的に患者が急増(オーバーシュート)すると、医療提供体制に過剰な負荷がかかり、それまで行われていた適切な医療が提供できなくなることが懸念されます」
政府の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」は3月19日、聞きなれない「オーバーシュート(爆発的な患者急増)」や「ロックダウン(都市機能の封鎖)」と言葉を何度も使いながら、「状況分析・提言」を公表して強い危機感を打ち出しました。

これまでと状況はどう変わったのか、そして、なぜ今、この提言を我々に向けて発信したのか。
専門家会議の構成員の一人で、国際的な新興感染症対策のスペシャリスト、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんにその狙いを解説していただきました。
※インタビューは3月23日夜に行われ、話した内容はその時点の情報に基づいています。

欧米の爆発的な流行に日本も影響を受けざるを得ない

ーー専門家会議が3月19日に出した「状況分析・提言」はかなり厳しい見通しが書かれています。急に危機感を強く打ち出す方針に転換した印象を受けます。
欧米での爆発的な流行と、それに対するリーダーたちの動き、死亡者の増加によって、今まで言ってきたこととニュアンスの違うことを言わざるを得なくなってきたと感じています。
ーー「オーバーシュート」とか、都市を封鎖したり、強制的な外出禁止の措置や生活必需品以外の店舗閉鎖などを行ったりする「ロックダウン」という聞きなれない言葉を使って、何だか日常とは違う大変なことが起きそうな提言です。
欧米の状況は、日本に実質上の影響を及ぼしますし、対策上も影響を受けざるを得なくなります。
実質上の問題としては、イタリア、スペイン、フランスの状況は僕にとってもショックでした。医療インフラも整っている先進国ですから、本来はもう少し対応できるだろうと考えていたのですが、そうではなかった。

イタリアは爆発的な流行が起きただけでなく、それに慌てふためいているような状態です。その状況で死者数があれだけ増え、まるで初期の武漢市のニュースを見ているようです。
他の国々も都市封鎖に近い、人の出入りを止めるような「ソーシャル・ディスタンス(社会的隔離)」という古典的な公衆衛生的対策を取っています。アメリカも、もう少し落ち着いて対応できるのかと思っていたら、右往左往しています。
WHO(世界保健機関)が「パンデミック(世界的な大流行)」を宣言したことを考えても、日本だけ落ち着いていていいですよ、とは言っていられない。
パンデミック宣言は、特にアジア・アフリカ諸国を意識してのことだと思います。医療のインフラが行き届かない地域に流行が広がれば、さらに大変なことになる。
新型コロナに限らず、インフルエンザや麻疹(はしか)が流行しても酷い結果になる地域です。それを警戒し世界に危機感を広げようとしているのだと思います。

追跡できない感染者が増えてはいないとみる理由

そうした世界の動きの中で日本の状況を見ると、北海道も大阪も、ポツポツとクラスター(感染集団)は出ているけれども、何とかそのあとの爆発的流行にはならずに持ちこたえている。
韓国、イタリアやスペインのような大流行もないが、いわば真綿で首を締められるようなくすぶり状態が続いています。何が功を奏しているのか明確な具体的理由はわからないのですが、全体を見ると抑えられている。
小さな集団発生を見つけて、そこからの感染拡大を潰していくという作戦は今のところ、うまく行っていると言えます。
クラスターから発生した人が、2次、3次感染を広げるということもなかった。全体の数を見ても新規の感染者発生数は落ちていますからね。
ーー追えていない感染事例があるのではないかという指摘もあります。
追えていない感染者が多数増えているなら、割合は低くとも原因不明の肺炎やそれによる死亡者も増えているはずです。
しかし、肺炎を一つの指標にしても、急に原因不明の肺炎が増えているという事実は今のところないようです。見つけられていない感染者がいることは十分あり得ると思いますが、ものすごく増えているわけではないと推測できます。
また、川崎市やいくつかの自治体では原因不明の肺炎も医師の判断によりPCR検査に出してもらっていますが、その中から新型コロナの陽性者は出ていない。
原因不明の肺炎にコロナが紛れているということは今のところ、あったとしても少数と思います。
ーー1人が他の人にうつす人数である「実効再生産数」は1前後に抑えられ、感染拡大のスピードは目下のところは抑えられていると提言で発表されていました。
幸いにして、感染の拡大はこのデータからは示されていません。全国あちこちで確かに患者が発生していますが、数百人単位で感染者が発生する、いわゆる「オーバーシュート(爆発的な患者急増)」には目下のところなっていない。
クラスター対策で濃厚接触者を追跡し、丁寧に丁寧に感染拡大の芽を潰しているのが日本です。
ただ、今もパラパラと小規模なクラスターが生まれている。欧米ではたぶんそれ以前の小さな芽の発生に気づかずに、一気にオーバーシュートに進んだのではないかと思うので、それを教訓に身構え、備えておく必要はあると思います。
ただし、感染者の8割は軽く済む病気なので、この人たちにあまり不安を持たせたくもない。
一方でリラックスしすぎてもほしくもないので、一定の緊張感を持って、日常の行動を変えてもらいたい。また医療体制については、重症者を見逃さない、適切な医療に結びつけるという意味で体制を整備しておくことが必要です。ここにも多くの方々の協力が必要である、ということで今回の提言を出しています。
今回、改めて提言で「3本柱の基本戦略」を維持し、強化しなければいけないと書いているのはそういう意味です。

クラスター(患者集団)の早期発見・早期対応
患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保
市民の行動変容
医療機関の役割分担を提言したわけ


ーー提言では、医療機関の役割分担も打ち出しています。無症状や軽症の人は自宅で様子をみて、重症な人はしっかりと感染症指定医療機関で診る。その他の人は一般の医療機関や診療所でも診ることを求めています。
何が発症する「黄色信号」なのかは明らかになっています。息苦しさやだるさ、熱などの症状が受診すべきかどうかの見極めどころなので、それに気づき、一定の経過がある人は速やかに医療機関に行けるようにしておきたい。
症状はごく軽いか、あるいはないのだけれど、心配でしょうがないという人が診療に殺到すると医療機関は詰まってしまいます。または、入院して治りかけはすっかり元気なのに、PCR検査が陽性だという理由だけで重症患者用のベッドを占めることがないようにしないといけない。
そういう医療体制の機能分担は、爆発的な感染が起きていない今のうちに準備しておかなければいけません。医療関係者もふんどしを締めなければいけないところです。
ーー本来、重症患者を引き受ける指定医療機関が軽症者まで診る状態は早く改善されなければならないと以前から指摘されています。まだその機能分担は進んでいないのですね。
川崎もそうですが、自治体によっては、新型インフルエンザをモデルにすでに体制ができているところがあります。体制作りはしていますが、重症までいかない患者を引き受けてもらいたい一般病院や診療所で診る医師会の先生たちが、受け入れ自体を躊躇されているところもまだあります。
「診察をした患者が1人陽性だったら、2週間も診療所や病院を閉めなくてはいけないのか」「医療機関の感染対策に必要な防護具が足りない」などの理由で、受けられないとも言われています。
防護具については自治体が備蓄を放出したり、国も生産量を増やしたりなど動き出していますが、まだ十分ではありません。
確かに医療者を感染から守る防護具がなければ、武器なしで戦えというのと同じです。国や自治体の支援が必要です。
一般医療機関や診療所で診てもらう時に、感染者と接した全ての医療者を濃厚接触者として扱うと、出勤停止や閉鎖となり、医療機関が稼働できなくなります。
ある程度の防護ができていた人は、健康の注意は必要ですが、それだけで濃厚接触者として扱うことはしない、というような柔軟な対応も必要であると思います。
ーー無症状や軽症者は自宅でとなると、家庭内感染も心配されます。
狭い家で暮らしている家族だと感染者と部屋を分けるのは難しいでしょう。重症化の恐れがある、高齢者や持病のある人も感染者から離せなくなります。
その場合は家族が別のところに行くか、陽性者が別の施設に行くというのも一つの方法です。そのような場合の陽性者の行き先は、行政が紹介しなければいけないでしょうね。
ーー行政が紹介するというのは、韓国のように無症状者や軽症者を観察する施設を作った方がいいということですか?
あるいは、ホテルなどどこかに受け入れを委託するなどの方法があるでしょう。
ーーもちろんその費用は公費でもつわけですね。
ホテル代を自分で出してとなったら、費用を負担できない人もいるでしょう。公衆衛生上の必要な措置ですから、入院と同じく国が費用負担する仕組みを考えなくてはならないでしょう。

検査はどうするべきか?

ーーWHOのテドロス事務局長の「検査、検査、検査」という呼びかけはインパクトが強く、日本でももっと検査を増やすべきだという声は強いです。必要な人が検査を受けられるようにキャパを増やすことは当然として、無症状者や軽症者にも検査を広げた方がいいということではないようですね。
あれはまさに途上国など、検査が行き届いていないところで検査がちゃんとできるようにしてほしいというメッセージだと僕は思います。
例えば、今、発症者が確認されていない国はたくさんありますが、本当にそこに発症者がいないのかは検査をしていないからわからない。
日本や欧米に向けて、「無症状者や軽症者も全てやれ」と言っているわけではない。あの提言に書き加えられていた「WHOは症状の出ている人にだけ検査を勧める」という注釈は、そういうことだと思います。
検査は的確な時期に、的確な方法で検体を取り、疑いがある人が対象であるべきです。症状はないけれど陰性を確認したい人もいることは理解できますが、検査の資源には限りがあるため、優先順位をつけなければいけません。
やはり検査は発症者や入院患者が最優先であるべきだと思います。
ーー中国で、検査で陽性だった無症状者を感染者の統計にいれていなかったことが批判されています。
そこは実態がわからず、なんともコメントのしようがないところですが、元々、どこまでを対象に検査しているかで、感染者の母数は変わります。検査を限りなく広げれば、感染者が増えて致死率も下がるし、重症化率も下がります。そもそも無症状者は検査しない国がほとんどではないかと思います。
ーー検査を広げた方がいいという人の主張は、「無症状者や軽症者も人に感染させる。だからそういう人も感染を把握しないと、その人たちが外を出回って感染を広げてしまう」ということです。
その考えを突き詰めると、全ての人々を検査の対象にしなければいけません。しかもいつ陽性になるかもわからないので、心配であれば連日、検査を繰り返さなければなりません。
それは検査の受け入れ能力からも無理ですし、費用も膨大になる。迅速に検査を受けるべき重症患者にしわ寄せが行きます。検査の精度から考えても、偽陰性、偽陽性もあるので、解釈や行動に誤解と混乱が生じる可能性がある。
ただし、検査法がごく簡便に、低費用でできるようになれば「目安」として使えるようになることもあっていいのではないかと思います。
研究者としては、ある集団を全員一斉に検査して、そのうち何名がこうだ、そのうち接触のあった人はこうだと調べることに強い関心はあります。しかし、今はそれをやるだけの時間と資源がありません。

人口の8割が感染し、人工呼吸器も不足する最悪のシナリオを出したわけ

ーー提言の中で、10万人都市で一人の人が感染させる「再生産数」が、現在の1以下からドイツ並みに2.5になったと仮定すると、流行 50日目には1日の新規感染者数が5414人にのぼり、最終的に人口の約8割が感染するという推定値まで出されました。呼吸や全身管理が必要な重症患者が急増し、人工呼吸器が足りなくなるとも予測されています。
あれは最悪のシナリオなんです。あの想定を計算した北海道大学の西浦博先生や東北大学の押谷仁先生は、「最悪を想定して備える」という考え方です。
ただあの数字が一人歩きしてはなりません。これを現実にしたらだめなので、そうならないように備えようというメッセージにしたい。
せっかく日本は今、くすぶり状態が続いているわけですから、粘っている間に準備はできる。その間に、とりわけ医療体制の準備はしなくてはいけません。
僕が聞いてもハラハラする数字です。でも臨床的な感覚から言うと、8割がかかる病気はあまりない。提言にも書かれていますが、症状が現れない不顕性感染も含めての数字なんです。
フランスやドイツ、アメリカはすでにパニックになっているわけですから、もし日本で同じことが起きた時にパニックにならないように準備しておかなければいけない。しかし、場合によっては欧米がとったような封鎖や社会的な隔離も必要になるかもしれません。
大規模イベント、意見が割れたのはなぜ?

ーー大規模イベントを中止するかどうかについては専門家会議でも意見が分かれたということでした。「最悪のシナリオ」を出して危機感を打ち出すならば、「イベントはすべて止めてください」というのが自然のような気もします。

感染拡大を想定し、それに対処するには二つの方法があります。
北海道をはうまく抑え込めたのだから、他の地域でも「大規模イベントはすべて止めてください」「しばらく家を出ないでください」と言えば、今の状況をもっと抑え込めるし、もっと粘れるかもしれないというのが一つの考え方です。それもそうだと思います。
一方、僕は情緒的なところもあって、せっかくうまく行った時に「良かったね」とみんなで喜ばないと、気持ちが長く保たないのではないかと思ってしまう。
今、すでにみんなが疲れている時に、さらに厳しくすると、さらに疲弊感、無力感が出てしまうのではないかと思うのです。
手を抜いてはいけないけれども、どちらにしても後で我慢しなければならない時がくるかもしれないのであれば、今、気をつけながらお花見や公園での散歩などに行ってもいいじゃないかというのが僕の考え方です。
僕は小児科医として患者を診ていた時期が長かったのですが、回復が難しくてもなるべくなら生活制限をかけたくなかった。できそうなことをやらせたかった。患者は病気だけを生きているのではなく、その人の人生を生きているからです。病気や医学以外にも大事な価値観があり、それは尊重したいという思いです
大規模イベントについては、提言ではそれなりに縛りをかけています。
ただ、「イベント」という言葉で全て縛りをかけてしまうと、注意をすれば制限しなくてもいいと僕らが思うものにまで制限がかかってしまう。
ところが、条件を設けて「ここまでならいいですよ」と言うと、僕らが止めてもらいたいなと思うものまでやっていいように見えてしまう。そんな難しさがあります。

いろんな地方から人が集まって、3要素(密閉、密集、密接な交流)に当てはまるものは、やはり目下のところは止めてほしい。
しかし、どうしても集まらないければできない、意義があるというイベントについては、距離を離して、事後に参加者を追跡できるようにするなどの条件を示し、できないなら止めてくださいと言っています。かなりきつい条件です。

提言の意味は国民にきちんと伝わっているか?

ーーただ、あの提言が出た直後の週末に、さいたまスーパーアリーナで、格闘技「K-1」の大規模なイベントが開かれました。しかも、空間除菌や水を飲むという誤った感染予防策を主催者が参加者に伝えていました。
水を飲んでも意味がないですよね。先日、タイのキックボクシングの会場で流行が起きました。しかも、感染者が出たのがわかっていながら、イベントを続けて感染が拡大したそうです。
それと比べ、あえてK-1主催者側の立場にたてば、マスクを来場者に配り、来場者に連絡先を書いてもらい、入り口にアルコール消毒剤を置き、なるべく声を出さないように注意したーー。感染予防のための対策を重ねているのです。
でも実態を考えると、観客が密集し、静かに見ているはずがないですね。格闘技自体、観客が興奮するためにやっているわけですから。少なくとも埼玉県は危惧し、知事が止めてくれと依頼したわけですから聞き入れてほしかった。
でも、また主催者側の肩を持つならば、あれを中止にしたら会社が潰れてしまうかもしれない。彼らもギリギリの決断をしたのではないかと思うのです。
患者が出ないのを祈るばかりですが、万が一、こうしたイベントが今後また開かれたとしても、少なくとも体調が悪い人は絶対に行かないでほしい。

ーーあのイベントも、自粛を依頼したなら補償は提示したのかと尋ねられた知事は補償しないと答えています。

本当は補償の問題を中止要請と一緒にやらないと難しいでしょうね。主催者には、辞めるインセンティブ(動機付け)が全くないわけですから。彼らは公衆衛生上の理由で人を守ろうとしても得になりません。褒められるわけでもない。
ーー政府が検討中と報じられたのは、旅行や外食について助成するという案です。感染拡大する可能性のある旅行や外食自体よりも、客が減ってダメージを受ける事業者の方に助成すべきではという声が出ています。
ここから先は医学の問題ではないですが、少なくともそちらは税金や貸付金などで救済策を考えるべきでしょう。それは政治でやっていただきたい話です。やはり幾ばくでも止める動機付けがないと、生活がかかっている事業者は動けない。
オリンピックはどうすべきか?
ーーもう一つ気になるのが東京オリンピック・パラリンピックです。今日、国会で安倍首相が延期もあり得ると答弁しました。オリパラこそ、不特定多数が全国、全世界から集まってきて、密集して声援を送り、また全国・全世界に散っていく大規模イベントです。
危惧しているのは、日本はくすぶり状態を続けてせっかく「良い子」になっている状態なのに、バラバラと外から来て感染者が出てくると、欧米と同じ条件になってしまうことです。もう一度、一からやり直しになります。

ただし、今、海外から感染が持ち込まれれば手がつけられない状態になるかもしれないですが、数ヶ月後には効果のある薬が出てくるかもしれないし、診断も早くつくようになるかもしれない。
今の時点で夏の状況を全て予測することはできません。
ーーそれに日本がやると言っても、もし欧米で感染がさらに広がり世界が選手を派遣できないとしたら、そもそも大会が成り立ちませんね。カナダは予定通りやるとしたら選手団を派遣しないと声明を出しました。
専門家会議はオリンピックのために対策を考えているわけではなく、感染症をなんとかしようと考えています。それを受けてオリンピックをどうするかを考えるのはJOCやIOCです。私たちがオリンピック開催の是非をうんぬんする立場にありません。
国民と作る「どこまでなら我慢できるか」という合意
ーー西浦先生が、4月いっぱいまでどこまでの制限なら我慢できますか?というアンケート(「新型コロナウイルスの流行拡大と日本での生活に関する緊急調査」3月25日午後11時まで)をネットを使って始めていらっしゃいます。リスクコミュニケーションは一方通行だと難しいので、国民の声にも耳を傾け始めたのだなと思いました。

人々がどこまで受け入れてくれるかを知りたいのです。「これは我慢しなくちゃ仕方ないよね」と思うのか、「それを我慢するより、日常の生活の維持が大切」と思うのか。

ーー記者会見の時は、西浦先生はどこまでの制限なら許容できるのか「みなさんと話し合いたい」「みなさんで合意するプロセスを作っていきたい」ということを繰り返しおっしゃっていました。

我々が良いことだと思ってお願いしたことが、反発を生んで実行されないならば意味がないし、少し緩くていいかとこちらが思っている時に、「本当はもっと厳しくしてほしい」という意見が多いならばそれを取り入れなくてはいけない。そういうアンケートを今までやっていませんでした。
ーー差別や偏見についてもメッセージを入れましたね。今、感染者を診る病院や医療従事者に対する差別や風評被害があるそうです。
この感染症は危ないというメッセージが強過ぎると、自分がそうならないようにするために遠ざける人も出るでしょうし、風評被害も出るでしょう。
しかし、そうなると、患者を診ないことが医療機関にとっても一番安全なことになります。医療機能の分担をしないといけないのに、そんな差別をしていたら、みんな新型コロナの診療に協力しようとしなくなるでしょう。
もともと感染症は、差別が起きやすい病気です。でもその差別の暴力は、自分に返ってくる可能性を考えてほしいです。

感染に気をつけつつ、日常生活や心を守る工夫を

ーー今回、地域の感染状況ごとに、対策を強化したり、緩めたり柔軟な対応を取っていく必要性が打ち出されています。学校での対応も、日常生活での対応も、感染拡大しやすい3要素「密閉」「密集」「密接」には気をつけながら、自分の地域の感染状況に合わせて対応を考えていくことが必要なわけですね。
地域の感染状況に応じて、バランスをとりながら必要な対応を行っていく必要があります。みんな全てを我慢しようと言っているわけではありません。
僕は連休に、見学ではなくて、本当に家内と名所だけれども比較的空いているところにお花見に出かけたんですよ。みんな結構、楽しそうに過ごしていました。公園に子どもを連れて行ってたり、お弁当を広げていたりしました。

お花見に出かける姿を批判する人もいますが、自粛疲れで世の中が暗い雰囲気になっている時に、ああいう風景はむしろホッとします。あまりギュッと制限をかけ過ぎて、そういうささやかな楽しみまで奪うのは良くないことです。
広いオープンエアなら大丈夫ですし、知らない人とは少し距離を保ちつつ、家族で楽しむことまで制限する必要はないだろうと思います。
感染対策に気をつけつつ、人間らしい日常生活を守るために何ができるか、工夫して心の健康も守っていただきたいと思います。

「流行の封じ込め」から「流行を前提とした対策」へ 専門家「切り替え時期を考えなくてはいけない」 2020/03/06

「流行の封じ込め」から「流行を前提とした対策」へ 専門家「切り替え時期を考えなくてはいけない」
政府からイベント中止の要請に続き、全国の小中高校の休校要請もあり、日常生活に大きな影響が出ている新型コロナウイルス感染症。政府に助言をしてきた専門家会議はこの状況をどう見ているのか。構成員の一人で感染症のスペシャリスト、岡部信彦さん2度目のインタビューです。

「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が政府に医学的な助言を続けているにも関わらず、全国休校要請は事前に相談がなかったことも明らかになり、根拠のある対策が打ち出されているのか疑問が残ります。
専門家会議の構成員の一人で、2009年の新型インフルエンザ発生時には国の対策を検討する委員会の副委員長も務めた川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんに、改めて、このウイルスにどう立ち向かえばいいのかお話を伺いました。
※インタビューは3月4日午後に行われ、話した内容はその時点の情報に基づいています。

わかってきた新型コロナウイルスの特徴

ーー1か月前にインタビューさせてもらいましたが、ここまでのデータを見て、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、新型インフルエンザなどと比べて、このウイルスはどういう特徴があると言えますか?
良い点から言えば、軽い症状で済む人が8割ぐらいいることがわかってきたことです。致死率も全体で2%ぐらいで、高齢者が圧倒的に多く、若者の重症者はまれ。重症患者でも治って退院する人がいることが明らかになっています。
一方、厄介だなと思うのは、潜伏期間が少し長めなので、感染していることを見つけにくいことです。他の病気との区別が難しいですし、最初に出る症状はこのウイルスに特有のものではないので、あまりはっきりしないうちに人にうつしてしまう可能性もあります。
感染力から言うと、ウイルスが長く空間を漂う「空気感染」があるのか、ウイルスを含んだ液体が霧のような状態で空中を浮遊する「エアロゾル感染」が一時話題になりましたが、それが多くあるなら、あっという間に全世界で蔓延状態になるはずです。
そうではなく、爆発的な流行になっていないのは幸いですが、見つけにくいことは確かです。専門家会議では、閉鎖的な空間での至近距離での交流は避けたほうがいい感染経路だということがわかってきたと言っています。
一定数の感染者が出た時、ほとんどの人は治るのだから、感染を食い止めることに大きな力を割かなくてもいいじゃないかという考え方もあります。
ただ、インフルエンザ並みに1000万人かかってしまうと、致死率が低くても、死者が10万〜20万人出ることになります。やっぱりこれは避けたい。
だから、重症者をなんとかすることが、今もっとも力を割かなければいけないことです。最初から意見は変わっていません。
感染を食い止める対策から、重症者に集中する対策への切り替え

ーー重症者をなんとかするにはどうしたらいいのでしょうか?

重症者をきちんと診るためには、医療体制が崩壊しないように工夫する必要があります。感染をとにかく食い止めることに必死になる対策は、いつか切り替えなくてはならない。ただその時期をいつにするのかは、専門家会議でも意見が分かれます。
今はまだ国内で爆発的に増えている状況ではないので、北海道などのクラスター(小規模な感染集団)の特徴を丁寧に分析して、クラスターを生みそうな若者たちに注意を呼びかけ、閉鎖的な空間での交流はできるだけ避けてほしいと呼びかけるべきだという合意に至りました。今はまだ諦める時期ではないということです。
ただ、いつか諦める時期は決めなくてはいけません。
軽い人がほとんどで、症状がない人からもうつるかもしれない。それを全部しらみつぶしに明らかにしようとすると、日本の人口を全て検査して、一度検査してもわからないこともあるから1日おきに検査を繰り返す、というのは、物理的にも費用の面でも無理な話です。
軽い人は普通に診て、重い人はなるべく早く見極める。その対策への切り替えをいつにするのか、まだ意見が分かれており、議論が進められています。

ーーインフルエンザよりも肺炎になりやすいという嫌な特徴はあるわけですね。

病気として厄介な部分は、ストレートに肺炎になりやすいことですね。解剖所見に関する論文はまだ1報しかみていませんが、SARSのような急性呼吸器不全(ARDS)を起こしています。高齢者などのインフルエンザ肺炎とは重症のなり方が違うようです。
ーーそういう病気の特徴からも、重症例を早く発見することが必要なのですね。
そうです。

ーー重症になっても早めに手を打てば必ず治るのですか?

高齢者の肺炎はもともと死に直結しやすいほど危険で、あっという間のことも多いです。しかし、治療法も進歩しています。早期診断と早期治療が有利になることは言うまでもありません。
しかし少なくとも3、4日ぐらいで自然に治る人8割以上いる。治る人はそのまま家で様子をみて、それ以上続く、あるいはそれ以内で病状に変化があれば病院で診ることが早期発見のための道筋です。
しかし、どうも厚労省の出した受診の目安が誤解を招いています。
37.5度以上の熱が出たら4日間必ず待たなければならないと考えている人がいます。そうではなく、具合が悪ければ早く行った方がいいし、高齢者や持病のある人は2日以上となっていても、症状が強ければ帰国者・接触者相談センターなどにすぐ相談するのはもちろんいい。ほかの重症な病気のサインかもしれませんし。

ーー例えば、健康な成人でも39度や40度出たら、受診した方がいいわけですよね。

そうですよ。普段の医療と同じです。様子をみていても、咳をし過ぎて吐くとか熱が39度以上になれば、辛いでしょうから受診してください。
厚労省や専門家会議が出した「集団感染しやすい環境」の意味は?
ーー3月2日に出された専門家会議の最新の見解では、「屋内の閉鎖的な空間」で、「人と人とが至近距離」で、「一定時間以上交わること」によって、集団感染が起き得ると注意喚起しています。

ライブハウスなど若者が集まるところで感染が起きている状況証拠から、若者への注意喚起が行われた

一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が報告されています。 具体的には、ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テント等です。このことから、屋内の閉鎖的な空間で、人と人とが至近距離で、一定時間交わることによって、患者集団(クラスター)が発生する可能性が示唆されます。(3月2日の「見解」より)
ーーその前の2月24日に出された専門家会議の見解では、咳やくしゃみで飛んだウイルスが直接体内に入る「飛沫感染」と、ウイルスに触れた手で目や口や鼻の粘膜を触る「接触感染」の他に、例外的に別の感染ルートがある可能性について触れていました。2日の見解は、ウイルスが空中に漂うような感染ルートの可能性を踏まえての注意喚起なのですか?
ただし、例外的に、至近距離で、相対することにより、咳やくしゃみなどがなくても、感染する可能性が否定できません。(2月24日の「見解」より)
「スタジアムにいるとみんなうつっちゃう」という誤解を払拭したいので細かく書いたのです。むしろ空気感染ではない、ということを伝えたくて細かく書いたところがあります。
ーー基本的に、飛沫、接触感染であることは変わらない?
例外的なルートは、医療機関で気管挿管をしたり、気管内の吸引を行うといったりした場合はエアロゾルが発生する可能性があります。
検査の時に患者さんの鼻や喉から検体を取る時にも、通常エアロゾルの発生はありませんが、慎重にすることもあります。飛沫、接触感染が主なルートだという前提は変わりません。
「全国一斉休校」 専門家会議は聞かれなかった
ーー政府が出した「全国一斉休校の要請」ですが、専門家会議は事前に相談を受けていないと怒りを含んだ口調でメディアに話されていたのが印象的でした。
諮問はされていません。休校という対策自体も、全国でやったほうがいいのかという質問もされていません。こちらから自主的に「休校にした方がいい」という提言ももちろんしていません。

でも、学校で流行した時にどうするか、拡大したときにどうするかという意見交換はもちろんしていました。しかし、その結果、もし全国休校が必要ならば提言していますが、専門家会議で今の状況で全国休校という合意はありませんでした。

ーー流行拡大を予防する目的で、このタイミングでの全国休校は必要なかったということですか?

現実に子どもでの患者発生は中国においても少数で、ほとんどが軽症です。北海道を見ても、確かに学校で子どもの感染者が出ましたが、例外的で、感染しているのはほぼ大人です。
子どもは少ないことに関する理由はまだ不明ですが、これは事実ですし、もっかのところ子どもの間で広がるというわけではないことがわかります。
2009年の新型インフルエンザ発生の時は極めて早い段階で神戸から関西方面全体で休校に踏み切ったこともありましたが、新型コロナは患者層が違うのですから、同じ発想をしてはいけないと思います。
ーー社会的影響が大きいですしね。
そうです。休校すれば生徒が休むだけではなくて、核家族の共働きが多いのですから、両親が仕事に行けなくなります。その人たちが職場から抜けると、事業継続どころではなくなりますし、医療関係者は特に、共働きや、お子さんを預けながら仕事をされている女性が多いので、その方たちが医療現場に行けなくなると、一気に医療の機能は低下します。
新型インフルエンザの行動計画の中では、医療関係者の保育園、学校の休校は一般とは別に考えないと、医療関係者を確保できないということも考えられています。既にそのような議論をしておきながら、今回、唐突に患者発生のない地域も含めて全国

休校を決めるのは、どういうことなんだと思います。
今は踏み切るタイミングではないと思いますし、専門家会議に一言聞いてくれたらそんなことに悩まずに済んだのではないかと思います。


ーーそもそも専門家会議のミッション(任務)は何なのですか?

急ごしらえなので、最初は政府側から聞かれたことに意見をそれぞれが述べるというような形でしたが、構成員の方からその対応に医学的な補足という意味で見解を出そうということになった。
また内部で、いろいろな対応や見通しに関する医学的科学的な意見交換といったような非公式の集まりもしょっちゅう行っています。
本当は、専門家会議がこの病気に対するポリシー (方針)を作らないとだめだと思うんですね。もちろん新興感染症の対策は、医学だけではなく、社会的な課題もありますね。
医者は医学的な問題を中心に考えて、オリンピックなどに重点を置いた議論はしませんが、そこは社会的な要素を含んでの判断が必要となります。
政策を進める人はオリンピック開催のことが頭にチラチラ浮かんでいることでしょう。政治的な判断も必要だと思いますが、そのような点については社会・経済学の専門家にも入ってもらう必要があるかもしれません。

全国休校への批判と、専門家会議の「若者への注意喚起」の整合性

ーー小中高校の全国休校の意義については専門家会議の構成員はみな、疑問を投げかけていました。ところが3月2日に出された専門家会議の最新の見解では、若者が感染を広げる可能性があるので気をつけてくださいというメッセージを強く打ち出しました。若者は行動を制限すべきなのかそうでないのか、矛盾していませんか?
10代、20代、30代の皆さん。
若者世代は、新型コロナウイルス感染による重症化リスクは低いです。
でも、このウイルスの特徴のせいで、こうした症状の軽い人が、
重症化するリスクの高い人に感染を広めてしまう可能性があります。
皆さんが、人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで、
多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます。(3月2日の見解より)


見解で10代を入れるのはどうかとも思ったのですが、本当は10代後半を視点にしています。高校生から大学生ぐらいを想定しているのです。行動がなんとなく大人に近くなる世代を指しているので、小中学生ではありません。

ーーライブやカラオケに行く年頃ですね。
そうです。あれは全国休校を後押しするために書いているわけではなくて、カラオケに行ったり、飲み屋に行ったりする年代を想定しています。保護者の同行を必要としないで、自分で行動できる年齢と書けばよかったかもしれません。

若者が感染させた事実はあるのか?


ーーそもそも北海道などの事例を分析していて、若者が他者に感染させている事実は確認されているのですか? 推測なんですか?
そういうところに行っているグループの中で患者発生があったということです。
ーー若者が感染を広げているということはどのデータに基づいているのですか?
北海道のクラスター(小規模な感染者集団)を調査しているグループの意見ですね。
それを証明するデータはどこにあるのかと確かに言われているのですが、感染の動きから言うと、感染したのが中高年であろうが、感染した場所に溜まっているのは若者たちです。そこから拡散しているという推論ですが、実際の調査は進められています。
ーーということは、やはり推定とか状況証拠ということですね。
全て数字で証明されているわけではないです。そういうところに行く年代層の集まりから複数の感染者が出ているということです。そこには、症状がないか軽い人で本人も気づかず感染をさせた人がいる、だから感染がわかりにくいという考え方です。
インデックス・ケース(最初の感染者)がどういう人かはわかっていません。隠れた感染者がいるということです。それが若者の集まるライブハウスや閉鎖的な空間だったわけです。
症状が軽い若者から感染したのではないか、というのは私にとっては納得できる説明であると思いました。しかしそれは、気づかなかった本人が悪いわけでは決してない。

若者は周りの人のために手を貸してほしい

ーー若者の間では自分たちが感染を広げていると責められているような気持ちになっている人もいるようです。
若者は悪者ではないのです。見解の若者に向けたメッセージは「君たちは軽症に終わることがほとんどだから心配ないけれど、そのままだと知らないうちに人にうつす可能性がある。
その人がお年寄りだったり、持病の治療を懸命に受けている方だったりすると、重症な肺炎になりやすい。君たちがちょっと注意してくれれば、君たちのおかげで人の命を救える。君たちが悪いわけじゃないんだよ」と言いたいのです。
例えばインフルエンザという病気は、子どもや若者を含めて中高年までかかり、人にうつしやすい期間は登校や出勤をさせないようにしていますね。
あれはその人の体調を考えてだけのことではありません。その人が少しでも接触を避けて流行させないようにしないと、高齢者や子どもたちが重症化して犠牲になるのをみんなで防ごう。みんなで注意しようよ、という対策なんです。
その人の体調だけを考えれば、熱が下がれば会社を休まなくてもいいのです。でもそういう人が増えたら、感染者の母数が増えて、ハイリスクな人にもうつります。「あなたは大丈夫だけど、みんなのことをちょっと考えて」というのがインフルエンザ対策の思想なんです。
もともとインフルエンザは自分がかかりたくない病気だから、ワクチンもそれなりに受ける。コロナも同じように、自分が悪くなるのが嫌なのは決まっているし、重くもなりたくない。でも若者は軽症で終わる割合が高い。
だから、若者には、「あなたたち一人一人が悪いわけじゃないけれど、祖父母がかかると大変だし、見知らぬ高齢者や会社でひっそりと糖尿病治療をしている人や、妊婦に広げて悪化させないために、君たちの力が必要なんだ」という呼びかけなんです。
ーー誰かのために、というと、風疹でも、検査やワクチンを公費で受けられる無料クーポンが流行の中心となっている中年男性に配られているのに利用が低迷しています。「誰かのために」人はなかなか行動しないですね。
しませんねえ...。でもそういうところに共感してくれる人が少しでもいてくれたらいいなと思うのです。風疹も本人はそれほど悪くならず自然に治ってしまうことがほとんどの感染症です。
でも、あなたがかかるとあなたの奥さんや娘や隣に座っている女性社員にうつして、赤ちゃんに障害を残すようなことのないようにみんなで防ごう、という、成熟した社会の戦略なんですね。

「個別の判断」なぜできないか?


ーー自分はそれほど症状も悪化しないのに、自分ではない誰かのためにやりたいことを我慢させるのはとても難しそうです。一律にライブはだめ、演劇はだめ、その期間もどれほど長引くかわからないとなると、協力してくれなくなりそうです。
嫌になって、言うことを聞かなくなりますよね。

ーー演劇でも映画でも周りと喋らずに、黙ってマスクをして鑑賞すれば感染する可能性が少ないならば、メリハリをつけて、「こういう注意をすれば、感染のリスクは少ないよ」ということを広報した方がいいのでは?
僕の友達に有名な指揮者がいるのですが、「クラシックで感染が広がるはずないだろう」と言われましたね。
ーー基本的に黙っていますよね。拍手だけして「ブラボー!」禁止にすればいい。
そうなんです。個別の判断をしなければいけないのですが、人々は個別の判断をなかなかできないし、行政が判断をすると一括りになります。もし、「クラシックコンサートはいい」としたら、「何人規模ならいいのですか?」などと細かい問い合わせが増えるでしょう。キリがありません。
ーーそして万が一、1人でも感染者が出たら、主催者の責任問題を言い出すでしょうね。
そうです。みんなから袋だたきになりかねないですよね。
ーーリスクはゼロにできないけれども、咳や熱のある人は参加しないでもらい、それぞれが感染防止策をとって、個別にできる工夫をして開催するなら開催すればいいし、そこは個別に判断すればいいわけですよね。
それが理想ですね。わが国は残念ながら、お上がお墨付きをくれないと動かないということがしばしばみられる社会です。「行政、何やっているんだ!」と批判しながら、行政の言うことを聞きたい国民性なのかなとも思います。
あえて安倍首相の肩を持つならば、彼は「やれ」とは一言も言っていないのです。「やってほしい」と言っているだけです。しかしそうなると、法律の強化という、厄介な問題も出てきます
求められるのはパーフェクト でもリスクゼロはあり得ない
ーー 2時間一緒に時を過ごすかもしれないけれど、ほぼ黙って座っているような、演劇や映画館は感染のリスクは少ないと考えていいですか?
そのようなエビデンス(根拠)はどこにもないわけです。コロナウイルスに感染した人を座らせておいて、数メートルずつ離して座らせ、この距離まではうつったと確認することができれば、エビデンスを作ることもできるでしょう。
しかしそれはいまないわけですから、経験則とこれまでのデータから推測するしかない。
無症状の人は感染力が低いでしょうけれど、無症状の患者からうつったという論文もパラパラ出てきているのは事実です。
だから、感染ゼロ、というパーフェクトをめざした判断は、残念ながらできません。専門家会議でも「パーフェクトはできない」と言っていますし、みんなもそれを知ってほしいのですが、求められるのはパーフェクトです。
例えば、「美術鑑賞」はどうかと言われれば、イメージするのは観客がまばらな美術館に行って、ゆっくり観てということですね。ところが、ロダン展などをやれば、人が殺到します。そうなれば、美術鑑賞も「マス・ギャザリング(大勢の集まり)」になるのです。
ーー一律には言えないですね。
だからあくまで「例えば」なんですね。具体的な判断基準を示せと言われても、限りがない。
ーーしかし、これから流行が長引いて、あちこちで感染者が出てきたら、ずっと文化活動をストップするわけにもいきません。どこかで個別判断に切り替えざるを得ないですね。
そうなったら、「封じ込め」ではなくて、流行を前提として「流行抑制」の方針に舵を切らなくてはいけない。その時には症状が軽い人には目をつぶるという覚悟が社会になくてはなりません。まだそういう覚悟はできていないと思います。
「1〜2週間」が長引いていないか? 対策の検証は?
ーーその切り替えを考える時に、「1〜2週間」ということで行動制限をしたならば、期間を終えた時に検証が必要です。実際には2月24日の見解でも「1〜2週間」と打ち出して、3月2日の見解でもまた「1〜2週間」と言っています。これではズルズル引きずっていくのではないかという疑問が湧きます。
でも2週間後にただちにその効果は出ないのです。
あとでわかる発症日を見れば2週間後に、対策の効果が出てきたというよいうなことはわかるかもしれませんが、感染が確定するのは、発症した後になるので、確定した患者の報告数は発症日とタイムラグがあります。だから、もう少しあとまで増え続けることになるでしょう。
そうなると、もし対策に効果が出ていたとしても、2週間目の時に報告数を見て「増えているじゃないか!」と言われる可能性があるのです。
ーー期間が終わった時に数字を見ても、効果は判断できないということですね。
3週間目で判断することはあるかもしれないですね。一般の人は「1〜2週間」と言えば、制限が長くとも2週間で終わると思うでしょうね。そのあとはカラオケに行って騒げると思っているかもしれませんね。
ーー専門家会議が3〜4週目かどこかで評価をするのですね。
しないといけないでしょうね。期間を書いて対策を打ち出した以上は。
ーー一斉休校の評価も、3月いっぱいまで休んだとして、4月にまた散発的に流行が見られたとしたら、じゃあ状況が変わっていないから休校期間をまた延ばしましょうとなるのでしょうか。
僕が常に言っているのは、病気の重症度が変わるかどうかということも考慮に入れるべき、ということです。
少なくとも日本の致死率は中国以下にはなるはずですから、致死率が1%を割るようであるなら、そんな病気で全国的に休校、あるいは社会生活の極端な制限というのは、なくなってもよいと思います。
もちろん、放っておいてよいということではなく、基本的な予防策や、何よりも重症者・死亡者を一人でも少なくする努力は必要です。
特別措置法を通すのは僕は今でも反対しています。最悪のシナリオに対する備えは必要ですが、これぐらいのレベルで人権をかなり制限し、社会機能を低下させかねない特措法を持ち出す必要はないと思うからです。

止めどきをなぜ決めておかないのか?
ーー一斉休校はどういう根拠で行い、いつ解除するか決めず、説明もしないまま始めたことが批判されています。
全くその通りです。学級閉鎖、休校に関する意見交換はやっています。しかし、今一斉休校をやることが必要であるという提言はしていません。また何かやるときには「いつそれを止めるか」ということを考えておかなくてはいけないと思います。
ーーあのように厳しい制限をかける時は、解除する時の基準は事前に決めておかなければならないわけですね。
僕が患者さんを受け持ちながら研修生の指導などにあたっていた時は、若い医師たちに、「薬を出す時は、やめるのはいつか自分で決めてから始めろ」と指導していました。
それを決めておかないと、目標が見えないからズルズル続けてしまいかねない。あるいは変更するタイミングを見失ったりします。これは感染症対策とも共通のことだと思います。
ーー安倍首相の会見はご覧になったと思います。一斉休校の根拠も、止める時の判断基準も説明がなかったと批判されています。

おそらく安倍首相は3月末には流行は収まってくるという期待があるのでしょうね。一般の人の期待と同じでしょう。どのように国民に説明すべきかもあらかじめ議論はされていないのではないでしょうか。
政治家は当然感染症や医学については素人です。だからこそ素人は専門家の意見に耳を傾けて、その上で専門家にはできない政治判断をしていただければと思います。
医学だけで物事が決まるわけではもちろんありません。だからこそ社会学や経済学の専門家やリスクコミュニケーションの専門家にも聞けばいい。そういう専門家の意見に耳を傾けてこそ、国民に納得される政策が打ち出せると思います。

今後の対策は?


ーー今後どんな対策を取るべきだと思いますか?
専門家会議としてではなく、僕個人の考えでは、封じ込めがうまくいけば何よりですが、うまくいかなかった時に今の対策を続けるのは実行上無理です。

軽症者を無視するわけではないですが、軽症になり得る若者は、暮らしの中で人にうつさない配慮は続けながらも、制限なく生活してほしいです。

とにかく重症な人を優先的に拾い上げる。きちんと治療する。わからない病気には粘りが大事で、粘れば新しい検査法も、治療法も出てきますし、ワクチンも出てくるかもしれない。それまでは重症の人に対して最善の努力をすることです。

検査体制も医師が必要だと判断した人が受けられない今の状態がいいとは思えませんが、無症状や軽症者の人をすべて検査で拾い上げる必要はありません。インフルエンザをやや上回る警戒は続けながら、軽くて済む人は怯えずに普通の生活をしてもらいたいです。

ーー軽症者でも入院させるというのも切り替えなくてはいけませんね。

感染者全てを入院させることはやめなくてはいけません。感染は広がっていることを前提にし、日本人の大好きな「徹底的にやる」という発想で100%封じ込めるという考えはどこかで切り替えた方がいい。

決して諦めるというわけではなく、軽い人は軽いなりの生活を送り、症状のある人は落ち着いて治療できる。具合が悪くなりそうな人は普通の生活を切り替えて、医療の中で救うようにしなければなりません。


ーー専門家の活用は?

ここまで来ると医学だけでなく、社会的な現象になっています。そういう専門家も入った組織を作り、広く意見を聞くべきでしょう。

ーーメディアへの注文はありますか?

ちゃんとしたトレーニングを受けているプロはいいのですが、素人の発想の質問を繰り返しする記者も目立ちます。目線が一般の人で、ということはもちろん大切です。

しかし「私たちはこれだけ心配だ! 何をしてくれるのか? 悪いのは誰だ?」と一般の人と同じようにパニックになっています。メディアも勉強して、今後どうしていくべきか考えながら専門家から良い答えを引き出してほしいです。

テレビのワイドショーでも、専門家を名乗る人が自分の思い込みを話して国立感染症研究所などを批判して、混乱させていますね。そういう人を繰り返し呼ぶメディアは不安を煽っていることを自覚してほしい。自分たちの社会に対する役割を考えてほしいです。

ーー不安でパニックになっている人も多い一般市民へのメッセージもお願いします。

トイレットペーパー騒動も、身の回りの不安を掻き立てられているからでしょうね。人の不安をあえて掻き立てる行動は、メディアもそうですし、一般の人も慎んでほしいです。Twitterなどで瞬間的にセンセーショナルな情報に反応せず、拡散する前に一呼吸考えてほしい。

「冷静に」と人々に呼びかけている側が、一番冷静ではないようにも見えます。いろんなものごとを決断して、国を率いる人たちがまず落ち着いて「正当に怖がる」ようになってほしいです。


新型コロナウイルス どれぐらい警戒したらいいの 感染症のスペシャリストに聞きました 2020/01/30

 中国を中心に感染者が急増し、日本でも30日午前現在で、無症状2人も含むと11人の感染者が確認された新型コロナウイルス。人から人へと感染することもわかり、不安を抱く人が増えていますが、実際のところ、どれぐらい警戒すべき感染症なのでしょうか?感染症のスペシャリストで、2009年の新型インフルエンザ発生時には国の対策を検討する委員会の副委員長も務めた川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦さんに、お話を伺いました。※インタビューは1月29日夜に行われ、話した内容はその時点の情報に基づいています。

新型コロナウイルス  どれぐらい大変?

ーーそもそもコロナウイルスというのはどんなウイルスなのでしょう?

 人に感染するコロナウイルスはこれまで6種類あることが知られていて、そのうち4つは軽い鼻風邪の原因となります。風邪の10〜15%はこのコロナウイルス が原因とされています。あとの2つが2002年から03年にかけて中国・広東省から発生して流行がアジアを中心にして世界に拡大した「SARS(重症急性呼吸器症候群)」と2012年以降中東を中心に流行が続いている「MERS(中東呼吸器症候群)」 です。この2つと常に比較されて、今回の新型コロナウイルスも恐れられていますね。

ーー感染の広がりの速さや重症度、致死率などを考えると、SARSやMERSなど過去の新興感染症と比べて、今回のコロナウイルスはどれほど警戒すべきものなのでしょうか?

 最近、人類が経験した新興感染症で言えば、新型インフルエンザ・パンデミック(世界的な大流行)は最初にメキシコの一地方都市で重症患者が見つかって大騒ぎになり、ほどなくアメリカでも重症患者が見つかりました。それが2009年の4月下旬頃です。日本で患者が確認されたのは5月の連休明けで、その後、あっという間に世界各地で患者発生が確認されるようになりました。それに比べると、今回はまだ1ヶ月しか経っていませんが、患者の発生は海外では少ない。まだ、そんなに感染のスピード感はない印象です。しかし、人から人への感染を繰り返すうちに、ウイルスが人に感染しやすい形に変異する可能性はあります。そうなった場合、一気に感染が広がる可能性も考えておかなければならないでしょう。2009年の新型インフルエンザの場合は、ウイルスの検査ができるようになると、実は感染者が多くいても軽症で自然に治っている人も多いことがわかりました。つまり、「感染しやすい=重症になりやすい」ではないのです。新型コロナウイルスは、感染者が急増して死者も増えているのは確かですが、感染者の中での亡くなられた方は何人なのかを把握し、その割合(致死率)などを考えることがとても重要です。致死率は現段階で、2〜3%です。まだわかったばかりのウイルスで、軽い人も全て把握することはできませんから、重症度についてはもう少し疫学調査が進むのを待たなくてはいけません。

人の動きも変化 様々な要素が感染症のリスクを左右

 流行の中心となっている中国の数字だけ見ると、SARSは5327人、今回の新型コロナウイルスは29日時点で5974人が報告され、既に、SARSよりも患者が増えていることは間違いないです。SARSの時には中国の人が今ほどほど海外旅行に行くこともありませんでした。中国が経済発展して、人と物の動きは過去と状況は大きく変わっています。アジアの中で感染者が増えているのは、中国からの人の動きの多さが影響しているのは間違いない。もっとも楽観的なシナリオは、SARSのように一気に患者発生をおこしたけれど、患者の発生もウイルスも消え去ってしまう、というものです。変異を繰り返して、動物の世界にウイルスが戻っていったのかもしれません。一番悲観的なシナリオは、爆発的に広がる上に重症度も高くなることです。MERSはSARSより重症度は高く、致死率は30%以上でした。その一方で、MERSの発生はほぼ中東に留まり、韓国での流行はありましたが、日本での患者発生はありませんでした。また、SARSは人への感染源となったハクビシンとの接触を離すことができましたが、MERSは中東の人の生活に根ざしたラクダですから、感染源を避けることができず、感染は持続していることになります。感染症の広がりや死亡率のリスクは様々な要素に左右され、過去の感染症とは人の動きなども著しく変わっているので、現時点では今後どうなるか、まだ見通しがつかないというのが正直なところです。

インフルエンザや麻疹のリスクに無頓着なのはなぜ?

ーーインフルエンザや麻疹なども人が死ぬこともある感染症です。それらの感染症と比べたら、私たちはどれぐらい怖がるべきなのでしょう。

 致死率から言えば、自然に放っておいたら麻疹(はしか)も数パーセントの致死率です。でも麻疹はワクチンがあるからほとんど感染しないですむようになっています。インフルエンザは毎シーズン1万人程度の死亡があると言われています。新型コロナウイルスは恐れるのに、現状、感染する可能性がより高い麻疹や風しん、インフルエンザのワクチンを避ける人もいる。新型コロナウイルスをこれほど怖がっているにもかかわらず、いまだに麻疹や風疹のワクチンをうたない人がいるのは不思議なことです。防ぐ手段があるのに...です。今、日本で問題となっている風疹の予防接種も強くお勧めしていますが、多くの大人の男性にあまり関心をもたれてないようです。妊婦に感染したら、おなかの赤ちゃんに重大な影響を及ぼすにもかかわらず、です。日本では、2012〜13年の流行で目や耳や心臓に障害をもたらす先天性風しん症候群の赤ちゃんが45人も生まれました。その流行のもとになっているおじさんたちが、MR(麻疹・風疹)ワクチンをうたずに「コロナウイルス大変だ!ワクチンはないのか!」と言っているわけです。おかしな話です。

ーー怖がり方がいびつな印象を受けるのですね。

 新興感染症の報道は常にセンセーショナルですからね。毎日報道されるのは、SARSやMERSの時と同じですが、それに惑わされて、足元にあるリスクを忘れてはいけません。今、日本で普通に歩いている人は、新型コロナウイルスにかかる心配よりも、インフルエンザにかかって会社を休む可能性の方がずっと高いわけです。それでもワクチンをうたない人はいます。

死亡のリスクは何で上がる?

ーー死者の報告も29日時点で132人(死者は中国のみ)と増えていますが、多くが高齢者で、糖尿病などの基礎疾患を持っている人が多いとされています。

 これまでの報告ではそう言われていますね。でも、その後、感染者も死者も増え、新たな死者がどういう人だったのかという情報はまだ入ってこない。現在どのような人が亡くなっているのかはわかりません。また、最初のうちは丁寧に病院で診ていたと思いますが、患者が殺到している映像を見ると、あの中で感染している可能性もあります。それに、経済格差の問題で、普段医療機関を受診できない人もかかっている可能性があります。感染症は、都心部で生活に余裕のある人だけを選んでかかるものではありません。

ーー治療法は現時点でなく、対症療法しかありませんが、中国では早くもHIV治療薬「カレトラ」の効果を試す臨床試験も始まりました。

 トライしなければデータは出ないということで始めたのでしょう。結果を注目していこうと思います。

ヒト-ヒト感染の疑いも 「チェーンが追える」段階

ーー日本では28日までに6人の感染者が報告され、6人目は武漢市への滞在歴がなく、武漢から来た観光客を乗せたバスの運転手でした(インタビュー後、さらに感染者は増えて11人に。うち一人は同じバスのバスガイドの女性)。人から人への感染が疑われ、日本も新たな段階に入ったと言われています。

 濃厚接触の可能性は間違いないですね。空気感染するはしかのように、コンビニに行っただけで感染したというのとは違います。バスは閉鎖的な空間ですからかなり濃厚な接触をしていたのでしょう。ただ、感染源となった方と座っているところが近いか、バスの中以外でも行動を共にしたかなども、感染力の度合いを知る参考になると思います。

ーー「濃厚接触」とよく言われますが、その定義は?

 数字での定義はありません。また疾患によって、定義が変わることがあります。ハグは濃厚接触と考えてもいいと思いますが、1回軽いあいさつで握手したぐらいではそうは言わないでしょうね。触れていないとしても、このインタビューがこの部屋の中で半日続けば濃厚接触だと思います。同居している方の場合などは、まったく生活の場が切り離されていない限りは濃厚接触と考えても良いと思います。強い飛沫感染であれば、カウンターで接客した場合も濃厚接触に入ってくるでしょう。様々な状況の中で感染のリスクが高まるような近距離とある程度の時間の接触を「濃厚接触」と言います。春節の大型連休で日本を訪れた中国人観光客と観光バス(新型コロナウイルスとは関係ありません)。武漢市からのツアー客を乗せたバスの運転手やバスガイドの感染が確認されている まだ乗客の中に感染者がいたかどうかはわかっていませんが、新幹線でもバスでもあの座席の形態は、向き合って座るスタイルよりうつりにくいのです。ゴホンとしても、飛沫がかかるのは後頭部ですから。

ーー今回はヒト-ヒト感染ですが、誰からうつったのか追跡調査ができるというのが少し安心できるポイントですね。

 あのお客さんたちは中国に帰ったそうですが、そこを追えればとても重要な情報となります。ヒト-ヒト感染のルートがまだ追えていることを、感染症の世界では「チェーン(鎖)が追える」と言います。鎖がつながっている段階では感染が爆発的に膨らむ可能性はまだ薄いということです。この鎖のつながりを追うのが難しくなったなら、もう見えないところに患者がたくさんいるということです。いまのところまだそこまでには至っていません。

日本での対応は適切か?

ーー29日朝に武漢市に滞在していた日本人の一陣が政府のチャーター機で帰国しました。症状の出ている4人が入院、他の人たちは症状がなくても全員ウイルス検査をしているようです。この対応は適切ですか?

 まず、武漢市に迎えに行くことは絶対にやるべきですね。国は武漢のある湖北省について渡航中止勧告を出し、国が行くなと禁じれば帰り便もなくなるわけですから。

流行地に残っている人を迎えに行くかどうかは新型インフルエンザの時もかなり議論したのですが、その議論が今回、生かされたのではないでしょうか。
帰ってきた人全員がウイルス検査をするとは知りませんでしたが、その中に感染者がいたならば、症状のレベルや感染力などの大きなヒントになりますね。
少しやり過ぎという印象もありますが、医学的な正しさだけでなく、安心感を与えるという意味もあるのでしょう。


 帰国者は全員、2週間、健康状態を観察するというのも、もし発症した場合は早く対応するという意味でも適切だと思います。ただ、このような「念のため」の対策が行き過ぎてしまうと、「お前の父さん、武漢から帰ってきたんだからお前も俺に近づくな」という偏見やいじめを社会に生み出しかねません。周りにいる人も温かい目で見守るべきでしょう。

ーー流行の封じ込めは可能なのでしょうか?

 感染症に関して完全な封じ込めは無理でしょうね。ただ、重症者を小規模で抑える、流行のレベルを下げることは可能かもしれません。早く重症者を見つけることが鍵を握ります。新型インフルエンザは普通の迅速診断キットが応用できましたが、今回のコロナウイルスはそのようなツールはまだありません。新型インフルエンザの対策と同じスタイルで、軽症者も全て検査して封じ込めようとすれば、ものすごくマンパワーを使って、お金を使うことになり、非現実的です。軽い人を警戒するために、指定医療機関は長蛇の列ができ、患者さんも医療従事者も疲弊します。そうなると肝心の重症者を見落とすことにもなりかねず、軽い人や症状のない人をしらみつぶしに調べようとするのは、マイナス要素が大きくなります。

何を重視して対策をうつべきか

 スーパースプレッダー(通常以上に感染力が高く、感染を拡大させる人)という言葉が今回よく使われていますね。SARS以来、使われるようになった言葉ですが、症状があり、重症な人が感染力が強いのは事実です。スーパースプレッダーはその感染力がさらに強く、1人から何十人にも感染を広げる場合のことを言います。重症な人は専門の医療機関で早く治療を受けていただくことが、その人のためになるのはもちろん、他の人にうつさないという意味で人のためにもなります。

ーー何を重視するかで政策は変わりますね。

 私ならば何を重視するかと言えば、重症者の早期発見と早期治療、それによる早期の拡大予防です。軽い人も症状のない人もすべからく心配だから検査をしていくということはやめた方がいい。武漢から一時的に帰ってこられた人は限られているから必要でしょうけれども、感染者の出た国から帰った人をすべからく、というのは真の重症者を早期に診ることができなくなる可能性を高めます。

ーー10日程度と言われている潜伏期間中も感染させる可能性があるという話が出ています。

 潜伏期間中に感染させるというエビデンスはまだ出ていないです。またその時の感染力の強さについても不明です。それがないうちに、メディア言葉で「歩く感染源」だとか、不安を煽る言葉を使うのはやめてほしいですね。
経験則ですが、呼吸器感染症は、症状がある時に感染力が強くなります。SARSの経験でも、潜伏期間と非常に軽い期間はほとんどうつしていないことがわかっています。いずれも肺炎になってからうつし始める。だから重症者の早期発見が鍵を握るんです。この法則が今回のコロナウイルスに当てはまるかはまだわかりません。でもこういう初期のわからない時期は経験則の応用が必要かと思います。

デマにはどう対処する?

ーー「武漢の研究所から漏れた生物兵器のウイルスではないか」「致死率15%の最凶ウイルス」など、デマ情報が拡散され始めています。新興感染症では起こりがちですね。

 新型インフルエンザの時もそうでしたが、SARSの時代と比べて、誰もが自由に発信するようになったことも原因でしょう。SARSの時はSNSは普及していなかったです。「情報をつかむのはSNSの匿名の発信ではなく、信頼できる公的機関から」と訴える岡部さん

ーー我々メディアもデマ打ち消しをしているのですが、先生方のような専門家が素早く対応してくださるとありがたいです。

 私はTwitterをやっていないんです。忙しい時に色々な雑音が入ってきて、それに返事を書いていると、大切な仕事ができなくなりますから。新型コロナウイルスが注目され始めた頃、あるメディアの取材に、「正しい情報をつかんでください」と書いてもらったんです。すると、「正しい情報ってどこにあるのかわからない」という批判がありました。正しい情報というのは、やはり公的な機関が責任をもって出している情報です。日本なら、厚生労働省や国立感染症研究所ですね。時間的には少し遅れるかもしれませんが、そこがより正しい情報を出すはずです。逆に一番危ないのは、無責任に匿名でSNSで流されているような情報です。責任の所在や出典をはっきりさせずに書いている情報はまず信じない方がいい。

ーー厚労省も一般向けの「新型コロナウイルスに関するQ&A」のページを作りましたね。

 これも以前と比べたらかなり早くなりました。デマは専門家がなんとか打ち消したいところですが、デマにいちいち応対していたら何もできなくなる。難しいところです。

WHOの「緊急事態宣言」見送りは?

ーーWHOが「緊急事態宣言」を見送ったのは妥当ですか?

 僕はあの時点では妥当だと思いました。あの宣言には具体的な基準があるわけではありません。感染者何人とか何カ国に広がったとか、いろんな要素で総合的に判断するいい意味での曖昧さがある。今回の場合は、23日の時点でウイルスの情報は早く公開されましたが、臨床的な疫学的情報は少なく、人から人に広がっていることは確認されていませんでしたし、限られた人の発生はありますが、中国にほとんど留まっている。情報が足りない、という言い方をして、中国当局にもっと情報を出すように促した側面もあるでしょうね。その結果として、中国から迅速に情報が出始めた面も確かにあります。もしあの時点で宣言を出していたら、一方では不安感が先行してパニックに近い状況となった可能性もあります。その点では、少しクッションを置いたのかなと思います。

ーー「緊急事態宣言」が出ると、国内の警戒度も上がるのでしょうか?

 そうでしょうけれども、日本の方が先に警戒度を上げましたね。

指定感染症」決定、早かった?

ーー29日に政府が新型コロナウイルスを「指定感染症」「検疫感染症」にしたことですね。このタイミングはいかがでしたか?

 僕はもう少し待ってもよかったのではないかと思いました。しかし指定することによるメリットもあるので、法に基づいて色々なことができるようにしたということになると思います。患者を場合によっては、法に基づいて入院・隔離することができるようになって、ご本人の早期治療と、家族友人を含めて周囲の人への感染拡大を防ぐことができます。病院の方も、指定感染症を診るように定められた「感染症指定医療機関」が重症者を集約しやすくなります。入院費用も公費負担になるので、患者はお金の心配をせずに済みます。しかし、デメリットもあります。心配な人も怪しげな人も全て、感染症指定医療機関に行ってしまい、指定医療機関に長蛇の列といったことへの対策も必要になるでしょう。

ーー指定医療機関が過重負担になる可能性がありますね。

 そうです。それと共に、人々がなかなかスムーズに医療を受けられなくなり、パニックが起こる可能性もあります。それを考えると個人的にはタイミングが早かったかなとも思います。

一般の人がなすべき対策は?

ーー現段階では咳やくしゃみで飛んだ飛沫が体内に入ることによる「飛沫感染」か、感染者のウイルスに触れてその手から体内に入る「接触感染」が言われています。空気中にウイルスが漂う「空気感染」の可能性はないのですか?

 今、入ってきている情報ではその可能性は少ないですね。日本で人から感染した可能性のある人が出ましたが、感染者があちこちで広がっているわけではなく、空気感染があったとしても可能性は低いです。重症入院患者さんを引き受ける医療機関は空気感染の可能性まで考えて対策を取ることになるでしょうが、一般の人は飛沫と接触感染を考えた日常的な対策をすればいいと思います。

ーー接触感染というのは目からも入るのですか?

 一応粘膜は全て入る可能性を考えた方がいいですね。目も鼻も口も可能性はあります。

ーー咳やくしゃみによる飛沫はどれぐらい飛ぶのですか?

 1m程度といわれていますが、2m、3m飛ぶこともあるようです。常識的に使える範囲で言えば1、2m。ですから咳をしている人はマスクを、マスクがなければ、肘の内側で口を覆う咳エチケットをお願いしたいですね。

ーーこまめな手洗いと咳エチケットが言われていますね。マスクはどうですか?

 効果が高いのは、症状がある人が他の人に咳やくしゃみを飛ばさないようにする「優しさのマスク」です。ある程度飛沫の侵入を防げるなら、マスクをつけるのは良いことだと思いますが、パーフェクトな方法に近いと思うと過信になると思います。

ーー手洗いは効果があるのですよね。

 その通りです。今は新型コロナウイルスよりもインフルエンザにかかるチャンスの方がずっと高いわけです。インフルエンザの時の注意も、マスク、咳エチケット、手洗いです。インフルエンザの注意は、今回の新型コロナウイルスも感染症対策の基本としては同じなので、インフルエンザと同様の対策をお忘れなく、というところです。ですから、この日常的な予防策をしていれば、新型コロナウイルスよりもむしろ今、もっとかかりやすいインフルエンザの防御にもなりますということです。もう一つ注意してもらいたいのは、糖尿病など慢性の病気をほったらかしにしている人。この人たちは重症化のリスクが高いですから、早く治療して、早く調子をよくした方がいいです。また、高齢者に入っている人も重症化のリスクがありますから、人混みになるべく出ないとか何気ない注意はしてもらった方が全体のリスクは下がります。

ーー妊婦さんはどうですか?

 それはわからないですが、妊婦さんは抵抗力も落ちていますし、胎児も守らなくてはいけませんから、一般の感染症同様、人混みに出ず、こまめに手洗いした方がいいでしょう。ただ、特別心配して全く出歩かない方がいいというフェーズではありません。
季節性のインフルエンザと同じような注意をしていただければ十分でしょうね。

ーーあとは通常の栄養とか睡眠とかですね。

よく寝てね、ちゃんとバランスの良い食事をとってね、ということですよね。

どんな状態なら受診すべき?

ーー受診した方がいい人はどんな人か教えてください。

 やはり流行地、武漢市には限りませんが、ある程度流行が広がっているところに行ったことのある人で、症状が出ている人ですね。一人か数人、患者が出た国に行ったとしても、直ちに心配する必要はないでしょう。しかし症状がある場合には、いろいろな病気である可能性はあるので、できればかかりつけの先生などに相談されるといいと思います

ーーどんな症状に注意すべきですか?

 やはり熱、咳です。今回のコロナウイルスはわりに乾いた咳が出ると言われますが、湿った咳は関係ないかと言われたらそれはわからないです。呼吸数が早い、呼吸が苦しいなども、呼吸器感染として注意すべき症状です。また、SARSなどでは下痢を起こすことがありました。今回の重症者の内訳を見るといまのところ下痢を起こした人は少ないのですが、一応、下痢は注意した方がいいでしょうね。

ーー熱や咳はインフルエンザでも出る症状ですね。どれぐらいだったら受診を考えた方がいいでしょう。

 高熱の目安は38度か38度5分以上ですね。それは繰り返しになりますが、コロナウイルスでないとしても、警戒すべき症状です。インフルエンザと同じような注意をしてくださいということです。

ーー肺炎の疑いがあったら受診はすべきですよね。

 肺炎の疑いは咳が強い、咳で胸が痛む、呼吸が速い、呼吸が荒い。それはコロナに限らず、マイコプラズマであっても、呼吸器感染症の注意と共通ですね。

ーー受診の時はいきなり行かない方がいいですよね?

 まずは電話でしょうね。心配なら、まずかかりつけの先生や保健所に電話したらどうでしょうか?

メディアへの注文

ーーメディアが気をつけた方がいいことはありますか?

 新しい感染症の場合、関心も高いですし、注意喚起するのは当然だと思うのですが、「歩く感染源」とかセンセーショナルな言葉を使って不安を煽るのはやめてほしいです。3.11の津波の時は、ある週刊誌の見出しで、「ヘドロは感染症の温床だ」というようなことが書かれていました。確かにそこには病原体はあるかもしれませんが、ヘドロが原因で感染症が広がったという事実はなかったのです。それにも関わらず、恐怖感を与えている。ちゃんと掃除して消毒した方がいいと思って良かれと思って書いたのかもしれませんが、そういう表現は、人にグサッと刺さってパニックを起こさせかねないので気をつけてほしいです。最近、川崎の記者向けに勉強会を開いたり、市の幹部向けの勉強会を開いたりしました。僕ら専門家もメディアに対して正確な情報を伝える努力をすべきでしょうね。正確な情報が国民に広がることが、感染症のパニックを防ぎ、不安の解消や冷静な行動に役立つと思います。

岡部信彦(おかべ・のぶひこ)】川崎市健康安全研究所所長
1971年、東京慈恵会医科大学卒業。同大小児科助手などを経て、1978〜80年、米国テネシー州バンダービルト大学小児科感染症研究室研究員。帰国後、国立小児病院感染科、神奈川県衛生看護専門学校付属病院小児科部長として勤務後、1991〜95年にWHO(世界保健機関)西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課長を務める。1995年、慈恵医大小児科助教授、97年に国立感染症研究所感染症情報センター室長、2000年、同研究所感染症情報センター長を経て、2012年、現職(当時は川崎市衛生研究所長)。
WHOでは、予防接種の安全性に関する国際諮問委員会(GACVS)委員、西太平洋地域事務局ポリオ根絶認定委員会議長などを務める。日本ワクチン学会理事長(平成29年12月まで)、日本ウイルス学会理事、アジア小児感染症学会常任委員など。

学校休校は専門家会議「完全スルー」で決まった、社会不安を生みかねない 2020.3.3 5:22

写真は岡部信彦(おかべ のぶひこ)氏ウッキペデイア
岡部信彦・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議委員・川崎市健康安全研究所長インタビュー ダイヤモンド編集部 鈴木洋子記者
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、突如として全国の学校の休校を要請した安倍晋三首相。2009年の新型インフルエンザ蔓延(まんえん)時に危機対策を率い、今回政府の専門家会議の一員にも加わる感染症と公衆衛生の専門家である岡部信彦・川崎市健康安全研究所長に、政府決定の評価と今後の対策の見通しについて聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
感染対策は専門家会議で決める仕組みになっていない
─安倍総理が3月2日からの全国の小学校・中学校・高校の休校を要請しました。これは政府のコロナウイルス専門家会議で検討された内容ですか。
そもそも諮問されておらず、こちらから提言もしていません。将来の可能性も含み議論したということすら、ない。政府は「専門家会議の答申を受けて方針を決めるルールにはなっていない」という言い分なのでしょうね。専門家がなんでも知っているわけではないけれど、医学的なことは相談してくれた方が向こうも楽じゃないかと思うんですけどね。
─いままではどんな話し合いをされていたのですか。だいたい、専門家会議が立ち上がったのもつい最近ですし、これまでも3回しか開催されていない。明日(29日)が4回目の開催ですね。僕は2009年の新型インフルエンザのときも専門家会議に入っていましたが、あれは比較的早く立ち上がって、さまざまな対策はそこで議論して決めることになっていました。今回はそうではない。2月24日に専門家会議が出した声明は、これからの行動計画についてかみ砕いたもので、あれが委員の共通の考え方です。その中で「不特定多数の見知らぬ人が、換気が悪い狭いところに長時間留まる、ということは感染リスクを高めるので控えてほしい」と言っています。大体想像がつきますよね。さらに、この対象となっているのは若者を含め大人の集団で、中でもハイリスクなのは高齢者である、特に先ほどの感染リスクの高い環境に病人が来てもらったら困るので、具合の悪い人はそういったところに来ないでほしい、というのが強調点です。そもそも、今回のような全国全学校閉鎖ということには、声明の中でも触れていないんです。(続きはwebページ参照のこと)

第11回 福岡伸一特別講義「生命とは何か」博士の異常な鼎談 ゲスト福岡伸一(分子生物学者)

福岡伸一(ふくおか しんいち、1959年9月29日-)
福岡伸一氏がいう。水道橋博士氏、宮崎哲弥氏の番組に呼ばれて話した。10年以上前に新型コロナウイルスが大流行したときのことであり新型コロナウイルス騒ぎへの警鐘となっている。国立感染症研究所感染症情報センターセンター長を歴任し、新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員である岡部信彦氏(日本の医師、現在川崎市健康安全研究所所長)は、2020年3月10日に開かれたプレスクラブ(日本記者クラブ)での講演などで、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザより少し害毒性が強い程度だと述べている。また指揮者の井上道義氏との対談では新型コロナウイルス感染症が政治的に利用されたと話す。
福岡伸一氏は水道橋博士氏、宮崎哲弥氏との鼎談のなかで次のように語る。
 新型インフルエンザ感染爆発について大事なことはある種の冷静さ、冷静な対応こそ大事だ。全てのウイルスは絶え間なく変化しているので押し寄せてくるウイルスは結局はどれもが全てが新型である。新型インフルエンザウイルスは豚由来なので少しは新しいかもしれない。全てのウイルスは新型なのだが感染力が強くて致死率が高いウイスルを新型と定義される。十分な体制が必要だ。毎年押し寄せる季節型のインフルエンザに沢山の人が感染して「沢山の人が亡くなる」。新型インフルエンザであっても季節型と同じように考えるべきだ。感染するということではいくら免疫があっても感染は成立してしまう。これが重症化するかどうかが免疫力です。これだけ人が右往左往している現代社会では感染を完全に止めることはできないことなのです。密集している社会だと感染は免れない。大事なことは何かというと重症化して亡くなる人をできるだけ最小化すること。重症化して亡くなる人を最小に抑えるために医療資源はこのために集中することが大事だ。感染を防止することにあまりにも極端な注意を向けられるとかえって死者を増やしてしまう。
2008年12月末までインターネット映像配信サイト・ミランカで配信されていた、『博士も知らないニッポンのウラ』を前身とする対談番組。通常の地上波テレビでは取り扱えない「際どい」内容を扱う。番組のスタイルや出演者、スタッフも殆ど前身の『ニッポンのウラ』を踏襲している。番組が終了する際には「また同じメンバーで同じ内容の番組をやりましょう」という挨拶が交わされるが、それが実現した例がないのがテレビ業界の常識であった。しかし当番組はそれが実現した希有な例であり、第1回冒頭でもホトの2人が「本当に珍しい」と語っていた。
福岡伸一(ふくおか しんいち、1959年9月29日-)ウィキペディア(Wikipedia)は、日本の生物学者。青山学院大学教授。ロックフェラー大学客員教授。専攻は分子生物学。農学博士(京都大学、1987年)。東京都出身。

前川喜平さんにきく 「緊急事態宣言下の学校と政治」 2020年4月8日収録 デモクラシータイムス2020/04/10アップ

前川喜平ウッキペディア
山岡淳一郎がゆく「ニッポンの崖っぷち」第六回。元文部科学事務次官・現代教育行政研究会代表の前川喜平さんと、緊急事態宣言下の学校と政治について語り合います。全国一斉休校の混乱、開校時期のずれと不平不満。安倍政権の国家主義的体質が教育に落とす影。難局のいま、学びの場に本当に必要なものは何か。ご覧ください。

2020-04-13-calmness-is-important-for-responding-to-virus-infection-explosion-by-shinichi-fukuoka

【資料】


新型コロナウイルス(COVID-19)WHO公式ページから
新型コロナウイルスで死亡した人は世界全体で276,815人(2020年5月10日時点)

ウイルス感染爆発対応は冷静さこそ大事だ

新型インフルエンザ薬タミフル誤計量と天秤の改善措置

新型コロナウイルスと肺炎疾患を考える

「日本は貿易立国ではない]輸出依存度は15.2%

日本は第3次産業に移行中。変化する産業・職業構造(総務省統計局が2005年国政調査もとにまとめた資料による)

新型コロナウイルスへの国と東京都の対応の是非


イナゴ捕りが金銭と引き換えられた途端に遊びは賃労働に転換する

白い雲と青い空と山と湖(凍結中)がある諏訪湖の風景

新型コロナウイルスと肺炎疾患を考える-その資料一覧 №2-

説明する児玉龍彦氏(東大先端研がん代謝PT)
児玉龍彦さん(東大先端研がん代謝PT)と金子勝さん(立教大特任教授)にうかがう最新の新型コロナ情報。なんと、日本人を含め東アジア沿岸部は、SARS以降に今回のウイルスに根幹の似たウイルスに暴露し免疫を持っている人が多いのかもしれないという仮説が出てきました。そして、ウイルスの特徴から感染後に重症化する人を見分けてケアし、軽症者の重症化を防ぐ手立ても見えてきました。そのような状況の中で、どうしたら感染を制御して社会生活・経済生活を再開できるのか、それを考えます。収録は、2020年5月16日(デモクラシータイムス)


新型コロナウイルス(COVID-19)WHO公式ページから
新型コロナウイルスで死亡した人は世界全体で276,815人(2020年5月10日時点)

ウイルス感染爆発対応は冷静さこそ大事だ

新型コロナウイルス感染症対策はコロナウイルスは重症者・死亡者をいかに抑えるかがポイント 日本記者クラブでの岡部信彦氏講演 2020年3月10日

学校休校は専門家会議「完全スルー」で決まった、社会不安を生みかねない 2020.3.3 5:22

第11回 福岡伸一特別講義「生命とは何か」博士の異常な鼎談 ゲスト福岡伸一(分子生物学者)

緊急対談「のんちゃんとコロナ」岡部信彦氏と指揮者の井上道義氏との対談 動画 2020/04/10(金)15:10~(2020.04.11アップ)

「日本でも欧米のような大流行が起きるの?」「大規模イベントどうする?」専門家会議が共有したかった危機感とは 2020/03/24

「流行の封じ込め」から「流行を前提とした対策」へ 専門家「切り替え時期を考えなくてはいけない」 2020/03/06

前川喜平さんにきく 「緊急事態宣言下の学校と政治」 2020年4月8日収録 デモクラシータイムス2020/04/10アップ

新型コロナウイルス どれぐらい警戒したらいいの 感染症のスペシャリストに聞きました 2020/01/30


新型コロナウイルス。電子顕微鏡撮影の写真

(タイトル)

新型コロナウイルスへの国と東京都の対応の是非

新型コロナウイルス感染症で体温計が市場から消えた

新型インフルエンザ薬タミフル誤計量と天秤の改善措置

新型コロナウイルスと肺炎疾患を考える

滋賀県計量協会の平成32年新春賀詞交歓会 2020年1月24日(金)開かれる

計量計測関係の2019年新年会関係の諸行事。

川崎市計量協会2019年初春懇親会開く1月22日、川崎駅前の煌蘭で
「大変革時代における川崎の産業まちづくり」(講師は前川崎市副市長三浦淳氏)を聴く

川崎市の産業と経済と人の生活を知る(横田俊英)
副題「大変革時代における川崎の産業まちづくり」(講師は川崎市産業振興財団理事長三浦淳氏・前川崎市副市長)講演の内容と聴いた印象。


静岡県計量協会2019年(平成31年)新年情報交換会1月17日(木)開かれる

「計量団体・業界・機関合同賀詞交歓会」が1月9日、東京都千代田区のグランドアーク半蔵門で開く。

滋賀県計量協会の平成31年新春賀詞交歓会 2019年1月16日(水)開かれる

京都府計量協会の平成31年新年交歓会 2019年1月9日(水)開かれる

「計量計測データバンク」サイトマップ
measure and measurement data bank of saite map