計量法の解説
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計量法の解説- 計量法の構造と機能(目的)-(1) 筆者 高原隆
計量法の解説- 計量法の構造と機能(目的)-(1) 筆者 高原隆
計量法の解説- 計量法の構造と機能(目的)-(目次) 筆者 高原隆
写真はガソリン計量器
計量法の解説- 計量法の構造と機能(目的)-(1) 筆者 高原隆
筆者は計量行政職員であり現職時に作成した文章です。その後に計量法令は変更になっており、変更のある部分には編集部で注意書きをしております。元になっている文章は 計量計測データバンク「計量法の読み方」 ですので、本文に疑問がある場合には 「計量法の読み方」 を開いて確かめてください。この文章は計量法を理解するための古典ともいえる内容になっております。なお 「計量法の読み方」 が編集の都合によってPGFファイルですので、そのhtlm版として、本稿を作成いたしました。新聞紙面と併せてご利用ください。また経済産業省の穂オームページに掲載の次のページ計量制度の概要(METI/経済産業省)などで内容を確認してください。「計量法の読み方」(https://www.keiryou-keisoku.co.jp/yomikata/ver.4-101022/yomikata-zenfile20170421.pdf)(計量計測データバンク編集部)
(見出し)
計量法の解説- 計量法の構造と機能(目的)-筆者 高原隆
(本文)
はじめに----------3
1、 計量法の目的----------4
1-1、計量法の目的とは----------4
1-2、計量法の目的と諸規定----------4
1-3、明示されていない目的----------5
2、定義等----------6
2-1、「計量」と「計量単位」----------6
2-2、「取引」及び「証明」----------7
2-3、「計量器」と「特定計量器」----------10
2-4、製造、改造、修理----------14
2-5、計量器の校正、標準物質、標準物質の値付け----------15
3、計量単位----------18
3-1、メートル条約----------18
3-2、SI単位----------20
3-3、法定計量単位----------22
3-4、非法定計量単位に関する規制----------25
4、適正な計量の実施----------37
4-1、正確な計量----------37
4-2、商品の販売に係る計量----------39
4-3、計量器等の使用----------46
5、定期検査----------53
5-1、定期検査制度----------53
5-2、指定定期検査機関----------69
6、正確な特定計量器等の供給----------81
6-1、正確な計量器の供給----------81
6-2、製造----------82
6-3、修理----------87
6-4、販売----------93
6-5、家庭用特定計量器----------96
6-6、譲渡等の制限----------100
6-7、特殊容器----------101
7、検定等----------110
7-1、検定----------110
7-2、型式承認----------136
7-3、指定製造事業者----------149
7-4、基準器検査----------160
7-5、指定検定機関----------177
8、計量証明の事業----------186
8-1、計量証明事業者制度とは----------186
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8-2、計量証明事業者制度----------188
8-3、計量証明検査----------202
8-4、特定計量証明事業者制度----------210
9、適正な計量管理----------227
9-1、計量士----------227
9-2、適正計量管理事業所----------238
10、計量器の校正等----------247
10-1、トレーサビリティ制度(JCSS)----------247
10-2、公的な計量標準の設定と供給----------254
10-3、民間の計量標準の設定と供給(校正事業者登録制度)----------263
10、雑則----------274
11-1、報告----------274
11-2、立入検査----------278
11-3、計量行政審議会----------287
11-4、地方分権改正----------292
11-5、行政手続と不服申立て----------305
11-6、中央省庁再編(中央省庁等改革)に伴う改正----------313
11-7、その他----------317
-2-
計量法の解説
はじめに
計量法を理解するということは、計量法の正しい読み方を理解することであり、読み方によって解釈も定まる。しかし、計量法の正しい読み方を理解している人は、極めて少ないのが実情である。これについては、以下のようなことが理由として考えられる。
第一として、関係政省令等を含めて法令条文の総量が膨大であること、制度が複雑で法律の全体像が分かり難いということが挙げられる。これについては、計量法の歴史が古く、後から後からいくつもの制度を追加してきたため、その歴史の積み重ねにより膨大な量になってきたためである。そして、全体量が多くなると、どこが頭でどこが尻尾か直には見つけられないということが多くなる。
第二として、法条文間の絡みや政省令等への委任事項等が多く、政省令や告示等まで読まないと具体的な内容が分からない部分が多い。これについては、後から追加した制度を法律の隙間に詰め込んできたため、条文の準用部分や条文を前後して読まなければならない部分が増えてきた。結果として、複雑で迷路のように入り組んだ状態になってしまったと言える。
第三として、法条文に出てくる用語が抽象的で何を意味しているのか良く分からないことが多い。具体的には、「トレーサビリティ制度」を直接的に書いた条文はなく、「取引又は証明」や「計量器」という用語が具体的に何を意味するかを理解するのは難しい。さらには、「家庭用特定計量器」や「JCSS」とか「MLAP」といった用語も、政省令まで読まなければ出てこない。これは、法律改正等の際に他の制度との整合性や従来の通達等で規定していた制度運用部分との兼ね合いなどから、抽象的な表現を多く用いてきたためと考えられる。結局は、法解釈はこれまでの行政判断の積み重ねによる帰納的な解釈に依存する部分が多くなり、具体的に書かれている部分は政省令等が中心となってくる。
以上のことから、「計量法の読み方」を理解するには、これらの問題点を踏まえて解説しなければ、理解できるものとはならない。従って、本書を執筆するにあたり、以下の考え方に立って「計量法の読み方」(解説)をまとめることとする。
第一は、計量法を各制度別に分けて解説し、歴史的な変遷を交えながら、計量制度全体の中での位置付けについても言及していきたい。計量法は、計量単位や検定制度やトレーサビリティ制度など、個々の制度の複合体であるため、各制度別に整理してみれば、ある程度完結した形の制度として捉えることができる。
第二は、法令条文間のつながりについて、丹念に絡まった糸を解くように整理してみることである。
各制度は、個別に見ればその制度の中心となるキー条文から関連の条文を辿ることで、その制度の全体像が浮かび上がるようになっている。従って、各制度の概要を知るには、キーとなる条文を見つけることであり、キー条文と他の条文や政省令等がどのように関連しているかを知ることで、ある程度の具体的な制度の全体像を把握することが可能となる。
第三は、各制度の意味やキーワード等について、基本的な考え方や制度趣旨等を含め、重要度に応じて詳しく解説していきたい。各制度は、その必要性があって設けられているため、いつ頃から始まりどういう改正を経て現在に至っているか、その経緯等を調べてみることでその制度の重要性や意義を知る手がかりとなる。制度の存立意義や趣旨を知ることは、行政実務において、法解釈を行う際に極めて重要である。
「計量法の理解」は、一朝一夕に身につくもではなく、長い間の経験や多くの知識がなければ正しい解釈に至ることは難しい。本書は、計量法に携わる人たちの参考資料として作成したため、一般の計
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量法を知らない初心者が読むには難しいかもしれない。しかし、これから計量法に長く関わる人であるならば、繰り返し読むことを推奨する。本書が計量法を紐解く人々の「道標」となれば幸いである。
1、計量法の目的
制定法においては、「目的規定」又は「趣旨規定」が第1条として置かれることが一般的である。
「目的規定」は、立法を行うに至った動機を述べるほか、直接の目的だけでなく究極的に大きな公益に資する旨を明記したりするなど、その法律の必要性や意義を強調する手段ともなると言われている。
「趣旨規定」は、法律の内容を要約したもので、制定の目的よりもその法律で定める内容そのものの方に重点があると言われている。
一般的に目的規定や趣旨規定は、それ自体は具体的な権利や義務を定めるものではないが、裁判や行政において、他の規定の解釈運用の指針となるとされている。
1-1、計量法の目的とは
「この法律は、計量の基準を定め、適正な計量の実施を確保し、もって経済の発展及び文化の向上に寄与することを目的とする。」<i法1条>-〈i「法」:計量法(平成4年、法律51号)の略〉-
この規定は、計量に関する制度は経済や社会における基本的な制度の一つであり、統一的で合理的な計量制度の確立を図ることは、経済活動の便益と安全の確保を通じて、経済の発展及び文化の向上に資するものであるという立法趣旨を規定したものとされている。
この「計量法の目的」については、昭和26年旧計量法公布以来、平成5年全部改正(新計量法)においても条文内容に変更はなく、計量法の存立意義や任務には変わりがないことを意味している。
この規定の内容解釈は、「①計量の基準を定める」こと、「②適正な計量の実施を確保」すること、この二点を通じて最終的に「③経済の発展及び文化の向上」に寄与することを目的としている。即ち、この規定の意味は、①と②が計量法の具体的な目的達成の方法(手段)であり、③は間接的(究極的)な結果目的として、①と②の二点が達成されれば結果的に③に寄与する(究極的に大きな公益に資する)ことになる、という意味に理解されている。
以上のことから、「経済の発展及び文化の向上に寄与すること」は、計量法を含め多数の法律で目的として掲げられているものであり、この部分の表現には必要以上に囚われないでよいと思われる。そして、重要なのは、①と②の二点が計量法の中で実際にどのように規定されているかということである。
1-2、計量法の目的と諸規定
1-2-1、計量の基準を定める
計量の基準を定めることは、計量の基準となる計量単位を確定することである。計量単位を法定することは、商取引や徴税等の適正な遂行のために必要不可欠のものであり、国家の根源的な機能とも言える。
具体的には、法2章「計量単位(3条~9条)」の単位に関する規定、及び法8章「計量器の校正等」に関する規定がこれに該当する。法2章では、この法律で定める計量単位(法定計量単位)は国際的に合意された「国際単位系(SI)」によることとされている。
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法8章「計量器の校正等」については、平成5年改正において導入された計量標準供給制度(トレーサビリティ制度)に関する規定である。この制度は、先端技術分野を中心とした高精度の計量に対応するため、国家計量標準とつながりのある計量標準を民間へ供給することを主な狙いとしている。計量器の校正等は、もともと誰でも自由に行うことができるものであるが、「法定の標章を付した証明書を交付できる校正等」が可能となった。(※因みに、平成5年改正(新計量法)における三本柱は、計量単位のSI化、計量器規制の合理化、計量標準供給制度の発足であった。)
1-2-2、適正な計量の実施の確保
適正な計量の実施の確保とは、商取引や徴税等の各種計量の目的に応じた正確性をもって保証されなければならないことを指す。計量法は、この保証を主として「取引上の又は証明上の計量」を規制することによって達成しようとしている。
具体的には、法3章「適正な計量の実施」、法4章「正確な特定計量器等の供給」、法5章「検定等」、法6章「計量証明の事業」、法7章「適正な計量管理」が該当する。これらの適正な計量の実施を確保するための諸規定は、最終的に計量結果を適正(それぞれの場合において必要な度合いの正確さ)にするために必要な規定を設け、違反者には罰則をもって臨むという仕組みになっている。即ち、これらは、適正な計量の実施を確保するための公権力の介入について規定しているものであり、計量法の強行法規としての性格を表していると言える。
1-3、明示されていない目的
1-3-1、消費者保護
消費者保護については、法1条に明示されていないが、「経済の発展及び文化の向上」の中に消費者利益の擁護及び増進が含まれることは当然であると解釈されている。
消費者基本法(旧保護法)では、同法13条(計量の適正化)で「国は、消費者が事業者との間の取引に際し計量につき不利益をこうむることがないようにするため、商品及び役務について適正な計量の実施の確保を図るために必要な施策を講ずるものとする。」と規定している。
「消費者と事業者の間の取引に係る計量」については、特に適正な計量の実施の確保が要請される。
計量法では、「消費者が一方の当事者となる蓋然性の高い取引」について、商品の販売に係る計量に関する規制、使用する計量器を検定対象とする、などの対応を行っている。これらは、消費者基本法の趣旨を十分踏まえたものと言える。
1-3-2、公害計測の適正化
公害計測の適正化については、世の中の環境問題の社会的な関心の高まりから、大気汚染や水質汚濁などに関する法規制の強化・拡充が図られてきている。計量法においても、「公害計測機器の信頼性の確保」や「公害計測証明に関する適正な計量の実施」として、その規制の体系に取り込まれている。
具体的には、「公害計測器の信頼性の確保」については、公害計測機器の製造・修理に関する規制や検定等の制度であり、「公害計測証明に関する適正な計量の実施」としては、公害計測証明の事業を計量法上の計量証明事業として規制している。
以上のことから、公害計測の適正化は、「適正な計量の実施の確保」及び「経済の発展及び文化の向上」に関する重要な事項として、計量法の目的として幅広く取り込まれている。
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2、定義等
法令における用語の定義は、その用語が社会通念として解釈の余地が大きいことなどから、解釈上の疑義を少なくし当該用語の意義や用法を明らかにするものである。
用語の定義の方法としては、大別して、用語の定義のための規定(条文)を特に設ける場合、法令の規定(条文)中に括弧を用いて定義を行う場合の二通りの方法がある。どちらの方法を採るかについては、明確な基準等があるわけではないが、特に規定(条文)を設ける場合はその用語が法令において重要な意義を有する場合や他の規定(条文)で用いられる頻度が多い場合などとされ、その他の場合は括弧を用いて定義を行う方法が通例とされている。
用語の定義が及ぶ範囲については、特に定義のための規定が法令の総則的部分に設けられた場合はその法令全体に及ぶとされ、括弧を用いて定義を行った場合は定義を行った位置以後の同一の用語にのみ及ぶとされている。
2-1、「計量」と「計量単位」
計量法においては、法2条1項により、「計量」とは「物象の状態の量」を計ることをいい、「計量単位」とは「計量」の基準となるものと定義されている。
「物象の状態の量」については、物象の状態の量として熟度が高く確立しているもの72量(法2条1項1号)と、物象の状態の量として熟度が低い(十分に確立していない)もの17量(法2条1項2号)が規定されている。(※従って、これらの「物象の状態の量」以外の量を計ることは、計量法上の「計量」としては取り扱われない。)
この法律において「計量」とは、次に掲げるもの(以下「物象の状態の量」という。)を計ることをいい、「計量単位」とは、計量の基準となるものをいう。
1) 長さ、質量、時間、電流、温度、物質量、光度、角度、立体角、面積、体積、角速度、角加速度、速さ、加速度、周波数、回転速度、波数、密度、力、力のモーメント、圧力、応力、粘度、動粘度、仕事、工率、質量流量、流量、熱量、熱伝導率、比熱容量、エントロピー、電気量、電界の強さ、電圧、起電力、静電容量、磁界の強さ、起磁力、磁束密度、磁束、インダクタンス、電気抵抗、電気のコンダクタンス、インピーダンス、電力、無効電力、皮相電力、電力量、無効電力量、皮相電力量、電磁波の減衰量、電磁波の電力密度、放射強度、光束、輝度、照度、音響パワー、音圧レベル、振動加速度レベル、濃度、中性子放出率、放射能、吸収線量、吸収線量率、カーマ、カーマ率、照射線量、照射線量率、線量当量又は線量当量率
2) 繊度、比重その他の政令(単位令ii1条)で定めるもの
<法2条1項>
「物象の状態の量」は、世の中の「長さ」や「質量」などの数値でもって大きさを表す事象や現象等があり、こうした事象等を列挙し「物象の状態の量」と表しているとされている。(※因みに、通商産業省初代計量課長高田忠氏によれば「物象とは森羅万象を指す」とのことである。)
(ii 「単位令」:計量単位令(平成4年、政令357号)の略)
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2-2、「取引」及び「証明」
法律の規制は、一般的には必要最小限の領域に限定されるべきものである。計量関係の諸分野における規制の必要な領域の境界については、「取引」及び「証明」という概念によって画することが適当な場合が多いとされている。
我が国の計量法においても、計量単位の統一、計量器の検定及び使用の制限、定期検査、立入検査などの各種の規制の範囲は、「取引」及び「証明」の概念によって画されている。従って、これらの概念を明確にすることは、計量法における法的規制を受けるか否かを決定する上で重要な意義を有している。
この法律において「取引」とは、有償であると無償であるとを問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の行為をいい、「証明」とは、公に又は業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明することをいう。<法2条2項>
「取引」とは、有償無償を問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の行為を言う。「物又は役務の給付」については、「物の給付」とは物品の売買、貸借、贈与等が典型的なものとされ、「役務の給付」とは雇用請負や委託加工等が一例とされている。
「証明」とは、公に又は業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明することを言う。「公に又は業務上他人」については、「公に」とは不特定多数に対してという意味のほか公の機関に対してという意味を含むとされ、「業務上他人」とは継続的、反復的に他の法主体に対しての意味とされている。
2-2-1、機械情報産業局長通達
「取引」及び「証明」の解釈については、旧通達(6機局290号)「計量法、計量法施行令、計量法施行規則等の解釈及び運用について」で以下のように示されていた。
1、取引又は証明における計量の定義(法2条2項)
イ 取引における計量
取引における計量とは、契約の両当事者が、その面前で、ある計量器を用いて一定の物象の状態の量の計量を行い、その計量の結果が契約の要件となる計量をいう。工程管理における計量等、内部的な行為にとどまり、計量の結果が外部に表明されない計量や契約の要件にならない計量は含まれない。
計量した物に結果を表示する場合については、その物が取引の対象となり、表示した結果が契約の要件となるときは、その表示をするための計量は、取引における計量に該当する。内部の工程管理における計量結果の表明であり、工程管理上その計量結果の表示を用いる場合は、その表示のための計量は取引における計量に該当しない。
ちなみに、法148条(立入検査)においては、通商産業大臣等はその職員に「取引若しくは証明における計量をする者」の工場等に立入り、「特定物象量が表記された特定商品」を検査させることができるとしており、法は「特定物象量が表記された特定商品」を製造する工程における特定物象量の表記のための計量も、取引における計量に該当することを予定している。
ロ 証明における計量
法2条2項の「公に」、「業務上」、「一定の事実」、「真実である旨を表明すること」の解釈は次のとおり。
「公に」とは、公的機関が、又は公的機関に対し、であること。
「業務上」とは、継続的、反復的であること。
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「一定の事実」とは、一定のものが一定の物象の状態の量を有するという事実。
特定の数値までを必ず含むことを有するを要するものでなく、ある一定の水準に達したか、達していないかという事実も含まれる。一方、「計量上の証明(以下「計量証明」という)(法19条1項1号)」は「取引若しくは証明における計量(法2条2項)」、「非法定計量単位は取引又は証明に用いてはならない(法8条1項)」、「取引又は証明における法定計量単位における計量(法16条、法18条及び、19条1項)」とは異なり、数値を表明することが伴うものである。ただし、おおよその目安を示すものは含まれない。
「真実であることを表明する」とは、真実であることについて一定の法的責任等を伴って表明すること。参考値を示すなど、単なる事実の表明は該当しない。
ハ 「取引」と「証明」の相違
商品の内容量について計量結果の表明に関しては、取引当事者間における計量及びその計量結果の表明は取引上の計量のことをいい、取引当事者以外の第三者による計量及びその計量結果の(両者又はいずれか一方の)当事者への表明は証明のことをいう。
ニ、具体的事例
・検察庁における実地検証のための計量
証明における計量に該当する。
・有料体重計
目安程度のものであれば証明における計量に該当しない。
・学校等における体重計
学校、幼稚園、保育所又は福祉施設等の体重測定に使用される非自動はかりであって、その計量値が健康診断票等に示され通知、報告等されるものについては、証明における計量に該当する。
・小包み郵便物及び一般運送事業者の宅配便の取次業者による取次店における料金特定のための計量は、取引における計量に該当する。
・集合住宅における水道メーター等について
水道メーター、温水メーター、ガスメーター、微流量燃料油メーター、積算熱量計、電気計器による取引又は証明における計量には、建物の賃貸借契約に付随して賃貸人と賃借人との間においてなされる取引又は証明における計量も該当する。
したがって、貸ビル、アパート等その集合住宅において一括して水道、温水、灯油、熱、電力等の供給事業者へ支払った料金等を各室の使用量に応じて配分するために用いられるメーターも、取引又は証明上の計量に該当する。
<旧通達6機局290号抜粋>
取引又は証明に該当するか否かについては、世の中にある数多くの物事すべてにはっきりした境界が存在するわけではないため、すべてを明確に区別できるというものではない。従って、こうした曖昧さを伴う境目については、これらの定義や実際の事例について、その都度判断を重ねていくことにより帰納的に解釈していくべきものと考えられている。
この旧通達については、地方分権により平成12年に廃止され現在では法的拘束力を伴わないが、現在においても概ねこの判断基準に基づいて解釈されているのが現状である。
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2-2-2、具体的事例
これまでに示されてきた判断事例の一部としては、以下のものが挙げられる。
取引
取引取引に該当する場合の例
・農家が庭先で農産物を販売する際の計量
・服地販売に際しての長さの計量
・倉庫に物品を保管する際の保管料算定のための長さ、体積の計量
・委託加工賃を物品の質量等によって決定する際の計量
・店舗の賃借料を決定する際の面積の計量
取引に該当しない場合の例
・製造事業者が生産工程において内部的な各種の計量をする場合
・家庭内での計量(日曜大工の際の計量、等)
・友人間等での一回的な物品のやりとりの際に行う計量(業務上とは認めがたいもの)
証明
証明に該当する場合の例
・自治体が一般に公表するために行う濃度等の計量
・国税庁が行う酒税賦課のためのアルコール濃度の計量
・土地の登記に際して行う面積の計量
・工場等が自治体に報告するために行う排水量の計量
証明に該当しない場合の例
・銭湯に設置したはかりを使用しての計量(単なる自己の健康管理用)
・研究所等で行う内部的な各種計量
表示
取引又は証明に該当する場合の例
・内容量の表示(缶詰、びん詰め、ジュース等)
・契約書上での表示(平方メートル当り○○○万円等)
・仕様書(商取引に伴う表示)
・計量器への計量目盛、計量単位の付与
(東京地裁S39年「計量器に非法定計量単位が示されているときは、その販売または販売のための所持は、~略~同法(旧計量法)10条1項本文に違反するものと解するのが相当である」)
取引又は証明に該当しない場合の例
・契約書に添付する参考資料
・カタログ類
・取扱説明書
・広告類
・新聞、テレビ等におけるニュース報道等
・学術書等の書物上での事実の表示
・学校教育において、教育の観点から教育段階に応じて用いられる計量
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・スポーツにおける表示
2-2-3、みなし証明
計量法における規制は、主に「取引又は証明」の場合を前提としている。これは、製造工程などの内部的な行為を規制することは事実上困難であることと、「法は家庭の中には立ち入らず」という法的謙抑のためと言われている。しかし、人命又は財産に対する危険を防止するためにする計量については、対内的な行為であっても、使用する計量単位の過誤や計量器の精度が正確でないことによって危険な事態が発生することを防止するため、証明と見なして取り扱うこととされている。
車両若しくは船舶の運行又は火薬、ガスその他の危険物の取扱いに関して人命又は財産に対する危険を防止するためにする計量であって政令(施行令iii1条)で定めるものは、この法律の適用に関しては、証明とみなす。<法2条3項>
この政令で定めるものについては、①鉄道車両の運行に関する圧力の計量、②高圧ガスの製造に関する温度又は圧力の計量であって、省令(施行則iv2条)で定めるものとして明示されている。
(証明とみなされる計量)
施行令1条の経済産業省令で定める計量は、次に掲げるとおりとする。
1) 軌道建設規程(大正12年内務・鉄道省令)22条4項及び無軌条電車建設規則(昭和25年運輸省・建設省令1号)39条7号で規定する備え付けなければならない圧力計並びに鉄道に関する技術上の基準を定める省令(平成13年国土交通省令151号)79条1項の規定により運転に必要な設備として設けられた圧力計による圧力の計量
2) 製造施設の位置、構造及び設備並びに製造の方法等に関する技術基準の細目を定める告示(昭和50年通商産業省告示第291号)6条3号に規定する比較のための温度計による計量及び同告示7条3号に規定する比較のための圧力計による計量
<施行則2条>
なお、「みなし証明」の対象については、平成5年改正以前の旧計量法(旧法施行令1条)では「人命又は財産の危険を防止するため」の範囲が広く設定され、圧力計及び温度計以外の計量器(質量計、体積計、浮ひょう、等)についても「みなし証明」の対象とされていたが、現在では圧力計及び温度計のみに限定されている。
2-3、「計量器」と「特定計量器」
計量法では、「計量器」の概念(社会通念としての計量器よりもやや範囲の狭いもの)を定義し、その規制の対象となる「計量器」(特定計量器)の範囲を定義している。(※平成5年改正以前の旧計量法においては、「計量器」にあたらないものを「類似計量器」と呼称し、規制の対象となる計量器を「法定計量器」(旧計量法12条)と呼称していた。)
この法律において「計量器」とは、計量をするための器具、機械又は装置をいい、「特定計量器」とは、取引若しくは証明における計量に使用され、又は主として一般消費者の生活の用に供される計量器のうち、適正な計量の実施を確保するためにその構造又は器差に係る基準を定める必要があ
i
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るものとして政令(施行令2条)で定めるものをいう。
<法2条4項>
ii 「施行令」:計量法施行令(平成5年、政令329号)の略
iv 「施行則」:計量法施行規則(平成5年、通商産業省令69号)の略
特定計量器とは、計量法上の規制を課すことが必要な計量器を抽象化し、「特定計量器」と定めたものとされている。(※特定計量器は、平成5年改正により登場した用語であるが、その定める目的や概念は旧計量法における「法定計量器」とほぼ同一である。)
特定計量器は、施行令2条により、18器種が規定されている。
(特定計量器)
法2条4項の政令で定める計量器は、次のとおりとする。
1) タクシーメーター
2) 質量計
イ、非自動はかり
ⅰ、目量(隣接する目盛標識のそれぞれが表す物象の状態の量の差をいう。)が10mg以上であって、目盛標識の数が100以上のもの(ⅱ又はⅲに掲げるものを除く。)
ⅱ、手動天びん及び等比皿手動はかり(表記された感量(質量計が反応することができる質量の最小の変化をいう。)が10mg以上のもの)
ⅲ、自重計(貨物自動車に取り付けて積載物の質量の計量に使用する質量計をいう。)
ロ 分銅(表す質量が10mg以上のもの)
ハ 定量おもり及び定量増おもり(以下単に「おもり」という。)
[計量計測データバンク編集部 註]
本稿を執筆時においては質量計は イ、非自動はかり だけが特定計量器でしたが、その後に自動ハカリの一部が特定計量器に追加されました。その内容は次のとおりです。紫色の文字です。
計量法における計量器の規制の概要(事業者向け)(METI/経済産業省)
質量計のうち、次に掲げるもの
イ 非自動はかりのうち、次に掲げるもの
目量(隣接する目盛標識のそれぞれが表す物象の状態の量の差をいう。以下同じ。)が十ミリグラム以上であって、目量標識の数が百以上のもの((2)又は(3)に掲げるものを除く。)
手動天びん及び等比皿手動はかりのうち、表記された感量(質量計が反応することができる質量の最 小の変化をいう。)が十ミリグラム以上のもの
自重計(貨物自動車に取り付けて積載物の質量の計量に使用する質量計をいう。)
ロ 自動はかりのうち、目量が十ミリグラム以上であって、目盛標識の数が百以上のもの
ハ 表す質量が十ミリグラム以上の分銅
ニ 定量おもり及び定量増おもり
3) 温度計
イ ガラス製温度計
ⅰ、計ることができる温度が零下30度以上360度以下のもの(転倒式温度計、接点付温度計、最高最低温度計、留点温度計、浸線付温度計、保護枠入温度計及び隔測温度計並びにⅱに掲げるものを除く。)
ⅱ、ベックマン温度計のうち、温度の上昇の計量に使用するもの(削除、平成22年5月改正)
ⅲ、ガラス製体温計
ロ 抵抗体温計(電気抵抗の変化をもって、体温を計量する温度計であって、最高温度保持機能
を有するものをいう。)
4) 皮革面積計
5) 体積計
イ 積算体積計
ⅰ、水道メーター(口径が350mm以下のもの)
ⅱ、温水メーター(口径が40mm以下のもの)
ⅲ、燃料油メーター(揮発油、灯油、軽油又は重油(以下「燃料油」という。)の体積の計量に使用する積算体積計をいう。)のうち、口径が50mm以下のもの(50L以上の定体積の燃料油の給油以外に使用できないものを除く。)
ⅳ、液化石油ガスメーター(口径が40mm以下であって、液化石油ガスを充てんするための機構を有するもの)
ⅴ、ガスメーター(口径が250mm以下のもの(実測湿式ガスメーターを除く。))
ⅵ、排ガス積算体積計
ⅶ、排水積算体積計
-11-
ロ、量器用尺付タンク(自動車に搭載するもの)
6) 流速計
イ 排ガス流速計
ロ 排水流速計
7) 密度浮ひょう
イ 耐圧密度浮ひょう以外のもの
ロ 耐圧密度浮ひょう(液化石油ガスの密度の計量に使用するもの)
8) アネロイド型圧力計
イ 計ることができる圧力が0.1Mp以上200.2Mp以下のものであって、最小の目量が計ることができる最大の圧力と最小の圧力の差の150分の1以上のもの(蓄圧式消火器用のもの及びロに掲げるものを除く。)
ロ アネロイド型血圧計
9) 流量計
イ 排ガス流量計
ロ 排水流量計
10) 熱量計
イ ボンベ型熱量計(削除、平成22年5月改正)
ロ ユンケルス式流水型熱量計(削除、平成22年5月改正)
ハ 積算熱量計(口径が40mm以下のもの)
11) 最大需要電力計
12) 電力量計
13) 無効電力量計
14) 照度計
15) 騒音計
16) 振動レベル計
17) 濃度計
イ ジルコニア式酸素濃度計(最高濃度5%以上25%以下のもの)
ロ 溶液導電率式二酸化硫黄濃度計(最高濃度50ppm以上のもの)
ハ 磁気式酸素濃度計(最高濃度5%以上25%以下のもの)
ニ 紫外線式二酸化硫黄濃度計(最高濃度50ppm以上のもの)
ホ 紫外線式窒素酸化物濃度計(最高濃度25ppm以上のもの)
ヘ 非分散型赤外線式二酸化硫黄濃度計
ト 非分散型赤外線式窒素酸化物濃度計
チ 非分散型赤外線式一酸化炭素濃度計(最小目量100ppm未満のもの及び最小目量100ppm以上200ppm未満のもので最高濃度が5%未満のもの)
リ 化学発光式窒素酸化物濃度計(最高濃度25ppm以上のもの)
ヌ ガラス電極式水素イオン濃度検出器
ル ガラス電極式水素イオン濃度指示計
ヲ 酒精度浮ひょう
18) 浮ひょう型比重計
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イ 比重浮ひょう
ロ 重ボーメ度浮ひょう
ハ 日本酒度浮ひょう
以上<施行令2条>
2-3-1、特定計量器の範囲
選定基準
特定計量器に関する規制は、法2条4項より、「①取引若しくは証明に使用される」場合と「②一般消費者の生活の用に供される計量器」との二通りである。②のケースについては、「製造事業者の基準適合義務」(法53条)、「検定証印等のないものの譲渡等の禁止」(法57条)の規制が該当する。①のケースについては、概ね次の要素に基づいて定められている。
a) その多くが社会・経済活動において広く取引又は証明に使用されており、当該計量器の精度を公的に担保することが必要なもの。(質量計、燃料油メーター、電気計器、ガス・水道メーター、積算式熱量計、温水メーターなど)
b) 社会的に特に取引又は証明に使用する計量器について精度を公的に担保ことが求められているもの。(公害や環境に関する証明に使用する濃度計、騒音計、振動レベル計、照度計、排水・排ガスに係る積算体積計、流速計、流量計)
c) 租税、計量証明事業、中小企業等に関わる取引に用いられるもので、当該計量器の精度を公的に担保することが必要なもの。(温度計、量器用尺付タンク、皮革面積計、浮ひょう型密度計・濃度計・比重計など)
d) 「みなし証明」(法2条3項)に用いられるもので、当該計量器の精度を公的に担保することが必要なもの。(鉄道の運行に用いる圧力計や高圧ガスの保安に用いる温度計・圧力計)
対象とされないもの
計量器であっても、①その多くが取引又は証明に使用されないもの(化学用体積計など)、②精度が十分確保されているもの(時計、長さ計など)、③専門家が調整しながら使用するもの(ガスクロマトグラフなど)、④精度が高く使用者が自ら精度を確認して使用すべきもの(ブロックゲージ、電気関係測定器など)などは、精度を公的に担保する必要はないため、特定計量器の対象とされていない。
2-3-2、特定計量器の規制体系
法的効果
計量法では、当該計量器を使用する取引又は証明において、適正な計量の実施を確保することが社会的に特に求められる計量器を特定計量器と指定し、以下の法的効果を規定している。
(1) 使用の制限
検定対象のものについては、検定証印が付されているもの又は指定製造事業者が製造した表示(法96条1項)が付されているものでなければ、取引又は証明における法定計量単位による計量に使用し、又は使用に供するために所持してはならない。(法16条)
(2) 特定計量器のうち一定のもの
-13-
a) 製造等における基準適合義務(法53条)
b) 検定証印等を付していないものについての譲渡等の制限(法57条)
(3) 特定計量器の製造、修理又は販売の事業を行う者
a) 事業の届出(法40条、46条、51条)
b) 検査義務(法43条、47条)
c) 販売事業者の遵守事項(法52条)
d) 製造等における基準適合義務(法53条)
e) 検定証印等を付していないものについての譲渡等の制限(法57条)
[次ページに続く]計量法の解説- 計量法の構造と機能(目的)-(2) 筆者 高原隆
計量法の解説- 計量法の構造と機能(目的)-(目次) 筆者 高原隆
[計量計測データバンク編集部 註]
計量制度とその法規制は逐次変わる増す。本稿編集時点からの変更を 計量制度の概要(METI/経済産業省) などを通じて確かめて、確かな計量の実施に就溶けてください。
計量制度の概要(METI/経済産業省)
計量法における単位規制の概要
非法定計量単位による目盛等を付した計量器の販売の届出について
非法定計量単位による目盛等を付した計量器の販売の承認について
計量法における計量器の規制の概要
特定計量器に関する規制の概要
家庭用特定計量器(体重計・調理用はかり)に関する規制の概要
計量士(国家試験・資格認定・登録)
適正計量管理事業所制度
計量法における商品量目制度の概要(特定商品(食品など)の量目公差・内容量表記など)
特殊容器(丸正びん)制度
計量証明の事業
計量標準
法定計量における国際整合化の推進(国際法定計量機関)
普及啓発(計量記念日)
2026-03-28-no1-structure-and-function-and-purpose-of-the-measurement-law-
計量計測トレーサビリティのデータベース(サブタイトル 日本の計量計測とトレーサビリティ)
2019-02-05-database-of-measurement-measurement-traceability-measurement-news-
計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)
2019-02-07-1-database-of-measurement-measurement-traceability-measurement-news-
計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)-2-
2019-02-07-2-database-of-measurement-measurement-traceability-measurement-news-
計量計測トレーサビリティのデータベース(計量計測トレーサビリティ辞書)-3-
2019-02-07-3-database-of-measurement-measurement-traceability-measurement-news-