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読書の楽しみ(1) 

読書は心の栄養剤か精神安定剤か

沢山の本を仕込んでおきたい



 本を手にしていないと気が安まらない人は多い。自分の好きな分野の本が十冊も用意されていれば安心なのだが、好きな分野は必ずしも一つではないところから悩みが生ずる。

 長い休暇を控えた場合にはできるだけ沢山の本を仕込んでおきたい。二冊か三冊という本の数では面 白くない。二十冊、三十冊の本を用意したい。できることなら百冊ぐらい欲しい。二冊か三冊の本だと、それが意に反して面 白くない場合には困ってしまう。気が大きくなっているときには経済、政治、科学、文芸、その他趣味の分野など多方面 に感心が及んでしまうので、分類別に数冊ずつ用意すると五十冊や百冊にはなってしまう。

  少しの本では飽きてしまう



 経済の本だけを読んではいられないから、それに飽きたら文芸、それにも飽きたら趣味の分野と読書の梯子(はしご)をすることになる。一つの分野、例えば経済や政治の分野にしたって一人の説だけに付き合わされたのでは息が詰まるし、面 白くもない。

 人はときどき活字中毒になるようで、これに患されるとテレビを見ながら、ラジオを聴きながら、トイレの中で、お風呂の中でまで本を手にすることになる。

 温泉につかりながらの読書というのはなかなかオツなものである。夏ならとくに結構でぬ るい温泉につかって、出たり入ったりの繰り返しをしてのんびりできることは嬉しい。湯から出ても読書、湯に入っても読書。のどが渇いたら缶 ビールをチビリ、そして疲れたらごろりと昼寝ということになる。温泉に入ると疲れるので読書を忘れて昼寝をすることが多くなる。出かける温泉は日帰り温泉で十分だ。そうした温泉は衛生上のこともあって湯の中での読書はしにくいが、なに、探せばどこかにあるし、こだわることもない。ザブンとカラスの行水をして、湯から上がってたら腹這いになり、仰向けになり、横を向いたりして気ままに本を読むのだ。

  楽しい読書は本探しから



  百冊の本を仕込むのはお金も暇も大変ではないかとおっしゃる方があるだろう。普段から古本屋に足を運んで読みたい本をこつこつと貯めておくことが肝心である。書店に本は売るために山ほどあるが、自分が読みたい本はわずかなのである。本当に読みたい本を探し出すのには努力がいる。楽しい読書は本探しの段階から始まっているのであり、本探しの努力が楽しい読書を保証する。

 夏休みに強要される読書



 ところで、夏になると、百冊とか何とか言って読書を強要される。読書奨励の広告が電車に下がるし、テレビCMも流されることがある。そのようにして青年子女は読書を脅迫される。青年には夏休みに読めという百冊の本に呪われるが、これは夏の夜の幽霊にも勝る恐怖である。夏休みが終わっても宿題は手を付けずにそのまま残り、百冊の本は来年に持ち越して、その来年が生涯ついて回る。困ったものである。

  青年に読書の時間はない



 何時の時代でも青年には本当のところ読書のための時間は用意されていない。受験のたための学習に追われて日を過ごすのが青春であり、青春とは予備校通 いでもあるから、受験を放棄するぐらいの気持ちにならいと本格的な読書などできるものではない。

 小説は受験勉強を投げ出して、「これはやばいぞ」と思いながらするもののようで、安岡章太郎などは読書に溺れていたので、上級学校への進学が遅れた。

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「富士山や月は東に日は西に」2017‎年‎3‎月‎11‎日午後6時。(旅行家 甲斐鐵太郎の自然博物誌 №31)
(副題)蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」の富士山版で「富士山や月は東に日は西に」。
(副副題)撮影カメラはEOS 5D。35mmフィルムカメラの画面と同じ大きさの撮像素子のカメラだ。


ライカM5への思いを残してCanon EOS 5DとNikon D70で風景を撮る。(旅行家 甲斐鐵太郎の自然博物誌 №30)
(副題)買った品物をそこそこの値段で売るという中古カメラの売買の楽しみは消えました。
(副副題)ニコン F6 ボディは新品273,330円、中古79,980円から(キタムラネットショップ2017年3月9日付け)