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ヒッグス場と素粒子との相互作用が質量を生み出す
(全ての力を説き明かす鍵)
Interaction between the Higgs field and elementary particles creates mass

ヒッグス場と素粒子との相互作用が質量を生み出す(全ての力を説き明かす鍵)

(計量計測データバンク編集部)

ヒッグス場と素粒子との相互作用が質量を生み出す(全ての力を説き明かす鍵
(計量計測データバンク編集部))

ヒッグス場と素粒子との相互作用が質量を生み出す(全ての力を説き明かす鍵)(計量計測データバンク編集部)

ヒッグス場と素粒子との相互作用が質量を生み出す(全ての力を説き明かす鍵)


はじめに


 ヒッグス機構は素粒子とヒッグス場の相互作用によって質量を生み出す仕組みである。

 大栗博司 はヒッグス粒子を説明する本を2013年に書いている。『強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く』〈幻冬舎新書〉である。次のノーベル賞受賞者を予測できる人される大栗博司は数学と物理に通じたこの道の第一人者であり、現職はカリフォルニア工科大学フレッド・カブリ冠教授およびウォルター・バーク理論物理学研究所所長。

 強い力と弱い力、ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解くということで、ヒッグス粒子がどのように質量を生み出すのか、そしてそれが宇宙の仕組みにどのように関係しているのか。ヒッグス粒子が「標準模型」と呼ばれる素粒子物理学の理論がパズルを完成させるための最後の一片(ワンピース)だ。つまりヒッグス粒子の発見によって宇宙の謎を解き明かす重要な手がかりが得られた。

 ヒッグス粒子は素粒子の一種であり、質量を持つすべてのものの質量の起源に関わる。ヒッグス粒子はヒッグス場という宇宙全体に満ちている場と相互作用することで、他の粒子に質量を与える。2012年に大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での実験で発見された。発見の功績によりフランソワ・アングレール氏とピーター・ヒッグス氏が2013年にノーベル物理学賞を受賞した。

 大栗博司が素粒子とヒッグス場の相互作用によるヒッグス機構を上のように説明する。

ヒッグス粒子の発見


ヒッグス博士(右)とアングレール博士 ©CERN

ヒッグス粒子の発見が意味すること

 2012年7月4日、世界の素粒子物理学者たちが待ち望む素粒子が見つかった。物質に質量を与える起源がヒッグス粒子。ヒッグス粒子の発見は素粒子物理学の「標準理論」の証明となった。ヒッグス粒子の存在を予言したピーター・ヒッグス博士とフランソワ・アングレール博士は、2013年に、ノーベル物理学賞を受賞した。

 ヒッグス粒子の発見と確認は素粒子物理学には通過点の一つ。ヒッグス粒子は新たな謎を生み出す。天文観測の成果や宇宙物理学の発展によりかねてから指摘されている「標準理論」の限界を打ち破ることが課題になる。宇宙にある物質やエネルギーのうち「標準理論」で説明できるのは5%にすぎず、この理論体系では「重力とは何か」を説明することもできない。

 重力を発見したニュートン、その理論を発展させたアインシュタインの物理学と量子の世界の統合が大きな課題となる。

 ヒッグス粒子の発見は20世紀以来の素粒子物理学が築き上げた金字塔である。しかし根源的な問い、つまり素粒子理論と宇宙を構成する要素を組み合わせた新たな統合理論の構築の幕開けにすぎない。「物質の根源」や「宇宙の成り立ち」を解き明かすには、従来の理論を乗り越えていくことが求められている。

ヒッグス粒子発見を支えた日本陣営の貢献

 ヒッグス粒子は、素粒子物理学の世界的な研究拠点CERN(欧州合同原子核研究機構)で発見された。世界最高の衝突エネルギーを誇るLHC(大型ハドロン衝突型加速器)という加速器と、ATLASとCMSという2つの高精細な検出器によって、ヒッグス粒子の存在が突き止められたのである。

 ATLASとCMSは、実験グループの名前でもある。両者は成果を競うライバルであり、素粒子から物質と宇宙の根源に迫ることを夢見る。両グループには世界中から3,000人規模の研究者が集い、ATLASには日本の12機関から、学生含めて約160名が参加する。40名が東京大学の研究者・学生。

 素粒子は肉眼でとらえることはできない。高精細な検出器によって素粒子のわずかな挙動を感知し、記録された膨大なデータを解析してその痕跡に迫る。日本の研究者・学生たちはATLASの開発や運用、データ解析に携わる。

 日本の企業と政府が果たすデータ解析のためのコンピュータ資源を提供す役割も大きい。ATLASのみならず、LHC本体とCMSの建設に、日本企業十数社が開発した素材や部品が使われ、推定で総額150億円相当のビジネスを生んだ。それを実現したのは日本政府の後押しだ。CERN加盟国ではない日本の企業が国際入札への参加を認められたのは、政府がいち早くLHC建設資金援助を表明したことによる。科学史に残る偉大な発見に日本が貢献している一時例である。

ヒッグス粒子と質量の真実

 ヒッグス粒子は「神の粒子」と呼ばれる質量の期源である。しかしヒッグス粒子だけで質量を説明できるわけではない。質量の真実とは一体何なのか。物理学最大の発見の1つとされるヒッグス粒子とは何であるか。

1、ヒッグス粒子とは その予測と発見の歴史

  空気、水、土 人の身体といった物質は全ては質量を持つ。質量とは何なのか。物質に質量をもたらすその何故を解明する鍵となるのがヒッグス粒子。

 イギリスの理論物理学者ピーター・ヒッグスをはめとする複数の研究者が素粒子に質量を与える新たな仕組みをヒッグス機構として提唱した。この理論では宇宙全体にヒックス場という見えないエネルギーの海が広がっていて、素粒子がこのヒッグス場と相互作用することで質量を獲得すると説明される。

 素粒子がヒッグス場と相互作用することで重さが生じる。水中で動こうとすると抵抗を感じるのと同じようなことと理解しておけばよい。ヒッグス機構の理論を証明するのがヒッグス粒子であり、その発見が待たれた。

 物理学者レオンレーダーマンはヒッグス粒子を「神の粒子」と呼んだ。この粒子がなければ宇宙の基本法則が成り立たないためである。

 理論的に存在が予測されたヒッグス粒子は高いエネルギー領域でしか生成されないため発見が難しかった。ヒッグス粒子の存在を確かめるために実験を重ねられた。欧州原子格研究機構の研究施設にある大型ハドロン衝突型加速機では光速に近い速度で粒子同士を衝突させ、宇宙誕生直後の極限状態を再現する実験を続けてきた。2012年7月4日、欧州原子格研究機構の研究チームはヒッグス粒子を発見。

 この発見は標準模型組み立てのための最後の一片(ワンピース)が埋まり、物理学に大きな前進がもたらされた。

 その一方で私たちの身の周りの質量の大部分はヒッグス粒子とは関係ないことが分かってきた。ヒッグス粒子が質量の期源というのは本当なのかという新たな謎解きが課題になったのである。

2、質量の本当の起源

 「ヒッグス粒子=質量の起源」ということにされるが果たしてそうか。

 ヒッグス粒子が素粒子に質量を与えることは確かである。しかし私たちの身の回りの物質の大部分の質量はヒッグス粒子とは無関係なのである。質量の本当の起源は何なのか。

 ヒッグス機構は素粒子に質量を与える役割を果たす。これが大前提である。電子やクォークといった基本的な粒子はヒッグス場との相互作用によって質量を獲得する。ヒッグス粒子がなければこれらの素粒子は質量がゼロとなり現在の宇宙は全く異なる姿で出現したはずである。

 私たちの身体を構成する物質のほとんどは容姿や中性子といった複合からできている。これらの質量の99%はヒッグス粒子に影響されたものではなく、全く別のメカニズムによって生じている。

 私たちの身の回りの物質の多くは原子でできている。原子は陽子、中性子、電子で構成されており、特に陽子と中性子が原子格の質量のほぼ全てを占めている。陽子と中性子の支出量の99%はヒッグス粒子によるものではない。これらの粒子の質量はどこから生まれるのか。強い相互作用によって生じる。

 陽子や中性子はさらに小さな粒子であるクォークによって構成される。クォーク自体はヒッグス機構によって質量を持っているが、その質量は非常に小さく陽子や中子の全体の質量のごく一部でしかない。質量は陽子の喪失量の1%にも満たない。

 残りの99%の質量はどこから来るのか。クォーク同士を結びつける強い相互作用による。

 陽子や中性子(これらをまとめて「核子」と呼ぶ)を結びつけている力は核力と呼ばれる素粒子であるクォーク同士の強い相互作用によって媒介される力。核力は電気的な力よりも非常に強く、陽子同士の電気的斥力に打ち勝って原子核をまとめる役割を果たし、またクォークのパウリの排他原理からくる強い斥力も核力を構成する一部である。

 核力の理論的研究は、湯川秀樹による中間子論の研究に始まり、核子の間に働く力として提唱された。陽子や中性子を構成するクォーク同士の強い相互作用が核力の根源であり、この核力が陽子と中性子を原子核としてまとめている。

 強い相互作用は陽子や中性子を構成する空を結びつける力であり、この相互作用を担うのがグルーオン(またはグルー音)という粒子です。

 グルーオン(またはグルー音)は、クォーク間に働く強い相互作用を媒介する素粒子であり、この力によって陽子や中性子が形成される際にクォークを結合させる「のり」のような役割を担っている。この強い力は非常に強い。働く距離は極めて短く、原子核の内部でクォークを閉じ込めることに特化した力。グルーオンは、クォークと反クォークが結合して「中間子」を形成する際にも重要な役割を果たす。全ての素粒子が持つ「スピン」と呼ばれる性質をグルーオンも持っている。

 強い相互作用は、物質の根源的な力の一つで、グルーオンがこの力を伝達する役割を担う。強い相互作用は非常に強い力だが作用する距離が短いため、日常生活でその力を感じない。この強い力によって、クォークは陽子や中性子のようなハドロン(複合粒子)を形成する。

 グルーオンクォーク同士を束縛し、エネルギーを生み出す。アインシュタインの有名な方程式。特殊相対性理論から導かれたE=mc²。この式はエネルギー(E)と質量(m)が等価であり、質量がエネルギーに、またはその逆に変換されることを示す。

 E=mc²(エネルギー・質量等価の原理)。E:エネルギー (Energy)。m:質量 (mass)。c:光速 (speed of light)。

 この式は質量がエネルギーそのものであることを示す。わずかな質量が膨大なエネルギーに変わる可能性を秘めている。これは1905年に発表された特殊相対性理論の帰結であり、物理学の世界を根底から変えた革命的な発見であった。

 アインシュタインのその他の有名な式や業績について。アインシュタイン方程式=一般相対性理論における重力場の方程式で、質量やエネルギーが時空をどのように歪めるかを表す。光量子仮説=光が光子というエネルギーの粒で構成されるという考え方。光電効果=光を物質に当てると電子が飛び出す現象で、光子のエネルギーが関わっている。

 特殊相対性理論から導かれたE=mc²。事情によればエネルギーと質量は等価。Eがエネルギー、mが質量を表す。つまり強い相互作用によって生まれる莫大なエネルギーが用姿や中性子の質量を形つくっている。

 私たちが質量と呼んでいるものの大部分はヒッグス粒子が直接生み出してるわけではなく強い相互作用によるエネルギーの束縛によって生じている。ヒッグス粒子は電子やクオークなどの素粒子に質量を与えるが、身の回りの物質の99%を占める容子や中止の質量はヒッグス粒子とは無関係。

3、ヒッグス場と素粒子の質量の関係

 ヒッグス粒子がなければ何が起こるのか。ヒッグス粒子がなければ電子やクオークといった基本的な素粒子が質量を持たず宇宙は全く異なるものになってしまう。

 私たちの身の周りにある電子は原子を構成する重要な粒子であり、電子を流したり化学反応を引き起こしたりする。しかしヒッグス粒子がなければ電子は質量がゼロになってしまう。

 電子が質量を持たないようになる「特定の状況」が存在し、これは東京大学の研究で「あたかも質量がないかのように振舞うことがある」とされる。電子は通常質量を持っているが、物質中では結晶構造や元素組成によって決まる様々な「有効質量」を持つため、特定の条件がそろうと質量がゼロであるかのように振る舞うことがある。

 電子の質量については、真空中に静止した電子は、陽子や中性子と比べて非常に小さな質量を持である。「物質の中では電子は常に物質の結晶構造や元素組成などの影響を受けていおり、実際の質量とは異なる「有効質量」を持つようになる。電子は質量を持っている粒子だが、物質中においては「有効質量」という概念が重要になる。特定の物質環境下では、この有効質量がゼロになることがあり、これが「なければ電子は質量が0になってしまう」という現象の説明になる。

 電子に質量がなければ原子の周りを回ることができず結果として原子そのものが存在できなくなる。つまりヒッグス場がなければ私たちの世界は成り立たない。なぜヒックス場が電子に質量を与えるのか。

 パーティー会場に有名人が登場すると人々が集まり有名人の動きを妨げる。移動できず動きが遅くなる。この人だかりがヒッグス場の役割に有名人は素粒子に相当する。素粒子がヒッグス場の中を通るとその相互作用によって動きにくくなりそれが質量として現れるのである。

 ヒッグス場は素粒子と相互作用することで彼らに質量を与える。ヒッグス機構が特に重要な役割を果たすのがWボゾンとZボゾンという粒子。

 WボゾンZボゾンは、弱い相互作用という素粒子間の力(相互作用)を媒介するボゾン粒子であり、それぞれ「Wボゾン(ウィークボゾン)」、「Zボゾン」と呼ばれる。Wボゾンは正負の電荷を持つがZボゾンは中性で、いずれも陽子の質量よりもはるかに大きい質量を持ち、β崩壊のような原子核の放射性崩壊を引き起こす。

 強い相互作用、強い力を含め、この世界を支配している力について。私たちが日常生活で感じる力は全て四つの基本的な力に分類される。これは物理学で基本相互作用と呼ばれるもの。

(1)重力。重力は物体同士が引き合う力であり、リンゴが木から落ちるのも、地球が太陽の周りを回るのもこの力のため。重力はとても弱いが、 遠くまで影響を及ぼす。

(2)電磁気力。電磁気力は磁石がくっついたり、電気が流れたりする力であり、私たちの身の周りにあるほとんどの現象、例えば光や電気、化学反応などはこの力に関係している。

(3)強い相互作用。強い相互作用は原子の中心にある原子格をまとめる強力な力であり陽性子の中にあるクォークを結びつける働きをする。私たちの体を形づく物質の質量のほとんどはこの力によって生まれている。

(4)弱い相互作用。弱い相互作用は放射性崩壊、例えば中性子が容姿に変わる現象などに関わる力であり宇宙の中で星のエネルギーを生み出す核融合などにも重要な役割を果たしている。この力は強い相互作用や電磁機力よりもずっと弱い。

 この四つの力はそれぞれ特定の粒子を返して伝えられる。

 電磁気力はフォトンが媒介力。弱い相互作用をにはWボゾンが関わる。ボゾンとは力を媒介する粒子。電磁気力を媒介するのがフォトンであるように弱い相互作用を媒介るのがWボゾンとZボゾン。Wボゾンはプラスとマイナスの2種類がある。これが関わることで中性子が陽子に変わったりその逆が起こったりする。例えば太陽の中で水素がヘリウムに変わる核融合にも関わっている。Zボゾンは電荷を持たない中性のボゾン。Wボゾンと違い粒子の種類を変えずに弱い相互作用を媒介する役割を持っている。このWボゾンとZボゾンはヒッグス機構によって質量を得ている。つまりヒッグス場がなければWボソンとZボソンも質量がゼロになり、弱い相互作用の性質が大きく変わってしまう。

 なぜWボゾンとZボゾンは質量を持っているのか。「弱統一理論」との関係について。

 「弱統一理論」は、自然界に存在する四つの力のうち、電磁気力と弱い力を統一的に記述する理論のことで、電弱統一理論(電磁弱い相互作用統一理論)を指す。1967年にスティーヴン・ワインバーグとアブドゥッサラームが提唱し、高いエネルギーのもとでは電磁気力と弱い力が一つの同じ相互作用に統一されることを示した。この理論は、その後の実験で弱い力を媒介する素粒子が発見され、確立されている。

 ヒッグス場が存在しなかった場合、WボゾンとZボゾンは質量を持たず、光子フォトンのように軽くなる。光子またはフォトンは光の粒子であり、物理学における素粒子の一つ。光を含む全ての電磁波の量子かつ電磁力のかつ電磁力の媒介粒子である。

 質量がゼロである光子は、真空中を常に光速で飛び回ることができる。遮られなければ電磁気力は遠くまで届く。同じようにWボゾンとZボゾンが質量ゼロなら弱い相互作用も遠くまで届く力になる。

 実際の弱い相互作用(弱い力)は、その名前の通り電磁気力や強い力と比べて見かけの強さは弱いが、特にクォーク間の距離が約10⁻¹⁷~10⁻¹⁶メートルという極めて短い距離のときに優位となり、それより遠い距離では力が届かないため実質的に無視されるという特徴がある。

 弱い力を媒介するWボゾンが大きな質量を持っているため、力が到達する距離(到達距離)が非常に短くなる。弱い相互作用は弱い力が短い距離でしか働かない。

 WボゾンとZボゾンがヒッグス場の相互作用によって質量をもち持ち重くなったことによる。ヒッグス場がWボゾンとZボゾンに質量を与えたことにより、弱い相互作用が短距離の力になった。

 電磁気力と弱い力を司る素粒子(光子とW/Zボソン)は、かつては統一された一つの力の名残であり、高エネルギー状態では同じ種類の粒子が異なる性質を示すと考えられていた。これは「電弱統一理論」と呼ばれるもので、素粒子の標準模型で証明されており、Zボゾンは弱い力を、光子は電磁気力を担う素粒子であるという発見は、この理論を裏付けた。

 WボゾンとZボゾンは元々同じ種類の粒子であった。宇宙誕生直後には区別がなく一つの力として働いていたと考えられている。しかし宇宙の温度が下がる過程でヒッグス場が働きによって質量ゼロのままで電磁気力をする粒子となりWボゾンとZボゾンは質量を持ち弱い相互作用を売る粒子に変化した。この過程を説明するのが「電弱統一理論」。

 ヒッグス粒子の発見はこの理論が正しいことを証明する証拠となった。ヒッグス粒子が実在するということは、ヒッグス粒子が存在し、WボゾンとZボゾンが質量を得た仕組みが現実のものだと確認されたのである。

 つまりヒッグス粒子がなければ電子は質量がゼロとなり原子は存在できない。ヒッグス機構は素粒子とヒッグス場の相互作用によって質量を生み出す仕組みである。WボゾンとZボゾンの質量はヒックス場によって決まり、これが「電弱統一理論」の証拠。ヒッグス場は私たちの宇宙の成り立ちに深く関わってる。ヒッグス粒子の発見によって素粒子物理学が完成したのではない。

4、ヒッグス粒子の発見がもたらした物理学への影響

 ヒッグス粒子の存在は標準理論(標準模型)の完成に不可欠なものである。2012年の発見は物理学にとって歴史的な瞬間であった。この発見によって素粒子物理学の課題が全て解明されたわけではない。むしろ新たな疑問と課題が浮かび上がることになった。

 素粒子物理学の標準模型は電磁気力、弱い相互作用、強い相互作用の三つの力を統一的に説明する理論。1970年代に確立されたこの理論は多くの実験によって検証されてきましたが、一つだけ決定的にかけていたのがヒッグス粒子の確認。ヒッグス粒子の発見によって標準模型の理論的枠組は完成し、素粒子の質量の起源を説明することがでるようになった。これはピーター・ヒッグスらが1964年に提唱したヒッグス機構の正しさを説明する決定的な証拠となった。

 しかし標準模型にはいくつかの未解決の問題が残されている。例えばヒッグス粒子の質量が何故125 GeVであるかなど。

 ヒッグス粒子の質量が約125ギガ電子ボルト(GeV)なのは、観測結果と素粒子物理学の標準理論の予言が一致したためである。ヒッグス粒子は物質に質量を与える素粒子であり、高エネルギー加速器研究機構(KEK)などの実験でその質量が測定され、理論的な予測範囲内に収まったことがこの数値の根拠。

 また何故ヒッグス粒子は一種類しか存在しないのか。標準模型では説明できない重力を統一する理論はあるのか。これらは物理学者たちが追い求める課題である。ヒッグス粒子の発見は標準模型の完成を意味したが、物理学の新たな課題も生み出しました。その中でも現在注目されているのがヒッグス粒子が特別な存在なのかということ。

 いくつかの理論ではヒッグス粒子がスーパーパートナーと呼ばれる新しい粒子の一部である可能性が示唆されている。これは素粒子に対応する超対象性粒子が存在するという考え方である。ヒッグス粒子がスーパーパートナーであるという考えは、標準模型を超える物理学における超対称性理論(SUSY)で提唱されている。この理論では、私たちが知る素粒子にはそれぞれ「スーパーパートナー」と呼ばれる新しい粒子が存在すると予測されており、ヒッグス粒子もその一つである超対称性粒子の一つ(ヒッグシーノなど)である可能性が示唆されている。

 ヒッグス粒子は暗黒物質、ダークマターと関係する可能性が指摘されている。ダークマターの正体は未だに謎のままであり、ヒッグス粒子との相互作用の解明が待たれる。標準模型は完成したがヒッグス粒子の発見によって新たな謎が浮かび上がった。

5、ヒッグス粒子とダークマター、宇宙論との関連

 ダークマターは宇宙の27%を占めている謎の物質。私たちが日常的に感じる重力や光の影響を受ける普通の物質、バリオン物質は宇宙の約5%に過ぎない。残りの約68%はダークエネルギーと呼ばれ、ダークマターを合わせた未の物質が占めている。

 私たちが知っている普通の物質(バリオン物質)は、宇宙全体のエネルギーの約5%にすぎません。残りは正体不明のダークマターが約27%、そして宇宙の加速膨張を加速させているダークエネルギーが約68%を占めると考えられている。

 バリオン物質(通常の物質)は星、銀河、惑星、そして私たちの体など、目に見える物質すべてがこれにあたる。

 ダークマター(暗黒物質)は、重力を持つが光や電磁波と相互作用しないため、直接観測できない正体不明の物質。

 ダークエネルギーは、宇宙の加速膨張を引き起こしている正体不明のエネルギー。

 バリオン物質が少ないのは、宇宙が誕生した初期のビッグバンから、インフレーション期を経て現在の宇宙の姿になるまでの過程で、バリオン物質は急速に薄まった。一方、ダークエネルギーは薄まらず、宇宙全体の約70%を占め続ける。宇宙の大部分はまだわかっていない謎の物質やエネルギーで満たされている。

 ダークマターは直接観測できるわけではないため、その存在は間接的にしか確かめられていない。例えば銀河の回転速度が予想よりも早いことや銀河団の質量の計算が見かけの質量よりも大きいことなどからその存在が示唆されている。ヒッグス粒子とダークマターにはどのような関係があるのか。

 最近の研究ではヒッグスがダークマターと相互作用する可能性があることが示唆されている。例えばヒッグス粒子とダークマター粒子の衝突によってエネルギーが放出される現象を捉えることでダークマターの証拠を見つけ出す方法が模索されている。これが証明されればヒッグス粒子は単なる標準模型の一部としての役割を超えダークマターの謎を解く鍵となる可能性を持つ。

 次に ヒッグス粒子とインフレーション(宇宙の急膨張)との関係について。ヒッグス粒子自体がインフレーション(宇宙の急膨張)を引き起こしたのではないが、ヒッグス粒子と関連するヒッグス場は、宇宙誕生直後のインフレーション理論において重要な役割を果たす可能性が示唆されている。インフレーションが起きた証拠としてヒッグス粒子が挙げられることもある。インフレーション期にヒッグス場が特定のエネルギー状態をとることで、宇宙が急膨張したとする考え方がある。

 ヒッグス粒子とインフレーションの関係について。宇宙が生まれた直後、何もない真空の状態にエネルギーが解放され、宇宙が急激に膨張する「インフレーション」という現象が起きたと考えられている。これが真空の相転移。

 ヒッグス粒子は、ヒッグス場というエネルギーの場が持つ性質から、質量が生じることと関連がある。インフレーション期には、このヒッグス場が宇宙の急膨張を引き起こす「エネルギー源」となったと考えられている。これがインフレーションとヒッグス場との関係もしくはその作用。

 宇宙の誕生直後の相転移を通じて、ヒッグス粒子は素粒子に質量を与え、宇宙の多様性を生み出した。インフレーションのエネルギーがヒッグス場に蓄えられ、それが解放されることで宇宙の初期構造が形成された仮説。

 インフレーションとはビッグバン直後宇宙が急激に膨張した過程のこと。この膨張は現在の宇宙の構造を形づく基盤となっており、私たちが観測する銀河や星の分布にも深く関係している。

 標準模型はあくまで現在分かっている物理の枠組である。物理学者たちは標準模型の外に存在する未知の物理の存在を予測する。例えば標準模型における質量、力の相互作用、粒子の種類などを超越したより後半な理論が存在する可能性など。

 その中で特に注目されているのが「腸理論」や「量子重力理論」。

 「腸理論(量子重力理論の一種であるループ量子重力理論)」と「量子重力理論」について。「腸理論」はループ量子重力理論。時空に最小単位があるとする考え方で、超弦理論とともに量子重力理論の候補。「量子重力理論」は「量子化」の際に子(particle)を意識する(超弦理論のように)といった意味合いで使われる。超弦理論(超ひも理論)は量子重力理論の有力候補の一つであり、素粒子を振動する「ひも(strings)」とみなす理論。このひもからさまざまな素粒子が生まれると考えられている。

 これらの理論は重力を含む全ての力を統一的に説明しようとする。例えば量子重力理論ではヒッグス粒子が重力とどのように関わるのかを解明しようとしている。

 これが実現すれば重力と他の基本的な力を一つの理論で説明できるようになる。弦理論とヒッグス粒子について。弦理論は、素粒子を一次元的な「弦」の振動モードとして説明する理論。この弦理論では、多くの素粒子が弦の異なる振動パターンとして捉えられる。ヒッグス粒子は、弦理論における弦の振動そのものではなく、ヒッグス場が持つ性質と関係するスカラー粒子。ヒッグス粒子は物質に質量を与えるための重要な素粒子だが、その説明は弦理論の弦の振動とは異なる。

 超弦理論(超ひも理論)について。超弦理論(超ひも理論、英語: superstring theory)は、物質の最小単位をゼロ次元の点粒子ではなく、一次元の拡がりをもつ「ひも(弦)」とみなすことで、素粒子、そして物理学の四つの力を統一的に説明しようとする理論(仮説)。自然界の究極の謎を解き明かす「万物の理論」として期待されているが、実験による裏付けが十分でなく、検証の難しさがある。

 物質の最小単位は、点ではなく振動する「ひも(弦)」であると考えるのが弦理論の基本。ひもの振動パターンが異なることで、陽子、電子、光子など、17種類もの素粒子が生まれる。

 弦理論に「超対称性」という概念を導入したものが超弦理論。高次元時空:超弦理論を矛盾なく記述するためには、私たちの知る三次元空間+一次元時間ではなく、10次元や11次元といった高次元時空が必要だとされる。

 超弦理論が目指すのは、四つの力の統一:自然界に存在する「重力」「電磁力」「強い力」「弱い力」の四つの力を、統一的に理解すること。

 ヒッグス粒子の発見は物理学の新たな扉を開くものであり、ヒッグス粒子を巡る謎が解けることで私たちの宇宙や物理の本質をさらに深く理解することができる。

おわりに


 目に見えない世界のことを物語として仕上げる。お伽噺がそうであり、神話や宗教世界とくにキリスト教の世界はこれに類する。宇宙のこと、小さな世界の素粒子がらみになると普通の人にはお伽噺と同じになる。モノに質量がやどることと関わるヒッグス機構とヒッグス粒子もお伽噺の世界となる。

 宇宙の誕生そして地球の誕生。地球での生物の誕生と進化。気候変動と重なり合う生物の変化が繰り返されてホモサピエンスである私たちはさまざまにモノを考える。類人猿にはテレビがなぜ映り自動車が走るのか仕組みを理解することはできない。ネアンデルタール人やクロマニオン人にホモサピエンスの思考ができたかどうか。宇宙の真理を深く解き明かすことができるのは私たち現代人であるホモサピエンスではなくその後に登場するかもしれない新しい知的生命体であるかも知れない。

 地球の気象変動は氷河期時代、気温が60℃にも達する暑い時代があった。このときに生物は環境に対応して変化した。人の人生は短い。歴史時代をまたぐことはできない。氷河期時代の到来とその間の間氷期に人類は生き残れるのか。全ては地球の環境に支配されている。

(計量計測データバンク編集部)

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ヒックス場と素粒子との相互作用が質量を生み出す(全ての力を説き明かす鍵)(計量計測データバンク編集部)
大栗博司 - Wikipedia
ヒックス場と素粒子との相互作用が質量を生み出す(全ての力を説き明かす鍵)

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