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新 野鳥歳時記 オオバン(大鷭) (12月) 

オオバン(大鷭))(12月)




オオバンが水を切って向かってくる写真があり、それをよく見ると水面の後ろと前に大きな段差ができている。推進する力とオオバンの質量などによってできた水面の高さの差である。赤い目が鋭い。


ぽっかりとオオバンが水に浮く。上の波を切るオオバンの写真とは大違いだ。これなら波にちゃをぷちゃぷ浮かんでいるカモメの水兵さんと同じである。


白い毛のおでこ、ピンクのくちばし、黒く見える羽根。オオバンである。


手前がオオバン、向こうがマガモのオス。体の大きさの差がはっきりしている。マガモは食べごたえのあるな目方でありそうだ。カモ肉を使った鴨南蛮を思い出す。鴨南蛮のウドンや蕎麦に使われる肉は野生のマガモとそれを家禽化したアヒルとの交雑交種のアイガモ(合鴨)を使うことが多い。合鴨は家禽である。カルガモとアヒルの交雑種もある。


写真は手前の二匹がオオバン。おでこが白い。腹部が白いのはキンクロハジロ。


冬至を5日ほど前にした12月17日の午後3時30分ころ、山中湖村の山中のマリモ通りの岸辺で撮影した。この時刻に太陽は富士山の左肩に沈んだ。その太陽を追い掛けて有料の東富士五湖通りを西に走ると富士山の背後から、太陽がまた顔を出した。富士山の背後を運行する太陽を追い掛けていた。地球の地軸が大きく傾いていて、冬になると太陽の運行は天空からずっと下になるからだ。日本では太陽は真上に位置して人の影がない状態は出現しないが、ある砂漠ではこれがおこり、人の頭の真上に太陽がある。映画にそのような場面があっても日本人には意味を実感しにくい。


(タイトル)
オオバン(大鷭)

(本文)

 オオバン(大鷭)はクイナの仲間だ。分類学で述べるとツル目クイナ科オオバン属となる。

 黒い羽根に白いひたい(額)、そして桃色の嘴(くちばし)と黄色い足をしている。鳩よりは大きくマガモより小さいのがオオバンである。日本では冬になると南に移動するから冬鳥と言いたくなるが、必ずしも全てが移動せずにいたり、この地から南に移り、北からこの地に来るのがいるから留鳥のようにも見える。水に浮いて生活しているから水鳥というのだろう。

 アフリカ大陸北部、ユーラシア大陸、アイスランド、イギリス、スリランカ、日本、フィリピンなどにオオバン(大鷭)は居ることになっている。アメリカ大陸には居ないのだろうか。私にはわからない。

 オオバンの体長は32cmから39cm。翼開張は70cmから80cmであり、和名のオオバンははバンよりも大きいために付けられた名前である。

 バンはオオバンよりは小さいから、オオハクチョウとコハクチョウに倣えば「コバン」になりそうだが、カモとコガモがあるからこの種のことに法則のようなものを持ち込んではならない。

 コバンと言いたくなるバンは額(ひたい)の毛が赤い。嘴は黄色いが途中から赤くなっていてそのまま額の赤い毛につながる。幼鳥は嘴はさほど黄色くなく額も赤くない。額が白いのがオオバンであり、額が赤いのがバンである。バンは鳩ほどの大きさだがオオバンは鳩よりは明らかに大きく見える。

 バンの体長は35cmほどで、ハトくらいの大きさである。翼開長は52cmほど。バンはアメリカ東部にもいることになっており冬には暖地へ移動する。日本では東日本では夏鳥で、西日本では留鳥となる。これも一概にはいえないのではないか。分布域は広く地域ごとにいくつかの亜種がある。

 クイナ(水鶏)は「夏は来ぬ」の歌詞の中にその名があるので姿も鳴き声も知らなくても名前だけは知っている人が多い。クイナ(水鶏)に似ているが羽根が薄朱色のヒクイナ(緋鶏)である。クイナとヒクイナ日本では古い時代には区別されていなかった。何を間違ったのか、現代の日本はその方面の学者か分類学者のように細かなことを気に掛ける悪い状態にある。クイナはチュッチョ、クイックイッと鳴く。

 アメリカのシャイアン族には甘いという言葉はあっても辛(から)いという言葉はない。クイナとヒクイナを区別することに意味を感じなかったのだろう。ハクチョウのような白い鳥はみなハクチョウでよい。そんなことだからオオハクチョウとコブハクチョウを区別しないでハクチョウと決めたて決めてしまっている人は多い。

 オオバンと人とのかかわりとなると昔の人々の生活と違ってしまった現代の日本人にはそのような形のそのような名前の水鳥である以上のことにはなりにくい。

 初夏になると葦(よし、あしとも読ませる)の林の中でオオヨシキリがギリギリ、ジャージャーと鳴くのに合わせるようクイナ(水鶏)がチュッチョ、クイックイッと鳴く。オオヨシキリが啼くと夏が来たと思う。岸辺の葦の背丈が伸びて青々としているのは夏そのものである。葦をつかんでキリキリと啼くオオヨシキリの声を聞いて夏が来たことを確認する。もっともオオヨシキリが夏鳥であり、白樺湖のさきで緑の盛り上がりに白い雲をみてノビタキの飛ぶ姿とカッコーの啼く声を聞けば夏である。カッコーの声はマーラーの交響曲第一番の「巨人」のほうで馴染みが深い人もいることであろう。

 クイナが啼いても夏である。唱歌の歌詞はそのようになっている。クイナは茶色の目立たない毛色をしており嘴は細く黄色である。クイナの体長は23cmから31cmであるから、バンより大きくオオバンよりは小さい。クイナは細く長い茶色名水鳥である。クイナの翼開張は38cmから45cm。

 白鳥のことを語る。日本では白鳥を「くぐい(鵠)」(クグイ)といった。「日本書紀」にそれがある。ヤマトタケルは命尽きた後に白鳥になったことになっている。

 ハクチョウを含めて水鳥が水に浮かぶのは、お尻に油脂腺から分泌される油を羽に塗りるためである。それによって羽毛の間に空気が溜まる。羽根の下がみな浮袋になったいると思えばいい。これが水鳥が水に浮く原理である。

 オオバンが水を切って進むようすを見ると水面の後ろと前に大きな段差ができている。推進する力とオオバンの質量などによってできた水面の高さの差である。ただぽっかり浮かんでいる状態ではそのようにはならない。カモメの水兵さんが波にちゃぷちゃく浮かんでいるその姿と同じである。水鳥が水に浮くのは体重が軽いからではない。水鳥は体重にまさる浮力を羽毛を使った風船によって得ているからである。

 オオバンは冬至を5日ほど前にした12月17日の午後3時30分ころ、山中湖村の山中のマリモ通りの岸辺で撮影した。この時刻に太陽は富士山の左肩に沈んだ。その太陽を追い掛けて有料の東富士五湖通りを西に走ると富士山の背後から、太陽はまた顔を出した。

 このころに夕日を背に富士山の頂上でダイヤモンドが輝くのは花の都公園付近である。上の撮影場所から忍野村のほうに移動したところに花の都公園がある。

 山中湖付近では年をまたいで4カ月ほどの長い間、ダイヤモンド富士を見ることのできる。

(執筆 横田俊英 Yokota Syunnei、日本野鳥の会会員)

オオバン(大鷭)

コブハクチョウ(コブハクチョウの姿態のいろいろ。バレーの白鳥の湖の様子を思い浮かべる)



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