上高地散策路の支流の流れは雪渓の水なので冷たい。皆が立ち止まって水に手を触れる (8月2日 横田俊英 撮影)
湿地帯には板で歩道を作っているので植物を傷めることがない。上高地を散策する人の数は半端ではない。 (8月2日 横田俊英 撮影)
信濃の国の信州の語源となったと言われるシナノキ。製紙のために伐採された。 (8月2日 横田俊英 撮影)
上高地に沢山生えている奇妙な樹木のイチイ。正一位からきた名前で一刀彫の材料となる地肌は美しい。 (8月2日撮影 横田俊英)
(タイトル)
「上高地散策のすすめ」日本の美しい景色を訪ねる旅には上高地が最高だ(8月2日 執筆横田俊英)
(本文)
槍ヶ岳と穂高岳が形成する中部山岳(飛騨山脈)の中心は日本のスポーツ登山の発生地であり、山懐に踏み込むとほかの山岳地域にはない特別の空気と美しさがある。槍ヶ岳に登る、穂高岳に登るとなると日帰りでは無理だから足が遠のきがちだ。一般の人がこの山に登るのは夏場の条件の良いときとなる。
穂高岳を眺める絶好の地が上高地であり、ここは同時に槍ヶ岳と穂高岳登山の玄関口でもある。そして梓川が流れる標高1,500メートルの上高地界隈は日本で一番ともいえる絶景だ。上高地のバスターミナルに降りたって残雪が残る奥穂高岳、前穂高岳、西穂高岳を天空に見上げて「ウオー」とばかりに感動しない人はいない。
登山愛好家には思い出の場所が上高地であり、美しい景色の地を訪ねる旅を愛する人にはこの上ない場所が上高地でもある。その上高地には一般車は乗り入れすることができないからバスかタクシーを利用することになり、流行客の半数以上は観光バスを使って上高地入りをする。パック販売された旅行を買うのが一番手軽である。しかし販売されたパック旅行の弊害が上高地散策を苦しく忙しいものにしている。
観光バスを下ろされた乗客は制限時間2時間半ほどで歩行行程2時間15分の明神池までの散策路を歩かされるからだ。足ごしらえができていない旅行者がせっせせっせと上高地のバスターミナルから明神池まで歩いているのだ。これでは花もない蝶もない木もない水もないということで上高地の豊かな自然を味わうことなどできない。地図に書いてある歩行時間の少なくと2倍を当てないと蝶や花を観察する余裕は生まれない。
しかし上高地はそれでも良いのだ。この地を訪れた人は満足するのである。冷涼な空気と見上げれば空は青く、緑の穂高岳が天に聳(そび)える。この山岳風景を美しいと思うようになったのはスポーツ登山が盛んになってヨーロッパアルプスが紹介されるようになってからなのである。江戸期までの山岳に対する日本人の思いは険しい山を地獄と見立てていて、同時に山岳信仰とあいまっった信仰登山や行の対象であった。
英国人宣教師のエストンは上高地から上条嘉門次をガイドにして槍ヶ岳や穂高岳を登ってこの山を紹介するとともにその登山行為がスポーツであることを日本に広めたのであった。上高地のバスターミナルの向こう岸を下ったところにウエストン碑があり、明神池のそばには嘉門次のレリーフが据えられている。嘉門次小屋は明神池で営まれていてバスターミナルから散策路をやってくる旅行者にイワナ(岩魚)の串焼きほかを提供している。
上高地にはその昔、岩魚が余るほどいたことがある。上条嘉門次などはその岩魚を獲ることで生計を立てていた。上高地区域は禁漁になっているので梓川の本流とその支流の小さな流れにも岩魚があふれかえっていて、おむすびの米粒やパンの切れ端を放ってやると躊躇なく飛びついて食べてしまう。魚と人間の関係は獲る量と育つ量のバランスがあってこそ成り立つものだということが分かる。
大正池や帝国ホテル前でバスを降りるとカラマツ林の散策を楽しむことができるし、高原の樹木のシラビソが沢山あって、赤ら顔で身勝手な枝振りのイチイ木のある林を樹木観察しながら歩くのもいい。田代池の湿原にはサギスゲは多くあってレンゲツツジも見ることができる。田代橋下の梓川沿いにはニッコウキスゲが群落する。大正池の枯れ木は朽ち果てて昔の面影は大きく減じた。
富山や高山などにでかけるときに上高地への入り口の鎌トンネル前を通過しつづけていると何だか上高地に済まないような気持ちが募ってきるので、沢渡で車を止めてバスで上高地入りをすることになる。
日本で有数の山岳の絶景の地は上高地、立山のある室堂、そして霧ヶ峰高原のコロボックルヒュッテ付近である。
上高地を訪れたら宿は街が恋しければ諏訪湖畔に取ると夏季の8月の間は何時でも湖畔の花火を見ることができる。松本で信州の地方文化を楽しむのもよい。安房トンネルを越えて高山市になってしまった旧上宝村の温泉宿に投宿すると山の余韻をずっと味わうことができる。あるいは高山まで足を伸ばすという手もある。出発地のあわせたさまざまな旅行計画ができるのが上高地散策である。
(写真と文章は横田俊英))
(書き殴って読み返しておりません。誤字、表現の不適切さなどについてはご容赦を)