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生命とは生命とは動的平衡(福岡伸一) サプリの99%は添加物で頼りない成分の科学的根拠(田村忠司)


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生命とは生命とは動的平衡(福岡伸一) サプリの99%は添加物で頼りない成分の科学的根拠(田村忠司)

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計測でも科学でもない数値の強調と人の健康


第5回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム「生命とは何か?それは動的平衡」福岡 伸一 2018年7月22日
2019/01/31 第5回 京都大学−稲盛財団合同京都賞シンポジウム「生命の神秘とバランス」https://ocw.kyoto-u.ac.jp/course/361/
「生命とは何か?それは動的平衡」福岡伸一(生物学者、青山学院大学総合文化政策学部 教授、ロックフェラー大学 客員教授)
動的平衡の生命観
 生命とは何か? 人類がずっと考え続けてきたこの問いに、現在、生物学は何と答えることができるだろうか。20世紀の中盤、DNAの二重らせん構造が解明された。相補的な構造を持つDNAの鎖が、互いに他を鏡に映す対応関係で存在していることは、そのまま遺伝情報の複製と伝達を示唆するものだった。その結果、これ以降の生物学は、生命を「自己複製するシステム」と定義した。しかしもうひとつパラダイムがあった。この発見に先立つこと10年ほど前、物理学者のエルウィン・シュレディンガーは自著『生命とは何か』の中で、高度な秩序を保つ生命が、生命として存在するためには、システムの内部に蓄積されるエントロピーを常に捨て続ける特別の仕組みが必要であると考えた。この視点から生命を定義できるはずだったが、さすがのシュレディンガーも、特別な仕組みがどのようなものであるかを言い当てることはできなかった。
 シュレディンガーの著書に先立つこと、さらに10年ほどまえ、ドイツから米国に亡命してきた生化学者ルドルフ・シェーンハイマーは画期的なアイデアを思いついた。同位体元素で栄養素を標識すれば、生体内部の代謝を可視化できるかもしれないと。実験結果は驚くべきものだった。生体のあらゆる構成要素は絶え間のない分解と合成の最中にあり、栄養素の構成要素と常時交換されている。栄養素は単なる燃料ではない。生命は流れの中にあることをシェーンハイマーは明らかにした。彼はこれを生命の”dynamic state" と呼んだ。日本語では「動的平衡」(dynamic equilibrium) と言うのがよいと思う。ここでは、新たな合成のために、先回りするかのごとく分解が絶えず行われてバランス(平衡)が保たれているからである。また積極的な分解は、シュレディンガーが予言した、エントロピーを排出する特別の仕組みでもある。この予言を具現化するかのように、20世紀後半から21世紀にかけての生物学は、生命がつくることよりも、自らを壊すことを一生懸命に行っている様子を次々と明らかにした。ユビキチン系、プロテアソーム、そしてオートファジーの研究はすべて、シェーンハイマー/シュレディンガーの流れをくむもうひとつのパラダイム=動的平衡の生命観の上に位置づけることができる。生命とは何か、と問われれば、それは動的平衡である、と答えることができるのである。2018年7月22日有楽町朝日ホール(東京都千代田区)。

大谷大学キャンパスツアー/第5回親鸞フォーラム-親鸞仏教が開く世界-

NHK アカデミア 第 10 回 <生物学者 福岡伸一>
 今日は、私のキーワードとして「動的平衡(どうてきへいこう)」ということについてお話ししたいと思います。ちょっと難しく聞こえる四文字熟語ですけれども、生命の見方、生きるということがどういうことかというのを、この動的平衡の視点から語ってみたいと思います。「動的平衡」というのは、古くて新しい考え方で「動的(Dynamic)」つまりいつも動いていながら「平衡(Equilibrium)」。この平衡はパラレルという意味ではなくて、バランスを取っているという意味の平衡ですけれども、動的平衡は絶えず動きながら絶えずバランスを取り直している、そういう状態を指す言葉です。これが、生きていることのいちばん中心にあるというふうに私は考えています。この動的平衡という視点から見ることは、私たちが生きていることあるいは自然、健康問題や環境問題、そういったことにも発展できるコンセプトだというふうに私は思っております。

 GP2遺伝子ノックアウトマウスは GP2遺伝子ノックアウトマウスと正常に交尾をして、子孫をどんどん作っていきました。多大な研究費と時間をかけてノックアウトマウスを作ったのに、全く異常のデータが出てこない、結果が出てこないわけですね。これは実験上の大変な挫折というか落胆なわけです。私は非常に悩んで途方に暮れて、一体どういうふうに考えたらいいんだろうということを悩み続けたわけなんです。

 そんなときに、私のある種の“転機”というか“パラダイムシフト”みたいなことが起きてきたわけです。それは「生命は機械ではない。生命は“流れ”だ」と言った人がいたんですね。これは哲学者の言葉というか、詩人の言葉のように聞こえますけれども、これを言ったのは、いまから 100 年ぐらい前に研究をしていたルドルフ・シェーンハイマーという研究者でした。

 このルドルフ・シェーンハイマーさんというのは、いまではすっかり忘れ去られてしまった科学者なんですね。教科書に出てきませんし、ノーベル賞を取ったわけでもない。彼の業績というか仕事も図書館の隅にほこりをかぶって、誰にも顧みられない人になってしまっているわけなんですけれども、私はこのシェーンハイマーの仕事にもう一度光を当てて、彼を再評価すべきだと思っています。そして彼が行った研究から、機械論的に見る生命観に傾き過ぎた現在の生命の見方というのを、もう一度転換して新しい見方で生命を見てみる。そうすると生命の見方が変わって見えるし、なぜ GP2ノックアウトマウスが、GP2がなくてもないなりに生命としてやっていけるのか。一つ部品がなくても何とかそれを乗り越えて、新しい状態を作っていける。そこに生命の本質がある。そう考えられるのではないかというふうに生命を捉え直すきっかけをシェーンハイマーは与えてくれたわけなんです。

 私たち動物は、ネズミだろうが、人間だろうが、鳥だろうが、あらゆる動物が毎日食べ物を食べ続けなければいけないわけですね。この「食べ物を食べ続けなければいけないというのは、生命にとって一体どんな意味があるのか」というのが、シェーンハイマーの問いだったわけです。シェーンハイマーが生きた 100 年ぐらい前の 20 世紀初頭の時代は、既に生物学は機械論的な考えが主流になっていて、あらゆる生命現象は機械のアナロジーとして捉え直せるというふうにみんな思っていました。

 つまり食べ物を食べるというのも、自動車とガソリンの関係に置き換えられると、みんなが思っていたわけですね。生物もエネルギーを必要とするわけです。動くためには運動エネルギーが要るし、体温を維持するためにも熱エネルギーが要る。それが食べ物という燃料なわけですね。だから、食べ物を体の中に入れると、ガソリンみたいに爆発的には燃えませんけれども、ゆっくり「燃焼」されるわけです。燃焼っていうのは「酸化」されるということですね。酸素が結びつくと、そこから熱エネルギーが出る。その熱エネルギーは体温になったり、運動のエネルギーになったり、代謝のエネルギーになって使われる。使われると消えてしまいますので、燃えかすは「二酸化炭素」や「水」になって体から排出されて、また新たなエネルギーが必要なので、また食べ物を食べる。みんな、食べるということを自動車とガソリンのアナロジーとして捉えていたわけなんです。

 シェーンハイマーは食べたものが全部燃やされて、それが燃えかすになるというインプットとアウトプットがきちんと見極められないと、そういうことを言うことができないというふうに考えたわけです。だから食べ物が入ってきて、それが燃やされて出ていく。そのプロセスで IN と OUT が合うかどうかを調べたいというふうに考えたわけですね。

 ネズミにしろ、人間にしろ、鳥にしろ、生物は究極的には「粒子の塊」だということが、もう既に分かっていました。この粒子は原子の集まりなわけです。食べ物の方はどうかというと、食べ物も植物性のものにせよ動物性のものにせよ、他の生物の体の一部をもらってきたものが食べ物ですから、これまた粒子の集まりなわけですね。そして彼は標識した食べ物を、ネズミに食べさせてみました。すると非常に不思議なことが起きていることが
分かったんです。食べた原子はネズミの体の中に散らばっていって、尻尾の先から頭の中、骨の中、あらゆる臓器の中に散らばって、ネズミの中に溶け込んでいってしまったんですね。つまり、ガソリンと自動車このルドルフ・シェーンハイマーさんというのは、いまではすっかり忘れ去られてしまった科学者なんですね。

 教科書に出てきませんし、ノーベル賞を取ったわけでもない。彼の業績というか仕事も図書館の隅にほこりをかぶって、誰にも顧みられない人になってしまっているわけなんですけれども、私はこのシェーンハイマーの仕事にもう一度光を当てて、彼を再評価すべきだと思っています。そして彼が行った研究から、機械論的に見る生命観に傾き過ぎた現在の生命の見方というのを、もう一度転換して新しい見方で生命を見てみる。そうすると生命の見方が変わって見えるし、なぜ GP2ノックアウトマウスが、GP2がなくてもないなりに生命としてやっていけるのか。一つ部品がなくても何とかそれを乗り越えて、新しい状態を作っていける。そこに生命の本質がある。そう考えられるのではないかというふうに生命を捉え直すきっかけをシェーンハイマーは与えてくれたわけなんです。

 このルドルフ・シェーンハイマーさんというのは、いまではすっかり忘れ去られてしまった科学者なんですね。教科書に出てきませんし、ノーベル賞を取ったわけでもない。彼の業績というか仕事も図書館の隅にほこりをかぶって、誰にも顧みられない人になってしまっているわけなんですけれども、私はこのシェーンハイマーの仕事にもう一度光を当てて、彼を再評価すべきだと思っています。そして彼が行った研究から、機械論的に見る生命観に傾き過ぎた現在の生命の見方というのを、もう一度転換して新しい見方で生命を見てみる。そうすると生命の見方が変わって見えるし、なぜ GP2ノックアウトマウスが、GP2がなくてもないなりに生命としてやっていけるのか。一つ部品がなくても何とかそれを乗り越えて、新しい状態を作っていける。そこに生命の本質がある。そう考えられるのではないかというふうに生命を捉え直すきっかけをシェーンハイマーは与えてくれたわけなんです。

 私たち動物は、ネズミだろうが、人間だろうが、鳥だろうが、あらゆる動物が毎日食べ物を食べ続けなければいけないわけですね。この「食べ物を食べ続けなければいけないというのは、生命にとって一体どんな意味があるのか」というのが、シェーンハイマーの問いだったわけです。

 シェーンハイマーが生きた 100 年ぐらい前の 20 世紀初頭の時代は、既に生物学は機械論的な考えが主流になっていて、あらゆる生命現象は機械のアナロジーとして捉え直せるというふうにみんな思っていました。

 つまり食べ物を食べるというのも、自動車とガソリンの関係に置き換えられると、みんなが思っていたわけですね。

 生物もエネルギーを必要とするわけです。動くためには運動エネルギーが要るし、体温を維持するためにも熱エネルギーが要る。それが食べ物という燃料なわけですね。だから、食べ物を体の中に入れると、ガソリンみたいに爆発的には燃えませんけれども、ゆっくり「燃焼」されるわけです。燃焼っていうのは「酸化」されるということですね。酸素が結びつくと、そこから熱エネルギーが出る。その熱エネルギーは体温になったり、運動のエネルギーになったり、代謝のエネルギーになって使われる。使われると消えてしまいますので、燃えかすは「二酸化炭素」や「水」になって体から排出されて、また新たなエネルギーが必要なので、また食べ物を食べる。みんな、食べるということを自動車とガソリンのアナロジーとして捉えていたわけなんです。

 シェーンハイマーは食べたものが全部燃やされて、それが燃えかすになるというインプットとアウトプットがきちんと見極められないと、そういうことを言うことができないというふうに考えたわけです。だから食べ物が入ってきて、それが燃やされて出ていく。そのプロセスで IN と OUT が合うかどうかを調べたいというふうに考えたわけですね。

 ネズミにしろ、人間にしろ、鳥にしろ、生物は究極的には「粒子の塊」だということが、もう既に分かっていました。この粒子は原子の集まりなわけです。食べ物の方はどうかというと、食べ物も植物性のものにせよ動物性のものにせよ、他の生物の体の一部をもらってきたものが食べ物ですから、これまた粒子の集まりなわけですね。そして彼は標識した食べ物を、ネズミに食べさせてみました。すると非常に不思議なことが起きていることが
分かったんです。食べた原子はネズミの体の中に散らばっていって、尻尾の先から頭の中、骨の中、あらゆる臓器の中に散らばって、ネズミの中に溶け込んでいってしまったんですね。つまり、ガソリンと自動車の関係で言うと、ガソリンを自動車に注ぎ込んだら、ガソリンの成分が車の中に散らばっていって、タイヤの一部になったり、ガラスの一部になったり、エンジンのネジの一部になり代わってしまっている。

 車の中ではそんなことは起きないわけですね。ところが、生物の中では食べた食べ物の原子や分子は散らばって、ネズミの体の中のいろんなところに入り込んで、そのネズミの一部になってしまったわけなんです。

 シェーンハイマーはこの実験をもちろん非常に厳密に行っていまして、まず実験前のネズミの体重を正確に測っていました。それから、このネズミはもう大人になったネズミなので成長期ではないんですけれども、食べ物を食べると「標識した粒子」が体の中に増えていきますよね。標識した粒子が増えていくと、当然その分が体重として増えるはずですけれども、この実験をずっとやっても体重は 1 グラムも変化しなかったんですね。

 またシェーンハイマーは、このネズミを完全に閉鎖した空間に入れて、ネズミから出てくる全てのものを収集して「どこに標識が行くか」を調べていきました。ふんや尿はもちろん、体から落ちてくる毛なども集めたし、それから呼吸ですね、息の中にどれぐらい二酸化炭素が排出されるかということも全部調べて、食べた食べ物の原子がどうなるかを調べたんです。でも体重は全く変わってなかったわけです。

 この結果をシェーンハンマーはどういうふうに解釈したか。ここが彼のすばらしいところだったんですけれども、体重が増えないのは「目に見えない形で、もう一つ別のプロセスが動いている」と。それは何かと言うと、「ネズミを形づくっていた分子や原子が分解されたり、燃焼されたりして、体の外へ捨てられた」ということです。つまり生物にとって食べ物を食べるというのは、ガソリンを補給するということとは全く違っていて、「自分自身の体を入れ替えている。食べ物の原子や分子と入れ替えている」。我々の体の中というのは、絶えず「分解」と「合成」がぐるぐる回っていて、その“流れ”を止めないために食べ物を食べ続けているんだ。そういう非常にダイナミックな状態であるということを、アイソトープ(同位体)を使って初めて見せてくれたのがシェーンハイマーの実験なわけです。

 皆さん自分の体の中で、例えば爪が生え変わるとか、髪の毛が伸びてカットすればまた伸びるとか、お風呂に入ると皮膚が落ちるとか・・・そういう感じで自分の体が交換されているというのは実感できる部分がありますけれども、実は全身のあらゆるところがものすごい速度で入れ替わっているんです。自分の体の中でいちばん早く入れ替わっているのはどこだと思いますか?それは「消化管の細胞」なんですね。消化管の細胞は大体 2~3 日で全部入れ替わっています。どんどん捨てられているんですけれども、どんどん作り直されているんですね。食べ物の原子や分子から作り直されています。他の臓器も早い遅いはあっても、すごい速度で作り替えられていて、数日から数週間、数か月のうちに入れ替わってしまっています。

 ですから、「昨日の私」と「今日の私」は、その間に食べたものと入れ替わっているわけです。1 年前の私と今日の私を比べてみると、物質レベルではほとんど全てが入れ替わっていると言っても過言ではないぐらい入れ替わっているんです。骨とか歯みたいにカチっとして見えるところも、内部は入れ替わっています。決まって交わす会話で「大変お久しぶりですね。〇〇さん全然お変わりありませんね」と言いますけれども、実はそれは生物学的には間違っているんですね。1 年も会ってないと、その人は物質レベルではすっかり入れ替わっているんで「〇〇さん、お変わりありまくりですね」と言わないといけないぐらい、我々の体というのは絶えず入れ替わっているわけなんです。

 シェーンハイマーはこのことを明らかにしてくれて、彼は英語で論文を書いているので、我々の体は動的な状態にある「ダイナミックステート(dynamic state)にある」というふうに書いています。

 私はこの考え方をさらに発展させて、我々の体は動的な状態にある。絶えず入れ替わって絶えず作り替えられているんですが、同時に絶えず“バランス”を取り直しているわけですね。二度と同じバランスはないんですけれど、あるバランスを取り直していて、環境が変わればそれに適応したようにバランスを取り直し、何か部品が欠損すればその部品がないなりに新しい「平衡状態」を作り出すことができる。

 ですから動的な状態というよりも「動的な平衡」というふうに言い直した方が、より正確に生命のあり方を表現できるというふうに考えました。「生命とは『動的平衡』である」。そういう日本語を当てはめるのがいいのではないかということで、動的平衡というキーワードで生命を捉え直そうと、ここから出発し直したわけです。

 ということで、私たちが生きているというのを、ちょっとしたグラフィックで表現した絵がありますので、それを見てください。

※グラフィック映像(開始点 34 分 54 秒)とあわせてご覧ください。

 環境から粒子が流れ込んできます。そして一瞬、よどみとなって集まったものが、私たちの体。でも私たちの体は「エントロピー増大の法則」に逆らって進むために、絶えず自分自身を壊しながらエントロピーを捨てていく。最後は寿命が来てエントロピー増大の法則に負けてしまうんですけれども、また子孫を作るとか、他の生物に動的平衡を手渡すという形で、私たちはまた自分の中に秩序を作り直して、このエントロピーの流れの中を進んでいくわけです。ですから環境は絶えず私たちの体の中に入ってきて、またここから流れ出ている。これが動的平衡という考え方で、この考え方から非常に動的なものとして生命を捉え直してみると、生命のいろんな見方がよりビビットにダイナミックに見えてくる。そういうふうに考えています。

<「壊しながら長く保つ」とは>

 ではどうして、絶え間なく我々は作り替えられているのにもかかわらず、同一性がとれるのか。ここには一つ大事なポイントがありまして、これは「相補性(そうほせい)」という概念から説明することができます。相補性というのは、ジグソーパズルのピースは互いに他を支えながらも、互いに他を律し合っている。そういうバランスによって作られていますよね。真ん中のピース(上図)が捨てられても、周りにある 8 つのピースが残っていると、真ん中の形と場所が記憶されるので、新しく作られたピースをそこにはめることができる。我々の体というのは、大きな 1枚のジグソーパズルの壁画みたいなもので、絶えず同時多発的に「相補性」という関係性を保ちながら入れ替わることによって、全体として更新されながらも、全体の絵柄、ある種の同一性、あるいは記憶というものが保たれている。これは細胞と細胞の関係性、あるいは細胞の中のタンパク質とタンパク質の関係が、相補性によって絶えず入れ替わっても保たれるからというふうに説明できます。

 もう一つは、「どうして私たちが生きるために、自分自身を絶えず壊しながら絶えず作り替えているのか」という疑問があります。それはできるだけ「長生き」するためです。これは非常に逆説的に聞こえるかもしれません。

 人間の発想だと、長くもたせるためには頑丈に作っておけば長もちすると思いますよね。ところがどんな壮麗な建築物も、長い年月の間には駄目になってしまうわけです。壮麗なピラミッドも何千年かたつと砂粒に変わってしまいますよね。

 タワーマンションのようなぴかぴかの建物も、1000 年 2000 年という単位になると当然廃虚になってしまうわけです。

 生物は、人間の場合だったら 80 年ぐらい、女性だったら 90 年ぐらいの寿命を持っているわけですね。それぐらい長くもつためには「エントロピー」というものを捨て続けなければいけないわけなんです。これはちょっと難しい概念なんですけれども、宇宙の大原則として「エントロピー増大の法則(あらゆるものは秩序から無秩序へと変化する)」というのがあります。形あるものは必ず形がない方向にしか動かない。ピラミッドは風化するし、タワーマンションは崩れていくし、整理整頓しておいた机の上もちょっと油断すると書類が散らばったり、本が倒れてきたり、消しゴムのかすが散らばったりしますよね。
生命現象は最も秩序が高い状態ということが言えます。その秩序は、エントロピー増大の法則という宇宙の大原則によって、絶えず壊されよう壊されようとしているわけです。細胞膜だったら酸化されようとしているし、細胞の中のタンパク質だったら、分解されたり切断されたりしようとしているわけですね。

 これに対してどう対抗していけばいいかというのが、生命が長もちするための非常に大事な課題だったわけです。頑丈にしっかり作っておいても、必ずエントロピー増大の法則に押し倒されてしまうわけですね。そこで生物は最初から非常に“ゆるゆる”“ヤワヤワ”に作っておいて、自ら率先して分解することによって、エントロピー増大の法則に先回りするように自分を分解することによって、エントロピー増大の法則に何とかあらがって、頑張って形を作り直して生きているというふうに生命を捉え直すことができる。「動的平衡」の意味がここにあるというふうに考えています。

「生物はなぜ老い、そして死ぬのか」小林 武彦(東京大学 定量生命科学研究所教授)2023年度 軽井沢土曜懇話会 第2回

福岡伸一 - Wikipedia

略歴
1982年3月 京都大学農学部食品工学科卒業
1987年3月 京都大学大学院農学研究科食品工学専攻博士後期課程修了
1988年7月 ロックフェラー大学ポストドクトラル・フェロー(分子細胞生物学研究室 1989年2月まで)
1989年3月 ハーバード大学医学部ポストドクトラル・フェロー(1991年7月まで)
1991年8月 京都大学食糧科学研究所講師
1994年4月 京都大学食糧科学研究所助教授
2001年4月 京都大学大学院農学研究科助教授
2004年4月 青山学院大学理工学部化学・生命科学科教授
2011年4月 青山学院大学総合文化政策学部教授[1]
2021年4月から2022年3月まで朝日新聞朝刊教育面で連載小説「福岡伸一の新・ドリトル先生物語 ドリトル先生ガラパゴスを救う」を担当。

(689) 田村忠司×宮台真司×神保哲生:【5金スペシャルPart1】あなたはそのサプリの中身を知っていますか - YouTube
マル激トーク・オン・ディマンド 第1208回(2024年6月1日)『あなたはそのサプリの中身を知っていますか』ゲスト:田村忠司氏(ヘルシーパス代表取締役社長)司会:神保哲生、宮台真司

 多くの人が飲んでいるサプリメント。日本では少なくとも20歳以上の人口の3割以上の人がサプリを利用しているそうだ。しかもその市場は年々拡大しており、今やサプリメントを含む健康食品市場の規模は1兆円とも2兆円とも言われている。しかし、日常的に身体に取り込んでいるものであるにもかかわらず、ことサプリに関してはどういうわけかその中身やリスクについて正しい知識を持って飲んでいる人は意外に少ない。

 小林製薬の紅麹食害事件では、問題となったサプリメントが機能性表示食品の届け出をしていたことから、機能性表示食品制度の見直しがしきりと取り沙汰されていて、政府は5月31日、被害報告の義務付けを含む対応方針を取りまとめている。確かに機能性表示食品という制度は、消費者に対する実態以上の権威付けになっているという意味で問題が多いが、かといってサプリの中には必ずしも機能性表示食品のお墨付きを得ていないものも多い。実際、サプリを飲んでいる人の多くは、それが機能性表示食品としての届け出がされているかどうかには必ずしもこだわっていないようにも見える。どちらかというと、有名人などが語る広告文句に乗せられて買っている人や、場合によっては効くかどうかは度外視して、自身の生活スタイルに対する免罪符や気休めとして飲んでいる人が多いのではないか。

 医療機関に特化したサプリメントを製造販売している「ヘルシーパス」社長の田村忠司氏は、現在市場に出回っているサプリには問題が多すぎると指摘する。まず、ほとんどのサプリは、有効成分は1%程度しか含まれておらず、残る99%は添加物であることを認識する必要がある。わざわざお金を払って添加物を買っているのだ。さらに、サプリに含まれている栄養素には科学的根拠が希薄だったり効果が怪しいものも多い。また、実際に表示されている分量の有効成分が含まれているかどうかも、確認のしようがない。

 また、サプリによっては実際に表示されているだけの有効成分が含まれている場合もあるが、それを毎日摂取したり他の薬と併せて摂ることによって、アレルギーなど予期せぬ副作用が生じる場合もある。

 東京都が毎年行っている健康食品の試買調査では、店頭で売られている44品目のうち26品目に、不適正な表示・広告が見られたという。インターネットの通信販売にいたっては、81品目中79品目に問題のある表示が見つかっている。

 例えば、飲むだけで痩せるとか、膝の痛みが治るなどといった過大広告が蔓延する中、われわれ消費者は何に気をつければいいのか。田村氏は、まずサプリのパッケージをよく見て購入することが重要だと言う。パッケージの裏側を見れば、栄養素の種類や配合量、添加物の有無などほとんどの重要なことは分かるようになっている。実際、多くの人が表に書かれている効果の部分は見ていても、裏側の成分表示はほとんど見ていないのではないか。その意味では買う前にパッケージを確認することができないテレビショッピングでの購入は問題が多いと田村氏は警鐘を鳴らす。また、「医療機関向けサプリ」と謳っていながら一般向けに販売していたり、「ドクターズサプリ」と言いながら医師の関与なしに販売していないかについてもチェックする必要があるという。広告で平気で嘘をつくような会社が、製造過程でお金をかけてきちんと温度管理をしたり、不要な添加物を減らす努力をしているとは到底思えない。

 たとえ無駄だとしても、サプリを飲むことで安心感や満足感が得られるなら、それはそれでいいではないかという議論もあるのかもしれない。プラシーボ効果というものもあり得る。しかし、その一方で、サプリには医薬品と変わらないほどの効果を持つ成分が含まれている場合もある。例えば、昨今問題になっている紅麹サプリについては、アメリカの医薬品にも使われているモナコリンKが含まれていて、実際にコレステロールを低減する効果が期待できると考えられているのだ。今回は死亡事故が起きたことでようやく社会も問題視するようになったが、死亡事故にまで至らない副作用が起きている事例は実際には多いはずだと田村氏は言う。

 またメディアの責任も重大だ。地上波やBS、CSでひっきりなしに流れている健康食品やサプリのテレビショッピングは、売り上げの大半が放送局に電波料として入る仕組みになっているものが多く、放送局としてはサプリの問題を殊更に取り上げたくない事情がある。紙媒体でもサプリの広告出稿量は多く、メディア側の大人の事情として、死亡事故でも起きない限りあえてサプリの問題を取り上げようという動機は起きにくい。

 サプリというのは、有効成分がほとんど入っていなかったり科学的根拠が希薄なため、ほとんど効かないものは効かないもので、そんな添加物の塊のようなものをメディアが喧伝し、消費者に年間兆円単位のおカネを費やさせていていいのかという問題もあるが、逆に効くものは効くもので、医師の指導なく服用することにはそれ相応の危険が伴う。

 市場に出回るサプリの危険性や自分にとって効くサプリと効かないサプリの見分け方、われわれの多くがついついサプリを頼りたくなってしまう心理の背景にある不全感や焦燥感、孤独感などの正体について、ヘルシーパス代表取締役社長の田村忠司氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

Part2はこちら
田村忠司×宮台真司×神保哲生:【5金スペシャルPart2】あなたはそのサプ...

(※番組中の日付の字幕に誤りがありましたので、修正の上、差し替えました。ここにお詫び申し上げます。2024年6月1日20時50分)

【プロフィール】
田村 忠司 (たむら ただし)
ヘルシーパス代表取締役社長
1965年富山県生まれ。88年東京大学工学部卒業。同年株式会社リクルート入社。98年日研フード株式会社入社。2006年医療機関専門サプリメーカー「株式会社ヘルシーパス」を設立し代表に就任。著書に『サプリメントの正体』、『「これ」を食べればサプリはいらない』など。

宮台 真司 (みやだい しんじ)
社会学者
1959年宮城県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。社会学博士。東京都立大学助教授、首都大学東京准教授、東京都立大学教授を経て2024年退官。専門は社会システム論。(博士論文は『権力の予期理論』。)著書に『日本の難点』、『14歳からの社会学』、『正義から享楽へ-映画は近代の幻を暴く-』、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』、共著に『民主主義が一度もなかった国・日本』など。

神保 哲生 (じんぼう てつお)
ジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表 ・編集主幹
1961年東京都生まれ。87年コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。クリスチャン・サイエンス・モニター、AP通信など米国報道機関の記者を経て99年ニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を開局し代表に就任。著書に『地雷リポート』、『ツバル 地球温暖化に沈む国』、『PC遠隔操作事件』、訳書に『食の終焉』、『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』など。

田村忠司×宮台真司×神保哲生:【5金スペシャルPart2】あなたはそのサプリの中身を知っていますか

├田村忠司氏


田村忠司氏
株式会社ヘルシーパスの代表取締役社長である田村忠司氏経歴。
1965年生まれ、富山県出身。1988年東京大学工学部産業機械工学科卒業。同年、株式会社リクルートに入社し、通信事業を中心に経営戦略、新規事業立案、マーケティング戦略立案に従事。1998年日研フード株式会社に入社し、取締役経営企画室長、サプリメントの製造子会社の代表取締役社長を務める。2006年、医師や薬剤師からの要請と出資を受け、株式会社ヘルシーパスを設立。

田村忠司×宮台真司×神保哲生:【5金スペシャルPart2】あなたはそのサプリの中身を知っていますか

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